イギリス人から見た日本人の「幽霊好き」。でもなんか違う…

 

野党にとっては本来なら敵のなずなのに、立憲民主党の野田佳彦元首相が岸田文雄首相を“勇気”をほめた。

産経新聞(2022/2/18)

首相公邸「事故物件扱い…」 野田元首相が岸田氏の入居を評価

1936年(昭和11年)の2月26日、陸軍青年将校らが約1500人の下士官・兵を率いてクーデター未遂事件を起こす。
二・二六事件」だ。
大蔵大臣の高橋是清や内大臣の斎藤実らを殺害し、昭和天皇を激怒させて鎮圧されたこの事件の後、首相官邸に隣の公邸には「二・二六事件の犠牲者の幽霊が出る」というウワサがつきまとうようになる。
というのはこのとき首相公邸で岡田啓介首相の義弟が殺害され、さらに言うとその4年前、1932年の「五・一五事件」でも犬養毅首相がここで殺されたから。
*「人間がこの世に生を受けた以上 自分のことは自分で処分し始末すべきである。」と言った高橋是清はこの運命を予想していたかどうか。

そのせいか知らんけど、これまで安倍・菅元首相は公邸には入らなかった。
それが今回、9年ぶりに岸田首相がこのお化け屋敷(首相公邸)への入居を決めたことで、野田氏が「『事故物件』扱いされてしまっている公邸だが、妙な都市伝説を吹き飛ばす。これは大切だと思う。幽霊見ていないですよね?」と国会で言って、それが全国ニュースになった。
日本は今日も平和だった。

ただこの「都市伝説」は本格的だ。
2013年の安倍内閣において首相公邸の幽霊については、「承知していない」とする答弁書を閣議決定したほどなのだから。(幽霊に関する閣議決定

いっそのこと、「日本最恐の事故物件に、キッシーが住んでみたよ!!」みたいな配信をしてくれたらいいのに。
イギリスの首相ならやるかも。

 

二・二六事件の反乱軍

 

浜松市内の中学校と高校で、英語を教えていたイギリス人女性の知人がいる。
中・高のどのクラスでもイギリスについて紹介するのがお約束で、

「イギリス料理ならローストビーフとフィッシュアンドチップスがおすすめ。」
「観光地なら、世界遺産のコッツウォルズにぜひ行ってほしい。」

といった話をする。
でも、生徒たちの食いつきが一番いいのは「ロンドン塔の幽霊」の話だという。
事前の打ち合わせで日本人の先生に相談すると、「ロンドン塔は歴史的に重要で有名ですし、子供たちはそういう幽霊ものが大っ好きなんです。ぜひ話してみてください!」という反応が返ってきて、実際、これで外したことがない。

 

11世紀にイングランドを征服した王がロンドンを敵から守るため、要塞の建設を命じたことからロンドン塔の歴史が始まった。
この正式名称は「女王(国王)陛下のロンドン塔の宮殿および要塞」だから、ひとつの塔がポツンと立っているのではなくて、国王が住む宮殿もあったかなり広い場所だ。

 

ロンドン塔の全景

 

ロンドン塔は「お化け屋敷」として有名で、ひょっとしたら世界で最も知られた「事故物件」かもしれない。
500年以上前からここは、一般人ではなくて身分の高い罪人をぶち込む監獄として使われていて、時には拷問や処刑も行われていた。
だからここは城塞や王宮としてよりも、血と絶叫の「恐怖の館」というイメージが大きい。
ちなみに記録に残っているここの最後の住人は、第二次世界大戦中にイギリスへやって来て捕まったナチスの副総統ルドルフ・ヘスだ。
ヘスは1941年~1944年の間、ロンドン塔にいた。

ここで命を奪われた、不幸な有名人の方々がこちら。

1471年:ランカスター朝最後の王ヘンリー6世
1535年:法律家で思想家のトマス・モア。
高校世界史で習う『ユートピア』の作者である彼は、斬首刑に処された後、その首はロンドン橋にさらされた。
1536年:ヘンリー8世の2番目の王妃アン・ブーリン。
1554年:イングランド初の女王になったジェーン・グレイ。
在位はたった九日間だったことから、彼女は「九日間の女王(Nine-Day Queen)」とも呼ばれる。

知人のイギリス人が生徒たちに話すのがアン王妃だ。
処刑された後、切断されて転がった彼女の首(頭部)が口を開いて何かを話そうとしたという。
これ以来、ロンドン塔には、首がなかったり自分の首を抱えたアン・ブーリンの霊が彷徨うようになった。
…という話を生徒にすると、フィッシュアンドチップスやコッツウォルズの話がかすむほど、いつもすごく受けがいい。
それでいつしか、「ロンドン塔の幽霊話」は彼女の十八番になったとか。
どこの稲川淳二だよ。

「自分の首を持つ幽霊」の話をしたのなら、ついでにアイルランドに伝わる「デュラハン」も紹介すればよかったのに。

 

生徒や先生からも好評だったことから、「イギリス人と同じように日本人も幽霊が好きなんだ~」と思ったら、彼女は日英の大きな違いに気がついた。

「自分はこれまで何回かロンドン塔に行ったけど、幽霊を見たことは残念なことに一度もない。特に子供のころは、『今日は幽霊に会えるかな?』とワクワクしたけど、結局そんなことはなくてガッカリした。」

という話をしても、生徒は共感しない。
「本物の幽霊が出るの?なら絶対に行かない」という人がほとんどで、平均的なイギリス人の自分は日本では例外的なチャレンジャーだった。
もし幽霊を見て写真に撮ることができたら、自分だったら「ラッキー!」と思うのに、中学生も高校生も男女の別なく、自分のスマホに映るのは絶対にイヤだと言う。
どうもみんな幽霊を真剣に怖がっている。

日本人で40代の男性教諭も同じで、それはとても不吉だと言ってこんな話をする。

むかし修学旅行で広島へ行ったとき、ある生徒が「チェキ(か写ルンです)」で原爆ドームの写真を撮ったところ、「壁に人の顔が映ってる!」と大騒ぎになった。
言われてみれば、人の目や口のように見えなくもないような?
で、「そんなのは気のせいだ。気にすんな」と言っても生徒は「無理無理無理」と拒否して、ホテルの部屋に持って行けないから、写真は先生が預かってくれと言い出す。
「くっだらねえ」と思っても、自分も原爆ドームの、しかも幽霊らしき何かが映った写真をゴミ箱に捨てることはできなかった。
不本意ながらそのまま持ち帰っても、自宅で燃えるゴミとして出すことができない。
結局、知り合いの坊さんに処分をお願いした。

 

自分のスマホに幽霊が映ったら「ラッキー!」とそのイギリス人は思うのに、日本人の反応はなんか重いし暗い。
もちろん、日本人にもイギリス人にも個人差はある。
だとしても全体的には幽霊が好きで、とても興味があることでは一致している。
でも、イギリス人は幽霊を見るとラッキーと思って「楽しむ」感覚がある一方、日本人は「見てしまった!」とホンキで恐怖や不吉を感じるらしい。

たしかにウィキペデアにも、日本人とイギリス人の「幽霊観」の違いについてこんな説明がある。

日本と異なるのは、イギリス人たちは無類の幽霊好きで自分の家に幽霊が出ることを自慢しあう。「幽霊ファン」のような層がいて、幽霊見学ツアーなどが行われている。

幽霊・西洋 

 

これなら「ダウニング街10番地」(いわばイギリスの首相公邸)に幽霊が出ても、首相はむしろ喜んで住んで、たまに国民へのサービスで「今夜、あなたは目撃者になる!」なんてライブ配信をするかもね。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。