【明るく無責任】日本人と対照的なフィリピン人の性格

 

最近、東京のある牛丼屋で“事件”が発生した。
店の駐車場に何度も無断駐車する車があったから、店員がブチギレて、こう書かれた紙を車体にペタペタと貼った。

「再三再四にわたる、当店よりの要請にもかかわらず、貴殿は当店駐車場に不当に長時間駐車を繰り返しています。」

無断駐車に怒る気持ちは分かるが、この牛丼屋はやり過ぎた。
車のあらゆる部分に約300枚の警告書が貼られた結果、車は白い紙で覆われた不思議なオブジェクトと化してしまった。
事情を知らない客が店にやってきて「なっ、なんだこれは!」と驚き、その写真をSNSにアップするとすぐに拡散し、メディアにも取り上げられて店には批判が殺到した。
警告書を1枚貼るぐらいならよかったけど、ここまですると、器物損壊罪になる可能性があるという。
牛丼屋の本部は店に対し、「厳重注意する」と公式に発表したから、この対応は完全に失敗だった。
ルールを破った相手に対しても、ルールや常識の範囲内で対応しないといけない。

 

「縁切り神社」として有名な京都の安井金比羅宮(やすいこんぴらぐう)
願い事を書いた紙を貼り付けて、穴をくぐると願いがかなうと言われる。紙の数が多すぎて、元の形がわからなくなってしまった。
牛丼屋に無断駐車していた車がこんな状態になった。

 

一方、同じ状況でもフィリピン人は別の対応をして、SNSで圧倒的な支持を得た。

沖縄タイムスの記事(2021年9月9日)

「優しいなぁ」こんな注意書きなら納得かも 沖縄のラーメン店に13万「いいね!」

沖縄にあるラーメン店のフィリピン人オーナーが、3日間連続で無断駐車している車を見つけ、こんな警告書を置いた。

「次 無断駐車してるのを見つけたら、うちのおいしい鶏白湯(とりぱいたん)ラーメンを10食買ってもらい、リピーターになってもらうので無断駐車しないでください」

文章に優しさがあって、丸っこい文字からも「外国人が一生懸命に書きました感」が伝わって好印象。
オーナーがこれをツイッターに投稿すると、大拡散されて13万件以上の「いいね」をゲットし、2万件以上もリツイートされた。
さらに、朝日新聞などの大手メディアにも好意的に取り上げられた。

「いけないことをした人でも、嫌な思いをしてほしくない。人は優しくされた方が心に残るはず」

オーナーがそんな気持ちを素直に表現したら、日本人の共感を呼んで、絶大な宣伝効果となった。

 

この無断駐車への対応には、日本人とフィリピン人の性格の違いがよく表れていると思う。
これまでフィリピン人と接してきた経験から言わせてもらうと、両者にはこんな違いがある。

日本人は忍耐強く、よく我慢するけど、限界を超えるといきなり爆発する。
一方、フィリピン人は小さなことにはこだわらない。だから、他人に迷惑をかけても、自分がかけられても気にしないでニコニコしている。
この点で日本人とフィリピン人は水と油。だから、日本人がフィリピン人に「無神経な!」とイラッとすることがあれば、フィリピン人が日本人に「怒っているならはっきり言って!」と不満を感じることがある。

フィリピン人の性格は大らかで、日本人がイライラすることでも軽くスルーできるから、あまりストレスを感じないでリラックスしている。
個人的に、フィリピン人の性格を思い知らされた出来事がある。

数年前、フィリピン人女性の知り合いがいて、彼女は日本の学校で英語を教えていた。
ある時、彼女や友人の外国人たちが有名な山にハイキングに行きたいと言い出し、日本人のボクがその計画を立てることになる。
調べると、そこは人気のスポットで、駐車場は午前10時ごろにはいっぱいになるらしい。
それで前日に、ボクがグループメールに「そういうことだから、当日は絶対に遅れないように」と伝えて、「OK!」の返事をもらった。いま思えば、それは不幸フラグだった。

