【食文化】アフリカ人が心底キモい! と思った日本食

 

日本に住んでいるバングラデシュ人の夫婦から、「夕食を食べに来ませんか?」と誘われたんで、先週の土曜日に彼らのアパートへ行ってきた。
そこにはナイジェリア人もいたから、自然と日本・バングラデシュ・ナイジェリアの食文化についての話題になる。
その話を聞いた結果、ナイジェリアとバングラデシュの食文化にはわりと共通点があるけれど、日本食は明らかに仲間ハズレだと判明。
それを決定づける食べ物があった。

 

この日のメニューには、魚とジャガイモを煮込んだバングラデシュのカレー料理が出た。

 

コレは豆を使ったスープ。

 

バングラデシュ料理をパクパク食べながら、ナイジェリア人がこんな話をする。

「ナイジェリアは多民族国家だから、食文化は民族や地域、宗教によってそれぞれ違うんだ。肉なら羊、牛、チキンをよく食べる。でも、ボクみたいなイスラム教徒だと豚肉はダメ。豆を使った料理や、トマトを使ったシチュー(たぶん日本でいうスープ)もポピュラーだ。でも、バングラデシュと違ってカレーはないね」

イスラム教徒の彼は日本で生活していて、「NGフード」を知らずに食べてしまうことを恐れていた。
イスラム教の教えに反しない食べ物を「ハラルフード」と言う。
それ以外の食べ物を口にすることは神の意思に反するから、彼は日本でそのタブーを破らないように警戒している。
安全を最優先し、いつも似たような食事をしているから、日本食はあまり楽しんでいない。
食事に招いてくれたバングラデシュ人はイスラム教徒だから、ナイジェリア人の彼も安心して食べることができる。

 

 

上のバングラデシュ料理は米を炒めたもので、日本で言うとチャーハンになる。
ナイジェリアでも野菜や肉、シーフードを使ったチャーハンは一般的で、彼もよく食べいた。
それとおかずは、ナスをじっくり油で揚げたもの。
ナイジェリアでも、野菜や肉を揚げたり焼いたり、煮たりして作る料理はよくある。
だから、ナイジェリア人もこの食べ物に親しみを感じ、スパイスを使った辛い味付けも口にも合った。

バングラデシュとナイジェリアでは、バナナやマンゴーなどのフルーツをよく食べることも共通している。
大きな違いは「虫」だ。
ナイジェリア人など西アフリカの人たちは、炒めたイモ虫を食べることがあるらしい。
「スナックみたいでわりとウマい」と笑顔で言うナイジェリア人と、「…それはない」とドン引きしたバングラデシュ人の表情は対象的だった。

くわしい情報は「Nigerian cuisine」で。

 

ここまで書いてきたナイジェリアの食材や調理法は、ほかの西アフリカの国にも通じる。
日本の食文化と比べると、彼にとって最も大きな違いは「生食」だ。
バングラデシュ人も同意して、肉を加熱することは最低限のルールだと言う。
しかし、寿司や刺し身、海鮮丼のある日本は、そんなアフリカや南アジアの常識をぶっ壊している。
だから、このナイジェリア人からすると、生肉という発想や調理法はアフリカの食文化とは銀河系レベルで離れている。

彼は一度だけ、生肉と“接した”ことがある。
日本人に居酒屋へ連れて行かれたとき、誰かが刺し身を注文した。
そして、

日本人「刺し身って食べたことある?」
ナイジェリア人「ないない。それは気持ち悪いよ」
日「そうか。でも、日本にいるなら食べろよ」
ナ「いや〜、それはノーサンキュー、オレには無理だよ〜」

といったやり取りがあった後、彼は決意した。
生魚には宗教的な問題はないし、日本の食文化を試してみたい気持ちも0.03グラムほどあったから、「刺し身チャレンジ」をすることにした。
その結果、「食わず嫌い」という言葉があるように、食べてみたら予想以上においしく、彼はなんと刺し身を好きになってしまった!
…みたいな展開は起こらなかったらしい。
彼はそのとき刺し身を一切れ取って口に入れ、「swallowした」と言う。
スワロー?
ボクとバングラデシュ人がそのワードに引っかかった。

 

この場合の「スワロー」はツバメ(燕)ではなくて、飲み込むという意味。
ちなみに、この2つには関連がある。
ツバメの子どもが親鳥からエサをもらうとき、口を大きく開けて一気に飲みこむ様子から、動詞の「飲み込む」の意味ができたらしい。
日本語でも、飲み込むことを「嚥下」と「燕」の字を使う。

刺し身を口に入れると、ヌメっ、ヌルっとした触感が想像を絶するほど気持ち悪かった。
だから、彼はそれを噛むことができず、一気に飲み込んだ。(たしかに嚥下だ。)
これ下回る食べ物と出会ったことはないから、このナイジェリア人にとっては、刺し身が「キング of ゲテモノ」の座に君臨している。
バングラデシュ人にとっても、生魚は「ゲテモノ」のジャンルにあった。
それでも、初めて口にしたときでも噛むことはできたし、いまでは慣れて、刺し身はハードルが高いが、寿司なら食べることができると言う。

 

そんな話を聞いたから、「つまり、君に寿司を食べろって言うのは、人権侵害みたいなものだね」とナイジェリア人に言うと、ジョークのつもりだったのに、「そうだ! それは拷問だよ!」とマジレスされた。
居酒屋での異文化体験がトラウマになってしまったから、次は誰にどう言われても、彼は生魚だけは絶対に拒否するつもりらしい。
ボクの中では「炒めたイモ虫」というのは、ゲテモノ界のキングまではいかなくても、少なくとも幹部クラスにはいる。
でも、彼は「刺し身の方が気持ち悪いに決まってんだろ」と一蹴する。
そう言えば、東アフリカから来たタンザニア人も、寿司や刺し身はどうしてもダメだと話していた。
この気持ちは宗教や民族、地域を超えて、きっとアフリカ人に広く共通している。
食の文化が変われば、ご褒美が罰ゲームや人権侵害に変わることもあるのだ。

 

日本人のボクの感覚では、イモムシのフライは、再生ボタンをクリックするだけでも勇気が必要になる。
これだと噛むことができず、一気に飲み込むかもしれない。

 

 

アフリカ 「目次」 ①

アフリカ 「目次」 ②

外国人に好評の日本のサービス、アフリカ人はどう思った?

アフリカ人と日本人の宗教観 神社で「恐怖」を感じたわけ

アフリカから貧困がなくない理由 「国に貧しさが必要だから」

アフリカ人と黒魔術(呪術)①魔法の薬や水で”無敵”になれる!ってねーよ

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。