歌手のチョン・ソミさんが韓国では批判、日本では思わぬ注目を浴びてしまった。
中央日報(2023.08.10)
歌手チョン・ソミ、ミュージックビデオに日本アニメのトレーシングを認める…「削除・修正決定」
彼女のミュージックビデオが公開されると、その中に出てくるアニメキャラを見て、「これは『うる星やつら』のラムちゃんのパクリだろっ」とツッコミを入れる人が続出。
批判を受けた所属事務所はトレーシング(そっくり写し取る行為)を認め、「深いお詫びを申し上げる」と謝罪し、そのキャラを削除すると発表した。
すでに検証画像がネットに公開されていて、どのシーンのラムちゃんの表情をトレーシングしたのかも特定されている。
元の絵とMVのキャラを重ね合わせると、目の大きさや描き方、顔の角度などが驚くほどそっくりだ。
所属事務所は異次元のアクロバット擁護をするよりも、「損切り」で素直に認め、謝罪したのは正解だった。
著作権の問題で、ここにその画像を載せることはできないから、「チョン・ソミ ラムちゃん」で検索してほしい。
これまで韓国では、日本のマンガやアニメの「パクリ騒動」が何度も発生した。
『うる星やつら』の作者である高橋留美子さんの作品『らんま2分の1』がヒットすると、韓国では『ラムバ3分の1』が作られた。
もちろん、原作者は許可を出していない。
『ワンピース』をトレーシングした『ワピース』はもはや伝説だ。
1990年代はヒドイ時代だった。
「週刊少年ジャンプ」のドラゴンボールの海賊版を輸入し連載した「IQジャンプ」が韓国で現存する最も古いマンガ雑誌として始まり、「ドラゴンボールZ」に似た「スーパーチャイルド」を国産アニメとして展開した。
最近の事例でいうと、2020年に『鬼殺の剣』というゲームが登場した時、その大胆さに日本人は言葉を失った。
もう、ツッコミ待ちとしか思えないようなキャラクターデザイン。
それに加えて、主人公が鬼と戦うという設定だったから、韓国でパクリ疑惑がわき上がると、公式側は「『鬼滅の刃』と類似していると判断されたようだ」と、まるで他人事のように受け流した。
でも、炎上を鎮火することできず、最終的には「運営を持続できないとの結論にたどり着いた」と敗北宣言を出し、たった6日でサービスを終了させた。
こういう騒動があるたびに、日本では「韓国はすぐ日本のアニメをパクる」といった非難の声が上がる。
それについて、韓国の人たちはどう考えているのか?
10年近く前、知人の韓国人と一緒にソウルの博物館へ行くと、有名な韓国アニメ『テコンV』の展示があった。
彼はこれを見て、ため息をつきながらこんなことを言う。
「これは素晴らしいアニメですが、残念ながら『マジンガーZ』を盗作したものです。韓国を代表するアニメではありますが、その背景を考えると博物館で展示されるのは微妙ですね」
彼は日本語が分かるから、ネットで「韓国はすぐ日本のアニメをパクる」という日本人の書き込みを何度か見たことがあり、反論してバトルになった経験もある。
彼の意見はこうだ。
過去に韓国が日本のアニメを模倣したことは否定できない。
でも、かつては日本人もアメリカの作品を模倣したことを考えると、一方的な非難は納得がいかない。
創造性や技術がまだ育っていない段階では、優れた作品に学ぶとその影響を強く受けて、「パクリ」と言われるほど類似した作品ができることはある。
これは確かに悪いことだけど、いろんな国で起きたことだから、韓国だけが非難されるのは理不尽で不公平だ。
ツッコミどころはあるけど、とにかく彼はそう考えていた。
日本に住むアメリカ人の話では、日本のテレビ番組を見ていると、「このシーンや設定はアメリカで見たことあるな」と思うことが何度もある。
日本も過去には、海外の番組を「パクった」可能性はある。
これは30代半ばの韓国人男性の意見で、20代の若い韓国人は違う見方を持っていた。
彼は日本に住んでいて、「韓国が日本のアニメをパクった」という非難の声があることは知っている。が、彼からすると、その認識は時代おくれ。
そういう日本人は、ここ10年ほどで韓国社会が大きく変わったことを知らない。
現在の韓国では、ちゃんとライセンス契約を結んで日本の漫画やアニメが販売・配信されている。
だから、『ラムバ3分の1』や『ワピース』みたいに、作品をまるごと乗っ取るようなことは無くなった。
今回のトレーシング事件や『鬼殺の剣』のように、まだ韓国社会ではパクリ行為は根絶されていないけれど、20代の韓国人に言わせると、そうしたことは激減した。
ここ10年ほどで、知的財産権に対する韓国人の考え方が大きく変わって、その権利を守ろうとする意識が高まったことがいちばんの理由だ。
以前の韓国人は「後進国」的な発想をしていて、知的財産権の価値をほとんど意識していなかった。だから、日本のアニメやドラマなどを違法に視聴することが普通だった。
でも、韓国は経済的に成長し、先進国に近づいたから、特に新しい世代では法やルール意識が高くなった。
キャラクターやストーリーを模倣する行為は、商品を盗むことと同じと考えている。
『鬼殺の剣』が日本で問題視される前に、韓国人が非難の声を上げて、サービス終了に追い込んだことも、法を守る精神の表れかもしれない。
先日、先ほどの30代半ばの韓国人と話をした時、この若者の説について聞くと、彼もおおむね賛成だ。
確かに彼が大学生だったころは、みんな違法に日本の番組を見ていて、そのことに対する罪悪感は1ミリもなかった。
(それによって日本のことを知り、好きになった韓国人も多かったらしい。
それがいまでは、知的財産権には相応の対価を払うことを当然と考えるようになり、ネットフリックスなどで動画を視聴している。
ここ10年で、このへんの意識が大きく変わったと彼は感じるという。
いまの日本のアニメのエンディングを見ると、韓国人の名前がたくさん出てくる。
これは、日本のアニメ会社が韓国企業に仕事を依頼しているからだ。
「韓国は日本のアニメをパクる」という事例がないわけではないが、アニメについて言えば、いまは日韓が協力して制作するケースの方が圧倒的に多い。
いまの韓国で、あからさまなパクリ行為をするのは例外的で、そういう作品は日本人が動く前に韓国人の手でつぶされる。
韓国の違和感。テレビでは日本語禁止。でも日本歌謡大会は人気!
韓国が短期間で世界的な産業化を遂げたのも、隣国に日本という「模範解答」国家があったからです。近くで学んでベンチマーキングしてそのままやればいいです。現在グローバル企業に成長している三星や現代も初期には皆日本企業から技術を学び経営技法を取り入れてきました。
文化、芸術、芸能コンテンツも同じでした。
ほとんどのテレビの娯楽番組も同様に、日本のコンテンツをそのまま持ってきました。
ところで、感謝しないというのが落とし穴ですね(笑)
昔のことはいいとして、大事なことはこれからですね。
いま韓国企業は力をつけてきて、日本企業とコラボをすることが多いです。
これからは互いの力をいかして、協業・共益が大事です。