【祇園祭の話】長刀鉾が別格である理由・2つのタブー(禁忌)

 

夏休みに突入したということで、まずはお祭りクイズから始めたい。
日本三大祭りってなに?

 

正解は、祇園祭(京都)、天神祭(大阪)、ねぶた祭(青森)の3つだと聞いて、ツッコミを入れられなかった人は廊下に立ってるように。
ねぶた祭を外して、神田祭(東京)を加えた3つが日本三大祭りになる。

この中で、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている京都の祇園祭がちょうどいま行われているところだ。
これは「祇園信仰」に基づくお祭りで、人々が健康・安全に暮らせるよう疫病退散を祈願する。
祇園祭では、さまざまな山鉾(やまぼこ)が登場し、京都市内を移動する「山鉾巡行(じゅんこう)」がとても有名だ。
ただ、この祭りには、絶対に犯してはいけないタブーがある。

 

 

 

祇園祭は千年以上の歴史を誇る。

 

 

祇園祭では、豪華絢爛な飾りがあって「動く美術館」と言われる山鉾が30基ほど出てくる。
その中でも、下の鋭い刀のある「長刀鉾(なぎなたほこ)」は別格。
長刀鉾の存在感は他の山鉾とは一線を画していて、「山鉾界のマハラジャ(大王)」と呼んでいいと個人的には思っている。

 

 

言い伝えによると、この「長刀鉾」に使われている長刀は平安時代の刀職人、三条 宗近(むねちか)が作ったもの。
宗近は病気になった娘の回復を願い、この刀を祇園社に奉納したという。

京都市内を巡行する山鉾の順番は、くじ引きによって決められるが、長刀鉾は参加しない。
山鉾巡行において長刀鉾はいつも一番先と決まっていて、くじ引きをする必要がないから、「くじ取らずの長刀鉾」という言葉が生まれた。
神のお使いである小さな男の子、生稚児(いきちご)が乗っているのも長刀鉾だけ。
神の化身のようなお稚児さんは地面を歩かず、山鉾に乗る際には「強力(ごうりき)」と呼ばれる大人に担がれる(上の動画を参照)。
祇園祭に登場する山鉾を「長刀鉾とその他大勢」に分けられるほど、この山鉾は特別なのだ。
なお、長刀鉾は女人禁制で男性しか乗ることができない。
そんなタブー(禁忌)は他にもある。

長刀鉾が先頭に立って、宗近(むねちか)の刀が疫病や邪悪なものを払いながら京都市内を進み、これから通る山鉾のために道を浄化する。
祇園祭の「一番隊長」である長刀鉾にはとても重要なオキテがあって、邪気を斬り捨てるこの刀を特定の方角に向けてはいけない。

 

それは八坂神社(祇園神社)と御所。
祇園祭の神であるスサノオと天皇に対しては、絶対に長刀の正面を向けてはいけない。
だから、長刀鉾が曲がるときには屋根にいる人が長刀の方向を変え、刀が常に南を向くように調整しているのだ。
天皇に対する敬意や親しみから、京都の人たちは絶対にこのタブーを犯さない。
オマケに言うと、祭りの期間中、関係者はキュウリを食べない。
キュウリの切り口が八坂神社の紋と似ていて、畏れ多いということで。

 

余談

聖徳太子がいたころの日本刀は真っ直ぐの形の直刀(ちょくとう)だった。

 

 

平安時代の三条 宗近(むねちか)が活躍していたころに、直刀からお馴染みの反(そ)りのある日本刀に変化した。

 

 

 

仏教 目次

日本人の宗教観(神道・仏教)

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。