1階は2階です!? イギリス式の“G階”に日本人が混乱

 

まえに韓国人に年齢をたずねたら、「韓国式ですか? 日本式ですか?」と言われた。
日本では満年齢で「0歳」から人生が始まるが、韓国では数え年を使っていて「1歳」からスタートする。
日本でいう20歳は韓国では21歳になるから、彼は「ビーフ or チキン?」みたいな言い方をしたワケだ。
でも、最近は韓国人にそんな数え方は不便になったから、ことしの夏に満年齢に切り替わった。

韓国の「数え年」 日本人や外国人には不思議な風習

ものごとの始まりは「0」か「1」かは文化によって違っていて、これが日本人を混乱させる原因になる。

 

むかしミャンマーに行ったとき、あるビルのエレベーターに入ると、「1」の下に「G」と表示されていた。
これは一体何のことなのか?

 

 

このGは地下ではなく、「グラウンドフロア」のこと。
イギリスの建築では、日本で言うところの1階が「G階」と表示されるから、この場合、1階が日本の2階に相当する。
ミャンマーは以前イギリスの植民地だったから、いまでもその影響はいろんなところに残っている。
同じ理由で香港でも「G階」を見た。
アメリカをはじめ世界の多くの国では「1階」から始まっていて、「G階」を使う国は世界的に見て少ない。
0歳から始まる満年齢は、発想としてはこのイギリス式と同じで、1歳から始まる数え年はアメリカ式だ。

 

日本人はグラウンドフロアの考え方に慣れてない。
だから、ミャンマー人のガイドから、以前こんなコトがあったと聞いた。

ある日、ミャンマー人と日本人が「○ビルの2階に△というレストランがあります。そこで○時に会いましょう」と約束をした。
当日、ミャンマー人が待ち合わせ場所で待っていると、日本人が15分以上も遅れてやってきた。
ミャンマー人が「日本人にも時間にルーズな人がいるんだな。ミャンマー人ほどじゃないけど」と勝手に親近感を持つと、その実態は違った。

彼が階段を上がってビルの2階へ行ったら、そこはじつは1階だったから、どんなに探してもレストランを見つけることはできなかった。
そのときの心理は、「な… 何を言っているのか わからねーと思うが おれも 何をされたのか わからなかった…」といったものか。
それで、近くのミャンマー人に聞いてここへ来たと言う。
やっぱり日本人は時間に正確で、これは文化の違いによるものだった。
はじめに「2階というのはイギリス式ですか? それともアメリカ式?」と確認しておけばよかったのだ。

 

兵庫県の宝塚市役所では、ことしの2月13日までそんな混乱が続いていたらしい。
読売新聞の記事(2023/01/31)

首かしげる住民「ここが1階じゃないの?」、市役所からついに消える英国式「G階」表示

市役所の建物は建築家の村野藤吾が設計し、イギリスの建築スタイルが採用された結果、1階が「G階」、2階が「1階」となっていた。
宝塚市らしいハイセンスな発想だ。
でも、市民がついていけなかった。
「爺だとっ?」と怒る市民はいなかったが、G階から入ってきて、「1階に行って手続きをしてください」と職員に言われ、「アレ? ここが1階じゃない?」とナゾに包まれる市民はいた。
エレベーターもミャンマーと同じように、「G階」の上に「1階」と表示されていたから、市民には「わかりづらいわ!」と不評だったという。

そんなことから、ことし2月になって、43年間使われてきた「G」の表示をやめて、「1階」から始まることにした。
市役所側も市民に対して、G階と1階の概念の違いを説明するのが面倒くさかったと思われる。
役所の人から、「こちらでは英国式にG階を採用していまして…」なんて言われたら、「ここは日本だ!」とキレる人もいたのでは。

年齢なら、0から始めるやり方でいいけど、建物でそれはダメ。
40年以上かけても、市民の理解を得ることができなかったというのは、日本人の発想と絶望的に合わなったということになる。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。