きょねん日本の大学で学んでいたドイツ人とインドネシア人と一緒に、焼津さかなセンター・清見寺・久能山東照宮の静岡日帰り旅行に行ってきた。
なのでこれから、そのとき彼らから聞いた日本の印象について書いていこうと思う。といっても、今回はドイツ人の話が中心なのでよろしく候(そうろう)。
前回までのはこれっす。
「シーフードは大好きです!ドイツでは生肉を食べる習慣はないですけど、日本のお寿司は最高です」とドイツ人が言うから、焼津さかなセンターの海鮮丼で有名なお店に連れていったら、「ここまで生魚が多いのはダメです。寿司ぐらいならいいんですけど」と言う。
さて地球の北側のドイツと南側のインドネシアでは、日本で見たモノについても印象は真逆だった。
日本で無人販売所を見たとき、はじめインドネシア人はそれが何か想像がつかなかった。
でも、みんなが正直にお金を入れて野菜を持っていくシステムと知り、「奇跡」を見た思いで感動したという。
日本でもズルい人間はいるけど、一応こういうやり方は成立している。
「インドネシアならあり得ないですね」と彼は迷わず太鼓判を押す。
お金を“正直に”箱に入れて農産物や花などを持っていくやり方を、英語で「オネスティー・ボックス」と呼ぶ。
An honesty box is a method of charging for a service such as admission or car parking, or for a product such as home-grown produce and flowers, which relies upon each visitor paying at a box using the honor system.
人間の名誉(honor)や自尊心によって成り立つシステムで、日本の無人販売所もそのひとつ。
これが一般的にある国は世界的には少ないようで、日本にいるペルー人やアメリカ人、香港人も感心していた。
別の機会にくわしく書くつもりだけど、ドイツの鉄道駅では改札機がないからチケットを購入しないで電車に乗れてしまう。(バレたら高額の罰金)
これも「名誉システム」のひとつだ。
今回のドイツ人留学生も日本でこれを見たけど、ドイツでも花の無人販売所があって、商品が違うだけでやり方は同じだから特に感動はナッシング。
*ドイツにも野菜や果物の無人販売所はあるらしい。
インドネシア人みたいに「さすが日本人だ!」と思うことはなく、これを見ても印象に残らなかった。
このインドネシア人にとって無人販売所は、ズルをしない日本人の正直さとルールを守るという遵守精神や規律正しさの象徴でもある。
でもドイツ人もよく規則を守るから、彼の場合、インドネシア人のようにこの点で日本人が印象的ではなかったらしい。
インドネシアではルールや決まりを守らない人が多くて、役人は平気でワイロを要求するらしい。
このインドネシア人がバイクの免許を取るために警察署に行ったら、「もっとお金を出したら、自動車免許をやるけどどうする?」と窓口で言われた。
これには日本人のボクとドイツ人がビックリ。
ドイツ人留学生が日本人について驚いたのは、カフェやレストランでテーブルにノートパソコンを置いたままトイレに行くことや、席取りのためにバッグをイスに置いてその場を離れること。
ドイツでこの行為はハイリスクだから、「盗みをしない」という正直さで彼は日本人をすばらしいと絶賛。
インドネシアでも「置きっぱ」は自殺行為か無償のボランティア活動でしかないという。
それとドイツ人の彼が印象的だったのが日本人の創造力だ。
ドイツのお菓子・バームクーヘンが日本では抹茶、オレンジ、イチゴなどいろいろな種類があって、その発想や商品化の力にはすごいと思ったらしい。
日本とバームクーヘンについてはこの記事をどうぞ。
3月4日はバームクーヘンの日!ドイツ人ユーハイムと日本の関係
この人物は戦国時代の日本にやってきて、キリスト教を紹介した宣教師のフランシスコ・ザビエル。
ザビエルは日本人の印象をこう記す。
「この国の人びとは今までに発見された国民の中で最高であり、日本人より優れている人びとは、異教徒のあいだでは見つけられないでしょう。彼らは親しみやすく、一般に善良で悪意がありません。驚くほど名誉心の強い人びとで、他の何ものよりも名誉を重んじます。」
日本人を「発見した」というのは当時のヨーロッパ人らしい発想だ。
ザビエルは同時に、「盗みについてこれほどまでに節操のある人びとを見たことがありません」とも感心している。
こういう社会なら、英語でいう「名誉システム」が自然発生しても不思議じゃないかも。
お寺でドイツ人がこれを見て、「こんなに大きい蝶は見たことがない!」と興奮する。
インドネシア人はチラリと見て素通りしたから、母国でこれは珍しくも何ともないのだろう。
巨大なワニやヘビに人間が殺されることもあるインドネシアに比べたら、日本とドイツの自然なんてきっと「おかわいい」レベル。
さてこの前、上のドイツ人とメールでやり取りをしているときに無人販売所が話題に上がって、「そういえばアーヘン(ドイツの都市)にいたときには、街でよくこんなものを見たな」とこんな写真を送ってくれた。
不要になった本をこの棚に入れて、好きな本があったら誰でも自由に持っていくことができる。
くわしいことはここをどうぞ。(ただしドイツ語)
Liste öffentlicher Bücherschränke in Nordrhein-Westfalen
販売所ではないし商品価値があるかも微妙だけど、この文化も「名誉システム」のひとつに入れていいと思う。
>不要になった本をこの棚に入れて、好きな本があったら誰でも自由に持っていくことができる。
まあ確かにそういう方法もあるのでしょうが。考えようによっては、ゴミ箱を設置するだけのスペースと根気がないので、そのような邪魔くさい「回収ボックス」を街なかに設置して、一般人の交通の邪魔をしているとみなすこともできそうです。最近、日本の街角から電話ボックスが次々撤去されているのも、スペース不足で邪魔だからでしょ?
狭い日本では、こんなことやるより「古本屋」という立派な文化があるのでそちらを利用しましょう。おそらく、ドイツでは、一般大衆が「本を読む」などという知的活動をするはずがないとでも考えられているのでしょう。欧米白人にはさもありがちな考え方ですよね。