一匹の妖怪がヨーロッパを徘徊(はいかい)している。極右主義という妖怪が。
なんてね。
これはマルクスとエンゲルスが書いた「共産党宣言」の始まりの文。
「一匹の妖怪がヨーロッパを徘徊している。共産主義という妖怪が」ってのをパクってみただけ。
これは世界的に有名な文だから、知っておいて損はない。
でも今のヨーロッパで「寛容の精神・多文化主義」に対して、移民の排斥や制限を訴える「極右」という敵が動き回っているのはホント。
ヨーロッパ極右
イスラム諸国などからの移民を制限(時には「追い出し」)することで、自国の雇用の確保や、治安の向上を実現しようというもの。一見わかりやすいロジックであるうえ、長期にわたり高失業率に悩んできた西欧の人々にはかなり魅力的に映っている。
知恵蔵2015の解説
ブルカ(ウィキペディア)
イスラーム教徒の女性が着る服。
ブルカはアフガニスタンで多い。
フランスやベルギーでは、ブルカの着用を禁止する法律が施行された。
ヨーロッパ全体で、ブルカやニカブの着用を禁止する動きが進んできている。
「でも、あの寛容の精神で知られたオランダまでも、ブルカを社会から排除するのか?」
ということで、このことが大きくニュースになった。
Newsweek(2012年1月30日)に、「寛容の国オランダもブルカ禁止へ王手」という記事がある。
オランダの連立政権は先週、イスラム教徒の女性が顔や全身を覆う「ブルカ」や「ニカブ」の着用を禁止する法案を来年までに可決すると宣言した。今週にもブルカ禁止法案が議会に提出され、その後は上下院で審議される予定だ。
でもこれは、決してイスラーム教徒を「狙い撃ち」にしたわけではないという。
連立政権に参加する中道右派のキリスト教民主勢力(CDA)いわく、宗教的な理由でブルカの着用を禁じようとしているわけではないという。
着用禁止の理由として、内務省は「誰かに会った際に互いの顔を確認できないと困るから」と説明している。
だからこの法案では、イスラーム教徒のブルカやニカブだけでなくて、スキー用のマスク、ヘルメットなども含まれる。
宗教を弾圧するのではなくて、「顔が見えないものを着用することを禁止しますよ」といいこと。
オランダ政府は、この法案を男女平等のためにも必要だと主張していた。
オランダ政府は逆に、ブルカやニカブの着用は男女の平等に逆行する行為と見なしているらしい。「この法案を通じて、政府は社会に参画している女性の障害を取り払おうとしている」としている。
これは2012年の記事。
この記事を読んだときは、「へえ、オランダまでもブルカ禁止かあ。どうなんだろう?」と興味はあった。
ちなみに、フランスでブルカを禁止した理由は「治安維持と共生」のためだという。
ニューズウィークの記事(2014年7月10日)から。
ブルカで顔を覆い隠す行為は治安維持や人々の共生を難しくする恐れがあるというフランス政府の主張を認め、着用禁止は思想・良心・信教の自由を侵害していないとの判断を示した。
一緒に生活するなら、外国人の自由にも制限が必要にある。
そこに住んでいる人たちが不安を感じるようなかっこうはダメ。
というのがフランスの考え方。
イスラーム教の考え方を否定するのではなくて、フランスの価値観を優先するということ。
目だけ出ているのはニカブ(イエメンの女性)
それから4年がすぎた去年、オランダでついにブルカ着用を禁止する法案が可決した。
AFPの記事(2016年11月30日)から。
オランダ下院(定数150)は29日、イスラム教徒の女性が使用する顔を含め全身を覆う衣服「ブルカ」や、目の部分だけが開いた顔を覆うベールを、一部の公共の場で着用することを禁止する法案を、賛成132の圧倒的多数で可決した。
(中略)法案は今後、上院での可決を経て成立する見込み。欧州ではフランスやベルギーで同様の禁止令が課されている。
でも、着用が禁止されるのは「一部の公共の場」で、バスや電車といった公共交通機関や学校、病院などに限られる。
スーパーに買い物に行くのなら、ブルカでもOKなんだろうか?
もし違反すると、最高で410ユーロ(約5万円)の罰金を払わないといけなくなる。
オランダがブルカ禁止を決めた理由には、フランスと同じで治安の維持がある。
The Huffington Postの記事(2016年11月30日)には、こう書いてある。
ブルカ禁止法案がオランダ下院で可決 ヨーロッパで規制広がる背景は
この法案は「誰でも自分の好きな服装をする権利がある」とした上で、「この自由は社会的なサービスや治安のためなどに、人々を識別するために必要なときには制限される」と言及している。
公共の場では顔をしっかり出していないと不安に思う人もいる。
でも、これは仕方がないと思う。
フランスと同じで、オランダにとってはオランダの価値観を守ることがもっとも大切なことだから。
それは右翼でも極右でもない。
現実的な選択で、多文化共生には必要なこと。
そうでなかったら、いくら寛容の国のオランダでも外国人と一緒に生活することはムリだろう。
外国人の側も努力する必要はある。
その国の価値観や考えを尊重したり社会のルールを守ったりしなかったら、その社会には受け入れらない。
海外旅行で来たお客さんじゃなくて、一緒に生活する人間なんだから。
これから日本にもたくさんの外国人がやってくる。
このフランスやオランダの考え方は参考になると思う。
髪を隠すのはデジャブ。
じゃなかった、ヒジャブ。
ヒジャブは東南アジアのイスラーム教徒に多い。
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