「日本の警察は人種差別的な対応をしている!」
ことし1月、外国出身の3人がそう主張して、国・東京都・愛知県の三者を裁判に訴えた。
彼らが怒ったのは警察官による職務質問だ。
肌の色などから、「外国人っぽく見える」という理由で職質をすることは、人種差別で違法行為であると彼らは言う。
原告のAさんはパキスタンで生まれ、8歳で来日し、現在は日本国籍を取得している。これまで15回ほどの職務質問を受けた。
Bさんはアフリカ系アメリカ人(つまり黒人)で、日本で約10年間暮らしていて、いまは永住者の在留資格を持っている。以前、バイクに乗っていると、交通違反をしていないにもかかわらず、警察官に停められて質問をされるなど、これまでに16、17回ほど職質を受けた。
南太平洋諸島の国で生まれたCさんも、1日に2回も職務質問を受けたこともあり、これまでに少なくとも70回以上もそれを経験した。車を運転していて職質された時には、その理由について警察官から「外国人の方が運転するのは珍しいから」と言われた。
もちろん、これは原告側の主張で、内容が100%真実かどうかは分からない。
とにかく、3人は差別的な職務質問を受けたという理由で国や東京などに対し、一人当たり330万円の支払いを求める訴えを起こした。
この動きに日本のネットユーザーの感想は?
・純日本人だけど職質20回くらいうけたぞ
道の駅で車中泊したり、壊された自販機のが近くにいたりとか
・春になると新人研修らしき職質よくやってるよな
・はっきり言って日本の職質の対応は甘いほうだぞ
・警職法の要件も満たさずに職質するのは違法
・ただそうやって未然に犯罪防止するのも仕事だからある程度は仕方ない
アヤシイ人物に「ちょっと、いいですか〜?」と声をかけて質問し、安全を確認することは警察の重要な仕事で、日本の治安を守るうえでも有効だ。
ただ、それをするには明らかに挙動不審であるなど、犯罪を疑う合理的な理由が必要になる。
だから、人種や肌の色、言語、宗教といったことを理由に、警官が職務質問をするのは人種差別行為になり、アメリカでは「レイシャルプロファイリング」と呼ばれ、問題視されている。
3人の原告も、日本の警察は外国人を“狙い撃ち”にしているから、これはレイシャル・プロファイリングに当たり、憲法違反だと訴えているのだろう。
たしかに、「外国人っぽい」という理由で、警官が職務質問をすれば差別行為になるし、外国人であることを理由に職質がスルーされ、日本人だけが対象になればそれも差別だ。
日本の警察がしたことが違法かどうか判断するには、裁判の結果が出るまで待つしかない。
では、それまでに、アメリカ人の意見を聞いてみよう。
日本に住んでいた知人のインド人がこれを見て、「the best Police station signage in the world」と激しく感動した。
日本に3年間住んでいたアメリカ人(20代の女性)に、日本の警察の職務質問について聞いてみた。
ーー〜ということで、日本が訴えられたわけよ。
レイシャル・プロファイリングか〜。
アメリカでも、警察の職務質問が特定の人種の人たちに集中しているって、よく問題になる。
ーー「アメリカあるある」だと。
「あるある」だねー。
ただ、日本と違うのは、アメリカでは一般人が銃を持っていることが許されているから、警察官が撃たれてケガをしたり、死んだりすることが多いという点。
だから、アメリカの警官は職務質問で乱暴な言葉を使ったり、相手に銃を向けることもある。
職務質問に怒って抗議するのは黒人に多くて、アジア系やヒスパニック系はあまり反発しない。
*ちなみに、このアメリカ人はベトナム系。
それに、白人が警察官に乱暴なことをされても、それはあまり問題にされない。
ーーなるほど。
レイシャル・プロファイリングで警察を非難する態度も、人種によって差があると。
傾向としてね。
職務質問そのものは差別じゃないし、それは警察官の大切な仕事。
重要なポイントは、外国人が日本人に比べて、職質を受ける頻度が明らかに多いと証明することだよね。裁判所が認めるほどの客観的なデータがあるかどうか。
ところで、なんで日本では政府が訴えられたの?
ーーえ? アメリカは違うの?
なるほど。国じゃなくて、職質を行った警察官が訴えられると。
それはそうでしょ。
だって、それは警察官個人の言動の問題じゃないの?
だから、アメリカの警察では訴えられることを想定して、職務質問で乱暴な言動が無かったことを証明するために、警官がボディカム(ボディカメラ)を着けるようになった。
日本ではそうしないの?
ーーさあ?
日本の警官がボディカムを装着しているという話は聞いたことないな。
そうなんだ。
ま、日本には日本のやり方があるんでしょ。
後日談
後で調べてみたら、日本でも今年から、警察官がボディカムを着けての勤務が試験的に行なわれるらしい。
ただ、これには一部から、市民の権利を守ることにつながらないといった批判が出ている。
「自分の言動が記録されている」という前提で警察官が職務質問をした方が、全体的にはメリットが大きいと思うのだけど。
結局、警察は何をしても、必ずどこかから叩かれるということか。
外国人に聞く日本の警察②人種差別的?いや、アメリカの方が・・
若かった頃(90年代)、アメリカ南西部でレンタカーを運転していて、ハイウェイ・パトロールの職質に引っ掛かったことがあります。たまたまパスポートとビザをホテルへ置いて来てしまっていて、不法移民かと疑われ、とても厳しい追及を受けました。
「素手を前に出せ!車から降りろ!」と言われ、パトカーから出てきたのは、クリント・イーストウッドみたいに鋭い目つきのガンマン風と、スタン・ハンセンみたいな巨漢の2人組でした。当時はまだ携帯電話も一般的ではなかったし。「頼むからビジネス相手のマネジャーに連絡して俺のことを聞いてくれ」と、しどろもどろのつたない英語で平謝りに謝って、ようやく勘弁してもらいました。あんな怖い思いをしたことは人生で2度とありません。
外国で現地警察の職質のやり方に抗議の声を上げるなんて、臆病な日本人である私なんかには、とてもできそうにないです。
銃社会のアメリカでは日本とは前提が違いますね。
警察官も「おまわりさん」みたいにやさしくないし、市民に銃を向けることも多い。
日本みたいに警察官に抗議することもむずかしいでよう。