【明るく無責任】日本人と対照的なフィリピン人の性格

 

最近、東京のある牛丼屋で“事件”が発生した。
店舗の駐車場に何度も無断駐車する車があったから、店員がブチギレて、こう書かれた紙を車体にペタペタと貼る。

「再三再四にわたる、当店よりの要請にもかかわらず、貴殿は当店駐車場に不当に長時間駐車を繰り返しています。」

無断駐車に怒った人が、車に警告書を貼り付けるコトは全国である。
でも、この牛丼屋はやり過ぎた。

車のあらゆる部分、サイドミラーにまで約300枚の警告書が貼られた結果、車は白い紙で覆われて異様なオーラを放つ。
事情を知らない客が店にやってきて「なっ、なんだこれは!」と驚き、その写真をSNSにアップ。
すると大拡散され、メディアに取り上げられる事態に発展し、店には批判が殺到した。

 

京都の安井金比羅宮(やすいこんぴらぐう)は「縁切り神社」として有名だ。
ここでは、願い事を書いた紙をこのオブジェに貼り付けて、穴をくぐると願いがかなうとか。
ただ、「〇〇と〇〇が別れますように」といった他人の不幸を願うことも多く、「呪いの神社」とも言われる。
牛丼屋に無断駐車した車がまさにこんな状態。
「牛丼屋 無断駐車 ステッカー」で検索すれば画像が出てくる。

 

店の説明によると、この車のオーナーは2日間連続で無断駐車をしていたから、店員2人でセロハンテープを使って警告文を車に貼り付けた。
テレビ番組でこの対応について意見を求められた弁護士は、1枚ぐらいならよかったが、ここまですると器物損壊罪になる可能性があり、明らかにやり過ぎだったと指摘する。
*牛丼屋の本部も、「行き過ぎた対応であり、当該従業員に対しては厳重注意する」と公式に発表した。

無断駐車があった場合、その弁護士の見解では、店は警察に通報して対応を相談するべきだった。
でも、実際には警察は駐車場や私有地での無断駐車に対して、基本的に手を出すことができない。
通報したら、警察官が来てくれるだろうけど、現場を見て「ウチらには何もできません」と言われるのがオチだ。
その車に触れて少しでも傷をつけると、逆に自分が器物損壊罪に問われてしまう。
だから、警告書をガムテープで貼るのはキケンだ。
法律がそうなっているから、無断駐車をされても一般的には何もできず、泣き寝入りすることがほとんどだろう。
そういう事情があるから、テレビの識者と違って、ネット民には店の対応を支持する人が多い。

・やり過ぎなのは無断駐車してる車だからな?
・俺の車に触れたら弁護士呼ぶわ
・こういう逃げ得 やったもん勝ちみたいな犯罪なくす法改正しろよ
・店長のこいつに対するスゲー憎しみが伝わって来るなw
・店の品位は下げるやり方だけどバカにわからせるためにはいいじゃん
・その前段階があったのなら別にやり過ぎではないな

日本人は法やきまりを尊重するから、ルールを破る人間にはすごく腹が立つ。

 

 

駐車場に無断駐車されても、店側は警告書を貼るぐらいの対処しかできない。
今回の牛丼屋では店員の怒りが爆発し、300枚近くも貼ってしまって、結果的には店が大きなダメージを受けてしまった。
一方、同じ対応でもフィリピン人の場合は違って、SNSで圧倒的な支持を得た。

沖縄タイムスの記事(2021年9月9日)

「優しいなぁ」こんな注意書きなら納得かも 沖縄のラーメン店に13万「いいね!」

沖縄にあるラーメン店のフィリピン人オーナーが、3日間連続で無断駐車している車を見つけ、こんな警告書を置いた。

「次 無断駐車してるのを見つけたら、うちのおいしい鶏白湯(とりぱいたん)ラーメンを10食買ってもらい、リピーターになってもらうので無断駐車しないでください」

文章にはやさしさがあり、丸っこい文字からも「外国人が一生懸命に書いた感」が伝わる。
フィリピン人オーナーがこれをツイッターに投稿すると、大拡散されて13万件以上の「いいね」をゲットし、2万件以上もリツイートされた。
さらに、朝日新聞などの大手メディアにも好意的に取り上げられた。

「いけないことをした人でも、嫌な思いをしてほしくない。人は優しくされた方が心に残るはず」

オーナーがそんな気持ちを素直に表現したら、日本人の共感を呼んで、絶大な宣伝効果となった。

 

この無断駐車への対応には、日本人とフィリピン人の性格の違いがよく表れている。
これまでのフィリピン人との付き合いから、個人的に両者にはこんな違いがあると思っている。

日本人は忍耐強く、よく我慢するけど、限界を超えるといきなり爆発する。
一方、フィリピン人は小さなことにはこだわらない。だから、他人に迷惑をかけても、自分がかけられても気にしないでニコニコしてる。

