『結束バンド』のような地下アイドルにとって、いつかは立ちたいと願う夢の舞台が武道館。
推しがそこへいったら、死んでも構わないというファンもいるほど。
世界中の音楽家にとって、そんな憧れの場所がニューヨークにある「音楽の殿堂」と呼ばれるカーネギーホールだ。
1891年の5月5日、チャイコフスキーの指揮によるコンサートが行われ、その歴史がはじまった。
この建物の名前はアメリカの伝説的な実業家で、「鉄鋼王」と称されたアンドリュー・カーネギー(1835年 – 1919年)に由来する。
カーネギーホールでパフォーマンスを披露したミュージシャンには、ドヴォルザーク、マーラー、ベニー・グッドマン、ビートルズなどレジェンド級の人たちがいる。
日本人としては1963年に、アイ・ジョージ(石松 譲冶)さんが初めてメインホールの舞台に立った。
この音楽の殿堂には、その存在感にふさわしいジョークというか都市伝説がいくつかある。
20世紀を代表するヴァイオリニストに、リトアニア出身のハイフェッツがいる。
世界的なヴァイオリニスト、クライスラーがカーネギーホールで彼の演奏を聴いた時、その途方もない才能に圧倒され、周囲の人にこう言った。
「私も君も、これ(ヴァイオリン)を叩き割ってしまった方がよさそうだ」
また、クライスラーは「私の究極の到達点をスタートラインにして記録を伸ばした天才」とハイフェッツを絶賛している。
ある時、ハイフェッツが歩いていると、ニューヨークに来た観光客に声をかけられ、
「How do I get to Carnegie Hall?」
(カーネギーホールにはどう行けばいいのですか?)
と道を聞かれた。
すると、彼はこう言ったという。
「Practice, practice, and practice.」
(練習、練習、そして練習だ)
武道館で頭がいっぱいの地下アイドルも同じ返事をするかも。
英語版ウィキペディアの「Carnegie Hall」には、クライスラーのエピソードも紹介されている。
カーネギーホールで彼がピアニストのラフマニノフと演奏をしていると、(緊張していたのか)クライスラーは自分のパートを忘れてしまい、即興で演奏をはじめた。
混乱した彼は「私は今どこにいるんだ?(どこを演奏しているんだ?)」と聞くと、ラフマニノフはこう答えたという。
「カーネギーホールだ(In Carnegie Hall)」
『ぼっち・ざ・ろっく!』にもありそうな展開。
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