以前、SNSを見ていたら、イタリアに住んでいる日本人の投稿が目に入った。
その日本人はこんなイタリアのことわざを知って、イタリア人と日本人との価値観や考え方の違いがよく表れていると思ったという。
「Meglio un uovo oggi che una gallina domani」
(明日のニワトリより、今日のたまご)
次の2つの選択肢があるとしよう。
A:明日になれば、ニワトリをもらうことができる。
B:今すぐ確実に、卵一個が手に入る。
ニワトリは卵をたくさん産んでくれるから、「A」の選択肢の方が利益はデカいけど、明日まで待たないといけない。
こういう場合、イタリア人はせっかちで、「明日は明日の風が吹く」とあまり後先を考えずに行動するから「B」を選ぶ。
一方で、日本人は忍耐強く、未来のことを考えて行動するから「A」を選ぶ。
「明日のニワトリより~」の考え方は、日本の「損して得とれ」のまさに逆。
日本人は将来の大きな利益を得ようとするけど、イタリア人は小さな利益を確実にゲットしようとする。
この投稿をした日本人はイタリアに住んでいる経験から、上の2つのことわざがイタリア人と日本人の性格や考え方の違いを表していると考えた。
ただ、「明日のニワトリより、今日のたまご」により近い意味のことわざなら、「明日の百より今日の五十」だと思う。
今すぐ50万円をもらうか、明日100万円をもらうかの選択肢があったら、イタリア人なら前者を選ぶ。で、すぐに使ってしまい、明日には25万円になっている。
日本は次の日に100万円をもらい、ほとんどを貯金する。
もちろん、このへんの考え方は正確には人によってそれぞれ違う。
日本人の中にも、「泣かぬなら 泣くまで待とう ホトトギス」という家康のような人もいれば、「殺してしまえ ホトトギス」という信長気質の人もいる。
イタリアにも、「我慢する者が(最後に)勝つ」ということわざがあるらしい。
これは、イタリア人の忍耐力の弱さの裏返しかもしれないが。
ただ、「そういう人もいれば、そうじゃない人もいる」なんて個人差を言い出すと、自分以外はすべて他人だから、関東人と関西人の違いも話せなくなってしまう。
ここでは、日本人とイタリア人の性格や考え方を大まかにみて、それぞれの国民性を取り上げる。
各自の経験や主観にもとづく意見だから、「一概に言い切ることはできない」ではなく、基本的に言い切る。
ドイツ・ブレーメン
知り合いのドイツ人には、日本とイタリアに住んでいた経験がある。
そんな彼に、「明日のニワトリより、今日のたまご」のことわざについて意見を聞いたところ、彼は日本人とイタリア人の忍耐強さよりも、確実性の違いを感じると言う。
*以下、彼の語り。
日本人は超時間厳守だよね。
電車が1分単位で正確に運行される国なんて、世界で日本だけでしょ。
たった数分でも、待ち合わせに遅れると分かれば、到着する前にメールで「ごめん、遅れます」と連絡する。
そして、走ってやって来て「待たせてごめん!」とまた謝るんだ。
イタリア人の時間感覚はルーズなんだ。ユルユルだよ。
30分の遅れはフツーで、1時間待たされることもあるし、10分ぐらいの遅刻ならメールで知らせることもない。
「遅いなー」と思ってこちらがメールして、「あと5分で着く」という返信があったとしても、実際に現れるのは10分、15分後。
待ち合わせ場所にはゆっくり歩いてきて、目が合うと笑顔で手を振る。
謝罪はしないけど、「今日は渋滞がひどくてうんぬん」といった言い訳ならよくするね。
それに、イタリア人は気分や状況が変わると、前に言ったことも変わることが多いから、彼らとの約束はあまり当てにならない。
その点、日本人の言葉は信頼できる。
ドイツ人の自分としては、日本人の時間厳守や堅苦しさにはついていけない面があるし、イタリア人のルーズさには、時間を盗まれているようでウンザリすることがある。
たぶん、自分はその中間にいるんだろうね。
ただ、イタリアでも、北部と南部では人々の性格や考え方が大きく違うんだ。
北部の人は時間と言葉がわりと正確で、南部ではいい加減になる。
イタリアでは北部は工業が盛んで、南部では農業が主流だから、そんな違いが生まれてくるんだろうね。
ちなみに、北部の人間はドイツ人に近い。
つまりさ、日本とイタリアでは、信頼性や正確性の高さが違うんだよ。
日本人が「明日ニワトリをあげる」と言えば、確実にもらえるから、待つことができる。
でも、イタリア人が同じことを言っても、後で気分や状況が変わって、実際にはどうなるか分からない。
日本とは「明日」の確実性が違う。
「明日あげる」と言われても、ゼロになるリスクを考えたら、その場で卵をもらうことを選ぶイタリア人が多いことは理解できる。
日本の社会は組織的で正確で、何度も感心したよ。
時刻表に「13時23分着」と書いてあったら、地下鉄や電車がいつもそのとおりに到着する。これは本当にスゴイことだよ。
ドイツ鉄道にそんな正確性を求めたら、職員に「車で行け!」と怒られるね。
もし、「明日のニワトリか、今日の卵のどっちがほしい?」と聞かれたら、ボクは明日の卵が無くなる可能性を考えて決めるけど、日本人はその言葉を疑わないんじゃないかな?
日本人は約束を守るし、信頼性の高い社会だから。
「損して得とれ」っていうのはさ、「我慢して待つ」という日本人の美徳より、言葉や社会の確実性を表していると思う。
忍耐力で言うなら、日本人よりもイタリア人の方が変化や遅刻に対してとても寛容だ。
ネットを見ると、イタリア在住の日本人が「貯金がなくても楽天的なイタリア人と貯金があっても不安な日本人」と言っている。
これは、日本人が将来のことをよく考えて、変化を恐れる傾向が強いということかもしれない。
ということで、本日のまとめ。
日本人は約束や時間、言葉をきっちり守るけれど、イタリア人はそのへんの確実性が低い。だから、日本人の方が長く待つことができる。
「忍耐力」についてはタイプが異なるから、それが発揮される場面も違う。
そんな国民性の違いがありそうだ。
【欧州の食のマナー】イタリア人、日本アニメに“間違ってる!”
コメントを残す