フィリピン人は、日本人がイライラすることでも軽くスルーできるから、あまりストレスを感じない。
彼らの性格は大らかだけど、忍耐強いわけではないから、メンツをつぶされるとすぐに怒る。

個人的に、フィリピン人の性格を思い知らされた出来事がある。
数年前、フィリピン人女性の知り合いがいて、彼女は日本の学校で英語を教えていた。
ある時、彼女や友人の外国人たちが有名な山にハイキングに行きたいと言い出し、日本人のボクがその計画を立てることになる。
調べると、そこは人気のスポットで、駐車場は午前10時ごろにはいっぱいになるらしい。
それで前日に、ボクがグループメールに「そういうことだから、当日は絶対に遅れないように」と伝えて、「OK!」の返事をもらった。
いま思えば、それは不幸フラグだった。

当時の早朝、ボクが車で迎えに行くと、アメリカ人やイギリス人たちは集合場所のコンビニに来ていた。
が、約束の時間になっても、2人のフィリピン人が現れない。
10分後、アメリカ人が連絡すると、彼らは「いま朝食を食べ終わった。あと10分でそこへ行く」と言ったらしい。
それを聞いて、しばし絶句した後、「コンビニで買えや~」と心の中で叫ぶボク。
アメリカ人やイギリス人は「仕方ないよ、フィリピン人だからね」と、お手上げ状態で両手を挙げる。
15分後、フィリピン人の男女が歩いてやって来た。
謝罪するどころか、満面の笑みを浮かべて「グッモーニン!」とみんなにあいさつをする。
「罪悪感? なんで?」という傍若無人な態度を見て、改めて腹が立つ。
結果的には、駐車場にはかろうじて空きがあって、ハイキングをすることができた。

 

後日、この時一緒にいたアメリカ人やイギリス人に、フィリピン人の性格について聞いてみた。
彼らから見ると、日本人とフィリピン人の行動や考え方は真逆だ。
日本人に特徴的な計画性や確実性、責任感といったものがフィリピン人にはまるで無い。

フィリピン人は時間にはルーズで、約束した時間の1時間後にやって来ることは普通にある。
事前に確認しないで、基本的に出たとこ勝負だから、そのフィリピン人に誘われてレストランへ行ったら休業日だった、みたいなことはよくある。
日本人みたいに、時刻表などをチェックして綿密な計画を立てるコトはしない。
その代わり、フィリピン人は大らかな性格で、こちらがミスをしても笑って受け流してくれる。相手を気遣っているのではなくて、彼らは本当に気にしていない。
計画よりも気分で行動するから、お金があまり無いのに、食事をおごってくれることがある。
あのハイキングの朝も全体や先のことより、その時の自分たちの気持ちを優先した。
フィリピン人にはいろいろな欠点があるが、太陽みたいな明るさとフレンドリーさがそれをカバーしている。
日本人は反対に、何でもキッチリと仕事をして信頼できるけど、いつも距離があって友だちになりにくい。

 

フィリピンに住んでいた日本人と話をしていたときにも、同じようなコトを聞いた。

フィリピン人は超オープンで、初対面でも親しみやすく、ご飯やお酒をごちそうしてくれることも珍しくない。
でも、未来のことは考えない。
彼らは常にイマを生きていて、日本人の感覚からすると貯金をする習慣や考え方は無いも同然。
だから、お金が無くなると気軽に「お金を貸してくれ」と言ってくる。
貸してもすぐに使ってしまって、またお金を借りにやってくる。
日本人からすると、フィリピン人には計画性や責任感が無いから、説教じみた話をすると「おまえはケチだ」と言って怒り出す。

日本人だとイラっとするこんな行動や態度も、フィリピン人は平気らしい。

・人前でゲップをしたり、鼻をほじったりする。
・レストランで大声で話したり笑ったりする。
・床に落とした物を足で拾う。
・道で3人が並んでおしゃべりしながら歩くから、後ろの人がブロックされる。

フィリピンの人たちは広い心を持っているから、細かいことを気にしない。
そんな見方もあるだろうけど、彼らは鈍感力がすごいから、小さなことには気づかないという面もある。
フィリピンではお金が無くても、心を病む人は日本人より少ない気がする。

 

自分の敷地内で無断駐車を見たら、日本人なら「許せない!」となるけど、フィリピン人なら大して腹が立たないだろう。
だから今回の場合、日本人は「当店よりの要請にもかかわらず、貴殿は~」という警告書で車を埋め尽くした一方で、フィリピン人は「うちのおいしいラーメンを10食買ってもらい、リピーターになってもらう」と明るくフレンドリーに対応した。
そんな性格の違いから、「13万いいね」と「厳重注意」という天地の差がうまれた。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。