アフリカ人と日本人の宗教観 神社で「恐怖」を感じたわけ

 

木、石、土などを使って、人や動物なんかの姿を作るのが「偶像」で日本はそれにあふれてる。
スマホやバッグに付けるアクセサリーのようなかわいい物から、仏像や神像のような信仰の対象まで日本にはいろいろな偶像がある。
ちなみに「idol」(偶像、 崇拝される人・物)が元ネタになって、アイドルという日本語が生まれたから、やっぱりこの国は偶像に満ちている。

いまではお寺に当たり前のようにもある仏像も、仏教の初期のころはそんなモノはなかった。
あまりに偉大なブッダの姿を人間が表すことはもはや不可能だ、なんて古代インドでは考えられていて、仏像が作られることはなかったのだ。
でも、西からアレキサンダー大王がやって来てギリシャ文化をインドもたらすと、その影響でブッダの像を作って崇拝する文化が生まれたという。

戦国時代にキリスト教徒になった日本人が仏像やお寺を壊したとか、明治時代の「廃仏毀釈」のときに仏像が破壊されたといった超例外を除けば、日本では偶像崇拝を禁止する考え方や政府の命令はなかったから、いろんな像を作ることは昔から行われてきた。
でもいまの日本では、男女のゆるキャラにそれぞれ隊長と副隊長を任免すると、「ジェンダー平等」の観点からたたかれることはある。

【女の敵は女】近ごろ日本であった、“ジェンダー平等”の問題

日本とは文化も歴史もまったく違うアフリカでは、これとはまったく違った問題というか見方があるらしい。

 

浜松にあるこの五社神社には、商売繫盛のありがたい神さまがいらっしゃる。
日本全国どこにでもあるような神社だから、日本人にこの写真を見せたら、「へ~。で?」と何かオチを期待すると思われる。
でも、あるアフリカ人はこれを見て「恐怖」を感じた。
その理由が分かったあなたには、アフリカ人としてのセンスあり。しらんけど。

 

 

東アフリカのタンザニア出身の男性がこの神社に行って、SNSに上の写真をアップしたところ、母国にいる友人からこんなスワヒリ語のメッセージが寄せられた。

「Waoh,unanitisha ndg yangu,..nchi gan hiyo😃」

「おおっ、わたしを怖がらせるのはやめてください」といった意味らしい。

日本人なら幼稚園児でも素通りするようなこの神社の一体どこに、アフリカ人を恐怖させるポイントがあるのか。
タンザニア人に聞いたら、それは偶像だった。
アフリカ人の視力でもこま犬の表情までは見えないから、それに「コワっ」と思ったわけじゃない。
このメッセージを書いた人は熱心なキリスト教徒だから、偶像崇拝は絶対的なタブー。
彼は神社やこま犬なんて1ミリも知らないけど、ここが宗教施設であることは分かって、この像が崇拝の対象になっていると感じた。
そんな偶像をSNSでいきなり見せられたから、彼は「やめてください」と書き込んだという。

もちろんタンザニアにもマリア像などを置く教会はあるし、偶像をタブー視しないキリスト教徒もいる。
信心深い人の中にはできるだけ偶像を見ないように、それを避けて行動する人もいるから、篤い信者の友人がこま犬を嫌がって怖がる気持ちは、同じキリスト教徒として彼にも分かる。
「別に怖がらせるつもりはなかったんだけどねー。でもそう思う人もいる」と言って笑っていたから、大したことではなさそう。

 

聖職者っぽい人の絵(セネガル)

 

アフリカには、宗教(や迷信)を深く信じている人がけっこう多い。
ザンジバル島出身の別のタンザニア人がヨーロッパに住んでいた時、ここではキリスト教があまり信仰されてないこと、社会での影響力や存在感も薄いことが印象的だったという。
(このタンザニア人はイスラム教徒だから偶像崇拝はタブー)
ドイツ人・リトアニア人・アメリカ人にその話をすると、「いまはキリスト教を信じない人が本当に多い。特に若い人で。社会は脱宗教に向かっているから、アフリカのほうが熱心な信者は多いだろうね。」とみんな言う。
タンザニア人からケニヤやウガンダも同じと聞いたから、欧米よりも東アフリカの方が宗教心の強い人の割合はきっと多い。

*外務省のホームページによると、タンザニアの宗教はイスラム教(約40%)、キリスト教(約40%)、土着宗教(約20%)。

スマホで突然、神社のこま犬が出てきたのを見て、「わたしを怖がらせるのはやめてください」というのが一般的な反応かは分からないけど、そう思うアフリカ人はいる。
このへんの感覚は、「偶像崇拝がダメ?なんで?」という宗教観の日本人には分かりづらい。

 

 

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2 件のコメント

  • 偶像崇拝がダメと言う時、分からないのは「崇拝していなくてもダメなのか?」という点です。
    おそらくどのような宗教的崇拝の対象であっても、それを崇拝していない人々に対しては何ら影響しないと思うのですが。日本人が、日本で狛犬に対して手を合わせたら(合わせませんけど)、海の向こうのアフリカ人が恐怖を覚える? 写真を見るだけでもダメ? なんじゃそりゃ?
    また、崇拝とは全然関係ない偶像もだめなんでしょうか? 例えば大阪千里公園の太陽の塔とか?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。