トンボの見方:ヨーロッパでは邪悪だけど、日本では縁起物

 

先週、友人のドイツ人とスカイプで話をしていると、彼がこのまえ大きなトンボを見つけたと言って、その写真を送ってきた。
彼の身長が約180㎝であることを考えると、そのトンボは予想以上にデカかった。

 

 

「日本ではね~、トンボは縁起の良い生き物で人気があるんだよ~」とボクがと言うと、彼は「えって、そうなの?」と意外そうな顔をする。
そのドイツ人の話では、ヨーロッパ人の見方は反対で、伝統的にトンボは邪悪な存在だったらしい。

英語版ウィキペディアの説明を見ると、確かにヨーロッパではトンボ(dragonflies)が不吉なものと考えられていたと書かれています。

英語版ウィキペディアの説明を見ると、確かにヨーロッパでは、トンボ(dragonflies)はよく不吉なものと見られていたと書いてある。

「In Europe, dragonflies have often been seen as sinister.」(Dragonflies and humans

スウェーデンの伝承によれば、悪魔はトンボを使って人間の魂の重さをはかるという話があるし、ルーマニアの伝承では、トンボはかつて「悪魔の馬」だったと伝えられている。
ヨーロッパでトンボは悪魔や蛇と結びつけられ、邪悪な生き物と考えられていたようだ。

でも、21世紀に生きる知人の感覚からすると、ドイツではトンボを嫌いな人もいるけれど、多くの人はトンボを自然の一部と考えていて、特に好き嫌いの感情は持っていない。
これはドイツの話で、ヨーロッパのほかの国の事情は分からない。
彼にとっては、日本人はヨーロッパ人の反対で、文化的にトンボを縁起の良い生き物と見ていたことが意外だったらしい。

 

江戸時代に描かれたトンボ

 

古代の日本では、トンボを「秋津(あきつ)」と呼んでいた。
『日本書紀』にある神話によると、初代天皇の神武天皇が山の上から日本の国土を眺めて、秋津(トンボ)のような形をしていると言ったことから、日本を「秋津洲(島)」(あきつしま)と言うようになった。
*個人的には、日本列島の形は「タツノオトシゴ」と似ていると思う。

また、ある時、雄略(ゆうりゃく)天皇の腕にアブがくっついた時、トンボが現れてアブを食い殺したという神話もある。
この神話でも、「倭の国(日本)」は「蜻蛉島(あきつしま)と表現されている。

稲の害虫を食べてくれるトンボは、昔から日本人に親しまれていて、弥生時代の銅鐸にはトンボが描かれたものがたくさんある。
害虫を駆除し、天皇を守ったという話があることも、日本人がトンボに好印象を持っていたことの表れだ。

こうしたエピソードに加えて、トンボは前進し続け、後ろには引かないという考え方から、日本ではトンボに対して、攻撃的で勇気のある「勝ち虫」とする見方が生まれた。
このイメージは武士の理想とピッタリ。
だから、武士は縁起物としてトンボを気に入り、自身が使う物のデザインに取り入れた。
たとえば、前田利家は大きなトンボのある兜(かぶと)をかぶり、本多忠勝は「蜻蛉(とんぼ)切」と呼ばれる約6mの長槍を使っていた。

 

刀のツバ

日本人はトンボを描いた文物が好きで、これがヨーロッパ人の感覚とは違う。
19世紀後半、日本美術に魅了されたヨーロッパ人の中には、トンボを日本の象徴と考える人たちも出てきたという。(創作におけるトンボ

 

現代の日本でも、トンボの人気は高い。
日本人なら、『とんぼのめがね』のタイトルを見ただけで、青い空を飛んだから、水色のめがねになったというあのフレーズが思い浮かぶと思う。
*著作権という大人の事情で、歌詞を書くことは禁止されているらしい。

日本でトンボと言えば、「トンボ鉛筆」が超有名だ。
最初は「小川春之助商店」という名前で事業をしていたが、昭和2年に、数ある鉛筆ブランドの中でも、特にトンボマークの評判が良かったことから、「トンボ鉛筆」という社名に変えられて現在に至る。
トンボは秋津と呼ばれていて、日本の別名が秋津島であること。そして、「勝ち虫」と言われるトンボは昔から縁起の良い虫であることも、社名変更の理由になったとトンボ社のHPに書いてある。

『トンボ鉛筆』社名の由来

 

ヨーロッパでは、トンボは邪悪や不吉の象徴と見なされていたが、日本の文化や伝統では縁起物とされていて、見方が逆転している。
『魔女の宅急便』に出てくる重要キャラの少年の名前も「トンボ」だ。
ヨーロッパ人だったなら、魔女や悪魔に関するキャラにその名を付けるかもしれない。

トンボが稲の害虫を食べてくれるという点が、日本人の印象を決定づけたと思われる。
だから、日本人にはラッキーアイテムになったけれど、基本的に稲作文化がなかったヨーロッパでは、トンボが人間にもたらす利益はなかったか、とても少なかったのだろう。
だから、見方が180度違う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。