友人のイギリス人が韓流ドラマを見ていて、日本と韓国はよく似ているなと実感した。
韓国の俳優が「ヤクソク」と言ったように聞こえたから、「アレ?」と思って字幕を見てみたら、やっぱり「promise」と書いてあった。
日韓は言葉だけではなく、食文化でも共通点があって、どっちもお米をたくさん食べるし、お箸も使う。
それで、同じ議論が巻き起こることもある。
最近、韓国のネット上で、「家庭で子どもに正しい箸の使い方を身につけさせるべきか?」というテーマが多くの関心を集めた。
朝鮮日報(2024.02.29)
“젓가락질 왜 안가르치나”…예절 논란에 조선시대 X자 젓가락질 눈길
韓国でAさんが、知り合いの11歳の子どもをあずかって、食事に連れて行くと、驚きの光景を目撃した。
レストランで、その子は箸を握るようにして持ち、ポロポロと食べ物をこぼしているのを見て、Aさんはア然とする。
その子の箸の持ち方はあまりにひどく、食べ物はなかなかつまめないし、服は汚れてしまう。ほかの客も見かねて、正しい箸の使い方について“指導”するほど。
その後、その子の両親が店にやってきて合流したけど、子どもの箸の持ち方について何も言わなかった。
Aさんはどうしてもこれが気になって、ネットで
「親が子どもに箸の持ち方を教えない理由は何だろう。子どもが成長すれば、自然にうまくなると思っているだろうのか?」
と疑問を投げかけた。
それに対して、ネット民からは、「子どもが小さいうちに家庭で、正しい箸の持ち方を教えることは必要」と共感する人がいる一方、「食べ物を落とさなかったらいい」「『正しい持ち方』の基準は人それぞれ違う」といった反論が寄せられた。
韓国では、「正しい箸の使い方」をめぐる議論は昔からある。
デートの最中、相手の箸の使い方がヘタで気になったとか、持ち方が悪いせいで破談になったという投稿は珍しくないという。
ある食品メーカーは採用試験の面接で、正しい箸の使い方ができるかどうかの審査をおこい、「不適切だ」と批判を受けた。
実際のところ、「正しい箸の使い方」はハッキリしていないらしい。
朝鮮王朝時代の礼儀作法についての記録(三所節)にも、箸の使い方についての記述はない。
19世紀の絵では、両班(ヤンバン、貴族)が箸を「×」の形に、日本で言う「クロス箸」で持っているのが確認できるという。
日本でも、こんな議論はよくある。
誰かがネットに、「箸を正しく使えないのは見苦しい」「“親ガチャ”に失敗した子どもががかわいそう」といった投稿をすると、「“正しい持ち方”の定義とは?」「その“正しさ”をどこまで求めるべき? 飛んでるハエを捕まえたら一人前?」といった反論が出て、議論が盛り上がる。
そんな場面は何度も見た。
国内でも意見が分かれるのだから、外国人が相手だとそれはなおさら。
日本人に文化の違いをツッコまれて、イラッとした韓国人もいる。
知人の韓国人女性はいま 30代で、以前ワーキングホリデーで日本へやってきて、一年ほど東京に住んでいた。
そのころ彼女と会って、日本で感じたカルチャーギャップについて聞くと、その一つに「食事のマナー」があった。
日本人と日韓の文化の違いについて話すことはよくあって、それはまったく問題ない。が、そこに自分を基準として、「上下優劣」を持ち込まれると、彼女としてはイラッとくる。
たとえば、お箸の違い。
韓国の箸はステンレス製で、それを使っておかずを食べて、ご飯(米)はスプーンですくって食べる。
それを聞いて、「へ〜、日本と違うね。なんでステンレス製なの?」と純粋な好奇心で聞く日本人はいい。
でも、たまに「ご飯は箸で食べるもの。異論は認めない」みたいな人がいる。悪意はないのだろうけど、「スプーンで食べるなんて、なんか子どもっぽいね」と言われると、彼女としてはムカつく。
「レストランでステンレス箸の使いまわすのはヤダなー。やっぱり木の割り箸がいいよ」と言われたこともある。
その後、一緒にいた日本人から、「あの時、あなた怒ってたよね? 顔が怖かったもん」と指摘され、日本人の洞察力の深さに驚いた。
(というか、韓国人は分かりやすい。)
箸の使い方についても、日本人から何度か「ご指導」を受けた。
彼女の合格基準は「食べ物をこぼさなければいい」といったレベルで、自分の箸の持ち方が悪いことは知ってる。
小学生のころ、箸で豆をつまんで、別のお皿に移す課題をした。
彼女としては、意味のない活動に時間を使っているとしか思えなかったから、そこはテキトーにやって、ほかの授業にエネルギーを使うことにした。
だから、箸の使い方は下手なまま。
でも、大学生になってから、その課題がうまかった級友よりも、自分の方が良い大学へ行ったことを知り、「勝った! 自分の考え方は正しかった」と確信したらしい。
韓国の「食のマナー」からすると、茶碗を持ち上げて食べるの仕方はマナー違反。
でも、日本ではそれが正しいやり方とされているから、彼女は文句は言わないし、韓国より「レベルが低い」とも思わない。
ただ、そんな食べ方をすると、肉体労働者みたいに見えるから、自分は絶対にしないと言う。
インドやバングラデシュでは手づかみで食べる文化があって、彼らに聞くと、そのほうが食事をおいしく感じられる。
外国人に文化の違いを質問するのはイイコトだ。
でも、自分が基準になっていることに気づかず、「上から目線」になっていないかは気をつけた方がいい。
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