当時の早朝、ボクが車で迎えに行くと、アメリカ人やイギリス人たちは集合場所のコンビニに来ていた。
が、約束の時間になっても、2人のフィリピン人が現れない。
10分後、アメリカ人が連絡すると、彼らは「いま朝食を食べ終わった。あと10分でそこへ行く」と言ったらしい。
日本人のボクとしては、なんでコンビニで買わないのか理解できない。
アメリカ人やイギリス人は「仕方ないよ、フィリピン人だからね」と、お手上げ状態で両手を挙げる。
15分後、フィリピン人の男女が歩いてやって来た。
謝罪するどころか、満面の笑みを浮かべて「グッモーニン!」とみんなにあいさつをする。
「罪悪感? なにそれ?」みたいな傍若無人な彼らの態度を見て、改めて腹が立つ。
結果的には、駐車場にはかろうじて空きがあって、ハイキングをすることができた。

ちなみに、フィリピンの人たちはメンツとても大事にするから、それが傷つくような言い方をされると激しく怒る。

 

後日、この時一緒にいたアメリカ人やイギリス人に、フィリピン人の性格について聞いてみた。彼らから見ると、日本人とフィリピン人の行動や考え方は真逆。
日本人に特徴的な計画性や確実性、責任感といったものがフィリピン人にはない。

フィリピン人は時間にはルーズで、約束した時間の1時間後にやって来ることは普通にある。
事前に確認しないで、基本的に出たとこ勝負だから、そのフィリピン人に誘われてレストランへ行ったら休業日だった、みたいなことはよくある。
日本人みたいに、時刻表などをチェックして綿密な計画を立てるコトはしない。
その代わり、フィリピン人は大らかな性格で、こちらがミスをしても笑って受け流してくれる。相手を気遣っているのではなくて、彼らは本当に気にしていない。
計画よりも気分で行動するから、お金があまり無いのに、食事をおごってくれることがある。
あのハイキングの朝も全体や先のことより、その時の自分たちの気持ちを優先した。
フィリピン人にはいろいろな欠点があるが、太陽みたいな明るさとフレンドリーさがそれをカバーしている。
日本人は反対に、何でもキッチリと仕事をして信頼できるけど、いつも距離があって友だちになりにくい。

 

フィリピンに住んでいた日本人と話をしていたときにも、同じようなコトを聞いた。

フィリピン人は超オープンで、初対面でも親しみやすく、ご飯やお酒をごちそうしてくれることも珍しくない。
でも、未来のことは考えない。
彼らは常にイマを生きていて、日本人の感覚からすると貯金をする習慣や考え方は無いも同然。
だから、お金が無くなると気軽に「お金を貸してくれ」と言ってくる。
貸してもすぐに使ってしまって、またお金を借りにやってくる。
日本人からすると、フィリピン人には計画性や責任感が無いから、説教じみた話をすると「おまえはケチだ」と言って怒り出す。

日本人だとイラっとするこんな行動や態度も、フィリピン人は平気らしい。

・人前でゲップをしたり、鼻をほじったりする。
・レストランで大声で話したり笑ったりする。
・床に落とした物を足で拾う。
・道で3人が並んでおしゃべりしながら歩くから、後ろの人がブロックされる。

フィリピンの人たちは広い心を持っているから、細かいことを気にしない。
そんな見方もあるだろうけど、彼らは鈍感力がすごいから、小さなことには気づかないという面もある。
フィリピンではお金が無くても、心を病む人は日本人より少ない気がする。

 

自分の敷地内で無断駐車を見たら、日本人なら「許せない!」となるけど、フィリピン人なら大して腹が立たないだろう。
だから今回の場合、日本人は「当店よりの要請にもかかわらず、貴殿は~」という警告書で車を埋め尽くした一方で、フィリピン人は「うちのおいしいラーメンを10食買ってもらい、リピーターになってもらう」と明るくフレンドリーに対応した。
そんな性格の違いから、「13万いいね」と「厳重注意」という天地の差が生まれた。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。