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さっそくアメリカのトランプ大統領が、世界中から非難を浴びている。
「テロを防ぐために、イスラーム教の過激派をアメリカには入国させない!」
という気持ちはわかる。
でも、そのやり方が過激派もビックするするほど急激で過激。
毎日新聞の記事(2017年1月29日)から。
トランプ氏は27日、イスラム過激派の入国防止を目的に、入国審査の厳格化を命じる大統領令に署名。
米国のテロ支援国家指定を受けたり、政情が不安定だったりする▽イラク▽シリア▽イラン▽スーダン▽リビア▽ソマリア▽イエメン--の7カ国の国民は入国を90日間停止。
難民の受け入れも120日間停止した。この7カ国はイスラム教徒が多数を占める。
この大統領令を受けて、ビザを持っているにもかかわらずアメリカに入国できない外国人が続出することになった。
こんなアメリカとは正反対の寛容な態度を見せたのがお隣のカナダ。
カナダの首相は、「難民を歓迎します」とラブコールを送っている。
AFPの記事(2017年01月29日)から。
カナダのジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相は28日、カナダは難民を歓迎するという温かいメッセージをツイッター(Twitter)に投稿した。前日に難民と大勢のイスラム教徒の米入国を一時禁止する大統領に署名したドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領とは著しく対照的だ。
トルドー首相は、「迫害やテロ&戦争から逃れてきたみなさん、カナダ人は信仰にかかわらずあなた方を歓迎します。多様性はわが国の強みです。#Welcome To Canada」とツイートした。
「多様性はわが国の強みです」
これが移民の国であるカナダの特徴なんだろうね。
アメリカもこの点では同じはずだけど。
いろいろな民族や宗教の人たちを受け入れることで、その国にさまざまな価値観や文化が入り込むことになる。
いろいろな考え方に触れられるのは、確かに強みだ。
この点で、同質性の高い日本は違う。
日本では、どこに行っても同じ日本人がいて日本語が通用する。
でもそれはそれで、宗教や人種の違いから生まれる争いが少ないという良い面もある。
世界中から移民を受け入れていたオランダも昔はこう言ってた。
「多様性はわが国の強みです」
でも、1990年あたりから社会の雰囲気が変わってくる。
「信仰の違いにかかわらずあなた方を歓迎します」という寛容な精神を持っていたオランダ人の考え方が少しずつ変化していった。
その理由が、前回に書いた「外国人にオレたちの税金が使われている」、「犯罪が増えて治安が悪くなった」と人々が感じ始めたこと。
これはどこの国でも同じ。
国内の外国人に対して不満を持つのは、「税金を使われている」と感じ始めた時で、不安を持つのは「外国人の犯罪が増えている」と感じる時だろう。
こうした不満が不安が積もり積もっていって、やがて敵意や憎悪に変わっていく。
国民の外国人への敵意や憎悪を煽(あお)ることで、「外国人は出ていけ!」と主張するような極右政党が国民の支持を集めていく。
そのことは次回書いていきます。
ここで話を日本に移す。
移民かどうかは別として、これから日本で働く外国人が増えることはまず間違いない。
だから今のうちに、そのことを考えておいても損はない。
というか、それは必要だと思う。
さて、「浜松市」と聞いて何を思い浮かべますか?
ウナギ?
楽器?
餃子?
「ゆるキャラグランプリ」での家康くんの組織票?
最後を除けばどれも正解。
だけど、浜松市は「多文化共生都市」という特徴もある。
市でも「外国人と共生する街」として、浜松を強くアピールしている。
多様な文化を持つ市民の間で活発な対話や交流が行われ、ともにつくりあげる地域を目指します。この分野では、オール浜松での取組推進や、お互いを理解するための教育、交流機会の創出や外国人市民のまちづくり参加促進などに取り組んでいきます。
「浜松市の多文化共生・国際交流」
浜松市は「多文化共生都市」として全国的にも有名で、専門家(明治大学国際日本学部の山脇啓造教授)も注目しているらしい。
現在、私が注目しているのは、今年3月に「多文化共生都市ビジョン」を策定した浜松市です。このビジョンは、「インターカルチュラル・シティ」が唱える多様性を生かした都市づくりを参考にしたもので、多文化共生の進化形(多文化共生2.0)とも言えます。
身近に外国人がいることで、良い面はたくさんある。
ボクはいろいろな外国人から文化や歴史の話を聞くのが好きだから、多文化共生のメリットをかなり受けている。
外国人から日本の感想を聞くことで、自分が気がつかなかった日本の文化や社会を知ることもできる。
でも、当然メリットだけではない。
税金と治安の面で不満を言う人はいる。
浜松市に住む外国人の納税率が日本人より低いのは事実。
けど、生活保護を受けている人の割合日本人より多い。
それと治安の悪化を心配する人もいる。
多文化共生社会はいいけど、税金と治安についての不満や不安は現実としてある。
だから、ヨーロッパの移民問題について知ると、浜松と似ている面があるなあ、と感じる。
「外国人に税金を使われている」という不満や「外国人の犯罪が増えている」といった市民の不安をくみ取りながら多文化共生を進めていかないと、浜松もいずれ行き詰まんじゃないか、と思う。
そんな時に、
「自分との違いを尊重するべき」
「違いを認める寛容の精神が大事」
なんてキレイごとや正義を振りかざして、市民の不満を抑え込もうとしたら話になんない。
理想や理念を語って市民の気持ちを軽視していたら、それが極右政党を招来してしまう。
今のヨーロッパの極右政党の台頭の背景には、それがあったと思う。
エリートたちが庶民の痛みをわかろうとしなかったこと。
税金のことは数字でハッキリ分かる。
でも、治安についてはあいまいで正確なことはよくわからない。
外国人が増えたことによって、本当に治安が悪くなったのか?
それは客観的な事実か?
それとも、「外国人犯罪が増えている」と感じるだけなのか?
それを正しく知ることは本当に難しい。
でも一番いけないことは、外国人の生活の実態を隠すこと。
外国人の納税率や生活保護の割合を公表するというのは、多文化共生を進めたいと思っている側にしてみたら都合が悪い。
でもそれを隠すと、それがバレたときに市民の反感が一気に高まってしまう。
繰り返しなるけど、個人的には浜松市の多文化共生でおいしい思いをしている。
だから、そうした市の政策に協力しているつもり。
浜松市に住む外国人にとっては、アパートの契約や税金のことがよくわからない。
「システムが複雑すぎる!」とか「書類の漢字がわからない!」とか、外国人の知り合いが困ったときには手伝っている。
でも、多文化共生の負の面に目をつぶろうとは思わない。
浜松市には、外国人に対して不満や不安を感じている日本人はたくさんいる。
ボクのまわりでもいる。
「多様性が大事」というなら、「外国人には来てほしくない」という意見も大切にしなきゃ。
ボクの実感では、浜松市に住んでいる日本人は外国人に不満や不安を感じていても、敵意や憎悪までにはいっていない。
いてもそれは少数だと思う。
始めに書いたけど、ここで書いていることは他人事じゃないですよ。
これを読んでいるあなたも、いつか外国人と同じ地域で一緒に生活すると考えた方がいいですよ。
こうしたことには関心がなくて、「気がついたら、いつの間にか身の周りに外国人が増えていた」ではたぶん、困ることになる。
どれぐらいの外国人を受け入れるのか?
多文化共生をどれぐいら進めるのか?
それを決めるのは、住民である自分自身ですよ。
今度から、またオランダやヨーロッパの移民の話に戻ります。
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