ドイツのビールが美味しい理由は「国民性」にあった説

 

今年も、ドイツにあのシーズンがやってきた。

日本経済新聞の記事(2023年9月16日)

ドイツのビール祭り開幕 ジョッキ1杯2000円

世界最大のビールの祭典といわれるオクトーバーフェストが、バイエルン州のミュンヘンで開催された。
ただ、最近の物価上昇の影響で、ビールの値段は過去最高になり、ジョッキ1杯で約2000円もする。
日本のネット民の反応を見ると、やっぱりこの値段が刺さる人が多い。

・二千円でジョッキ買えば飲み放題じゃないのか
・スーパードライが8缶も買えるじゃねーか
・日本が貧しい国になっただけ
・ドイツのビールは元々冷やさずに常温で飲む物
冷やすと美味くない
・インフレでミュンヘン一揆はおきないの?
・日本のビールは米が使われてるからドイツ人は絶対にビールとは認めんよ

ドイツ人の知人の話によると、オクトーバーフェストは特別なイベントだから、飲み物や食べ物の値段は強気に設定されている。
日本でも「お祭り価格」は基本的に高い。
花火大会に行ったら、屋台の焼きそばが1000円だったとSNSで報告する人がいて、ビックリした。

 

日本でドイツ人のイメージといえば、「ビール好き」は鉄板。
西洋人のアニメキャラで、テーブルの上にコーラとハンバーガーがあればアメリカ人、ビールとソーセージ(とジャガイモ料理)があればドイツ人と想像がつく。
ドイツのビールは「うまい!」と世界的に高い評価を受けているが、その理由は何なのか?
知人のドイツ人は日本の大学に留学していたことがあって、日本人や留学生から質問を受け、ドイツビールが美味しい理由について改めて考えてみた。
彼が出した結論は、ルールを厳格に守るというドイツ人の国民性だ。

 

世界各国の人たちの性格をネタにしたジョークにこんなものがある。

豪華客船が航海中、事故が発生して沈みはじめた。
すぐに海へ飛び込まなくてはいけない状況だったが、みんな恐怖を感じてためらっている。
その様子を見て、船長はそれぞれの客にこう言った。

アメリカ人には「飛び込めば、あなたはヒーローになれますよ」
イギリス人には「ここで飛び込むのが紳士というものです」
日本人には「みんな飛び込んでいますよ」
ドイツ人には「飛び込んでください。それが規則ですから」

英BBCの記事にも、ドイツ人が規則や秩序を愛するという見方は、何世代にもわたって世界的なステレオタイプであったと書いてある。

The idea that Germans love rules and order has been a global stereotype for generations

What makes Germans so orderly?

 

こんなドイツ人の国民性を表す例として、知人は「Fill line」を指摘した。
ビールを注ぐ量には最低基準があるから、客にそれを満たしていることを示すため、グラスには10㎜以上の長さの横線がある。
ドイツの法律では、泡ではなく、ビールの液体がこの線に達するように定められているのだ。

【ドイツ人の国民性】不正をさせない、ビールグラスの“線”

 

ドイツにはビールの作り方にも厳格な法律があって、それを「ビール純粋令」(Reinheitsgebot)という。
バイエルン公国のヴィルヘルム4世が1516年にこの法令を出し、ビールを作るのに使う原料は、水・大麦・ホップだけと定めた。
*実際のビール製造では酵母も使用されていた。

According to the 1516 Bavarian law, the only ingredients that could be used in the production of beer were water, barley and hops.

Reinheitsgebot

 

この当時、原料に香辛料や果実などを使ったデタラメなビールが出回っていて、社会問題になっていた。
それでヴィルヘルム4世は美味しいビールの作り方を法律で示し、不正を防ぎ、違反者には厳しい罰を与えた。
このビール純粋令によって、世界で初めてビールが明確に定義されたことになる。
100種類以上のホップ、40種類以上の麦芽、200種類以上の酵母菌株があり、可能性はほぼ無限です。異なる水でさえ
(世界史を学んでいる人は、ヴィルヘルム4世が1524年のドイツ農民戦争を鎮圧したことも覚えておこう。)

 

「ビール純粋令」を記念して発行された切手

 

1871年、バイエルン公国がプロイセン王国と統一する際、バイエルンはその条件として、ビール純粋令をドイツ全土へ適用することを求めた。
これが受け入れられ、不純な材料を使った粗悪なビールは姿を消した。
現在のドイツでもこのビール純粋令は有効だ。

ということで、ドイツのビールが美味しい理由は何か?

国がビールの正しい作り方を決めて、ルールや規則を守るドイツ人の国民性から、この法律が厳格に守られたからだと知人は考えている。
こうして、ドイツ全土で高品質なビールが作られるようになった。

英語版ウィキベテアの説明でも、ビール(ドイツ語:Bier)はドイツ文化の主要な部分であり、それは「ビール純粋令」に基づいて、原料は水、ホップ、麦芽(大麦の種子を発芽させたもの)のみで製造されると書いてある。

Beer (German: Bier) is a major part of German culture.German beer is brewed according to the Reinheitsgebot, which permits only water, hops, and malt as ingredients

Beer in Germany

 

ある海外サイトの情報によると、ホップには100種類以上、麦芽には40種類以上、酵母菌には200種類以上あるから、それらを組み合わせることによって、さまざまなビールを作ることができる。
「ビール純粋令」が出されたバイエルンは、オクトーバーフェストが開催される場所として本当にふさわしい。

 

ドイツでは「ビール純粋令」のように、国立ドイツ菓子協会によって、バウムクーヘンの定義や基準が定められている。
油脂はバターのみを使用し、ベーキングパウダーは使わないこと、卵2に対してバター1、砂糖1、粉類1を配合することなどの条件を満たしたものだけが、バウムクーヘンと認められる。
こういう厳格な基準があって、バウムクーヘンは簡単に作ることができないから、日本と違って、ドイツでバウムクーヘンは身近なお菓子になっていないらしい。
ドイツ人は厳格だ。

 

 

 

日本 「目次」

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

ドイツ人が感じた日本の街や人:無人販売所・盗み・創造力

カリブ人から見た日本「自転車が盗まれないってウソだろ?」

外国人が驚く日本社会の2面性「なんでカードが使えない?」

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。