きょねん日本の大学で学んでいたドイツ人とインドネシア人と一緒に、焼津さかなセンター・清見寺・久能山東照宮へ日帰り旅行に行ってきた。
なのでこれから、そのとき彼らから聞いた話を書いていこうと思う。の第5弾。
といっても今回はインドネシア人の話オンリーで、ドイツ人の話はまた今度。ちなみにドイツでも無人販売所はあるらしい。
あ、前回までのはこれっす。
焼津さかなセンターでこんな貝料理を食べているとき彼らに、「あなたが日本で驚いたことや母国との違いを感じたことは何ですか?」と質問してみた。
日本人からこう聞かれるのは、「あなたは納豆を食べられますか?」「お箸が使えますか?」に匹敵する来日外国人あるあるのひとつに違いない。
だから答えやすいだろう。
するとインドネシア人が「あれには驚きました!」と目を丸くして言ったのが、日本の田舎や郊外によくあるコレ。
ボクは無人販売所と覚えていたけど、ウィキペディアでは「良心市」とある。
日本全体ではこの呼び方の方が多いのか?
起源は明確ではないが、貨幣経済が浸透することが必要であるため、農業史の中では比較的新しいのではないかとみられている。
では、生まれて初めて無人販売所を見たインドネシア人の感想に耳を傾けよう。
「散歩をしていたら小さな建物があって、何だろう?と思って中をのぞいたら、野菜が置いてありました。でも、人がいないからすごく不思議です。自由に持っていっていいのかと思いましたけど、貼り紙にある文を読んだら、箱にお金を置いて好きな野菜を持っていくシステムだと分かりました」
でも頭で理解することと、心で受け入れることは別。
この無人システムは分かったけど、誰もいないのに、みんな正直に本当にお金を入れることが彼には信じられなかった。
(まあ全員ではないだろうけど)
「あれは奇跡ですよ」と言う彼に、「インドネシアで無人販売所はないの?」と聞いたボクは平和ボケ。それか脳みそが春のお花畑状態。
インドネシアでそんなことをするのは自殺行為のようだ。
「絶対にできません。無人販売所なんてあったら、すぐに野菜もお金もなくなりますよ。インドネシアでは、簡単に人を信じることはできませんから。こんな発想はないですね」
このあと彼と話をしていて、イスラーム教では(ほとんどのインドネシア国民はイスラーム教徒)、断食月のラマダンが明けるとイードというお祝いが行われて、そのときに無料で貧しい人に肉料理がふるまわれるという。
くわしいことはこの記事を。
ボクとしては「なるほど。でも、それと無人販売所って全然ちがくね?」と思ったけど、彼からするとインドネシアでこれに近いのはイードらしい。
つまり商売としてはとても成り立つものじゃなくて、それは慈善活動でしかない。
彼いわく、インドネシアでは良い制度が始まっても、不正行為をする人が続出するからすぐにつぶれてしまう。
数年前、貧しい人のために政府がガソリンの補助金を出していたけど、多くの国民がウソをついたり書類を偽装したり、役人はワイロをもらったりして不正が横行してこの制度は廃止された。
もちろん事前に不正が行われることは想定していたから、政府もそれなりの対策も取っていたけど、国民の“ズル”がそれを上回ったという。
ネットを見たら似たような記事を発見。
首都ジャカルタで低所得者向けに教育費の補助を始めたところ、不正受給者が大量発生したことから、この制度の見直しが迫られた。
怒りのアホック知事代行がこう語る。
じゃかるた新聞の記事(2014/06/03)
知事代行は再募集について「恥知らずのぺてん師が多くいたため」と説明。これまでに十分な収入があるにもかかわらず、給付金を不正に受け取っていた例が相次ぎ発覚。
「ぺてん師が多い」 不正2万7000件 KJP受給調査 アホック氏
インドネシアでは良い制度があってもズルい人が壊してしまう、と彼が言っていたのはこういうことだろう。
日本の無人販売所が奇跡に見える理由がよく分かる。
では最後にクエスチョン。
この人物は誰でしょう?
この人は映画技師の岡部 芳郎(おかべ よしろう:1884年 – 1945年)で、発明王トーマス・エジソンの助手をしていた。
エジソンは岡部を気に入っていて、こう語っている。
「自分の子供たちはしょっちゅう自分の周りから金品を勝手に持ち出していくが、この日本の青年はテーブルの上にお金が置いてあっても、手をつけることなど全くない」
日本人には今も昔も、変わらないところがある。
日本人は悪いことやきまりが悪い事をすると周りに人がいなくても誰かが見ていると感じるので悪さをする人が少ないんだと思います。
良心の有無とか、寄付行為とか、慈善活動とか、他人への不信感とかそういう価値観から考えることもできるのでしょうが。
日本人の場合、一番大きいのは「自尊心」の問題だと思うのですよ。時に「武士は食わねど高楊枝」と揶揄されるようなこともありますが、自分が乞食や泥棒と同じであるのを認めることは、社会制度上の身分差別がなく貧富の差も小さい日本人にとっては難しいことなのです。
日本ではカフェやレストランで、テーブルにノートパソコンをおきっぱにしてトイレに行っても盗まれませんからね。ゼロではないですけど。
あれはいろんな外国人が驚きます。
自尊心は大きなポイントですよ。
ドイツ人に聞いたら、ドイツでも無人販売所があるそうです。
英語でいう「オナーシステム」でズルをしないという個々人の名誉によって成り立つシステムです。
日本人なら自尊心といったほうが分かりやすいですね。