イスラム教徒のあけおめ!断食のラマダン後にはイード(祝宴)

 

日本で生活しているバングラデシュ人のイスラーム教徒が先日、SNSにこんなメッセージを投稿していた。

「明けましておめでとうございます」

これはこれはご丁寧に。
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。っておいマテ、いまは5月の終わりだぞ。
もうすぐ梅雨が始まるのに、なんでいまこのタイミングで「あけおめ」なのか?と日本人のボクは思ってしまったけど、イスラーム教徒的にはこれで正しかった。

 

すべての人類は同じ時間を生きているけど、使っているカレンダーは民族や宗教によって違うことがある。
イスラーム教徒の場合はイスラーム暦(ヒジュラ暦)に従って生活しているから、一般的な日本人と違っていまが「明けましておめでとう」になる。

預言者ムハンマドがメッカからメディナへのヒジュラ(移住)した622年を元年とするのがイスラーム歴で、ことし2020年はイスラーム世界では1398年になるのだ。
イスラーム暦によると聖なるラマダン月が2020年には4月23日から5月23日まであって、この期間中、全世界のイスラーム教徒は断食をしないといけない。

ラマダンが始まったとき、あるインド人イスラーム教徒はこんなお祝いのメッセージをSNSに載せた。

I wish Allah bless you with Happy Ramadan and usher upon your life with peace,Health and Prosperity !!! Aamin !!! Happy Ramadan !!

「あなたにアッラーの祝福があらんことを。ハッピーラマダン!」と喜んでいるのが、異教徒のボクにはやや不思議。
この期間中は日の出から日没まで飲食ができないから、これから苦行が始まるように見えるのだけど、イスラーム教徒にとっては「ハッピー」が始まるらしい。

 

ちょいと話はそれる。
ヨーロッパのキリスト教社会にも断食があって(いまもあるかも)、断食が始める直前には「肉に別れを告げる」という謝肉祭(カーニバル)が行われた。
カーニバルとは俗ラテン語の「carnem(肉を)」と「levare(取り除く)」の合成語。
現代おこなわれるカーニバルには宗教性がなくなって、みんなで食べて踊っての壮大なお楽しみデーになっている。

 

ラマダン期間中のエジプト人の食事

 

そして断食月のラマダンが終わった5月24日は、「(ラマダンが)明けまして、おめでとうございます」ということになる。
先ほどのバングラデシュ人のメッセージはこう続く。

「神が私たちからそしてあなたから良い働きを受け入れてくださいますように 世界のムスリム達、そして我々のシェイフであるムハンマド 〇〇、そのご家族と弟子達にラマダーン明けおめでとうございます。」

そしてラマダンが明けると、お祝い「イード」の日になる。
イードとはアラビア語で「祝宴」を意味していて、このときイスラーム教徒は家族や友人とご馳走を楽しむ。
一か月の断食をがんばった自分たちへのごほうびのようなものか?

だから世界各国のイスラーム教徒がSNSに、「Eid Mubarak! (イードおめでとうございます!)」というメッセージを書き込んでいた。

これはインドネシア人のコメント。

「Eid Mubarak y’all! Taqabbalallahu Minna wa Minkum Mohon maaf lahir dan batin」

機械翻訳にかけると「イードムバラクヤル! Taqabbalallahu Minna wa Minkum心身の謝罪」とわけわかめだけど、とにかく「Eid Mubarak (イードおめでとう)」が分かればそれでいい。

エジプトの第4代大統領だったムハンマド・ホスニー・ムバーラク氏の「ムバーラク」がこれ。
だから「ムバラク大統領」というと「おめでとう大統領」になる?

 

 

意外なことに、中国系で仏教徒のシンガポール人まで「イードムバラク」とメッセージを書き込んでいた。
「なぜ?」と思って本人にたずねたら、シンガポールにいるイスラム教徒の友人に向けて祝福のあいさつをしたという。

その人はイスラーム教徒じゃないけど、多文化社会のシンガポールでは自分の宗教に関係なく、ラマダン明けの祭りやヒンドゥー教の祭りのときには、あいさつとしてこんなメッセージをすることがあるらしい。

 

あるエジプト人のイードの食事

 

イードの過ごし方をエジプト人に聞いてみたら、家族親戚が集まってみんなでアッラーに感謝の言葉を述べたあとに食事をして、そのあとは散歩をしたり映画を見たり、ダンスを楽しむという。
でも今年はコロナウイルスのために、家族と家で過ごしたからかなりさみしかったらしい。

ラマダン明けのイード(イード・アル=フィトル)について、くわしいことはここをクリックですよ。

フィトルは断食の終わりを意味する(自然という意味のフィトラが入っているという解釈もできる)。そのため、この行事は断食の終わりの象徴として行われており

イド・アル=フィトル

 

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2 件のコメント

  • ムスリム(イスラム教徒)にとって、ラマダンの始まりも終わりも「ハッピー・ラマダン!」となることは分かりました。で、新年の始まりは「(ア)ハッピー・ニュー・イヤー!」とはならないのですか? 新年の始まりが西暦での何月何日になるか知りませんが。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。