きのう12月20日は「デパート開業の日」。
1904(明治37)年のこの日、三井呉服店が東京に「三越」を開店させたことが、日本のデパートの始まりとなったとさ。
デパートというと1階は化粧品売り場になっているのがお約束。
で、それにはそれなりのワケがある。
学校の参観会で分かると思うが、化粧の匂いはけっこう強烈だ。
それで上の階に化粧品が大量に置いてあると、その匂いが下に広がってしまうから、それを避けるために化粧品売り場は1階に設定されているのだ。
海外のデパートも同じだったから、この構造は世界的に共通しているのでは。
でも国によって、デパートにも個性や文化は出てくる。
えっと、なにを?
むかしデパートでバイトをしていたとき、館内には関係者だけがわかる秘密のサインがあることを知った。
外で雨が降ると、中にいる従業員へ知らせるために「サインミュージック」が流れるのだ。
大丸東京店や松坂屋上野店なんかは『雨にぬれても』、大丸神戸店や西武などは『雨に唄えば』を流すことで、館内の関係者に「外は雨だぜ」と伝えるらしい。
すると従業員はその合図で、紙袋の上にかけるビニールを用意する、傘を入れる袋や足ふきマットを入り口に置く、お買い得品の傘を売り場に出すといったことを始める。
放送で「雨が降り始めました。従業員のみなさんは準備してください。」なんて言うのはヤボだから、音楽を流すことによって、客に気づかれないように雨を知らせるシステムができている。
これもデパートのおもてなしの一つだ。
ということで、これからデパートの中で雨に関する音楽が流れたら、従業員の動きに注目してみよう。
雨がやんだら、『虹の彼方に』や『ヒア・カムズ・ザ・サン』などを流して店員に伝えるという。
日本のデパートには秘密の音楽があれば「隠語」もある。
ネットを見ると、デパートによってはトイレのことを「遠方」や「紫」と言い、昼食を「のじ」「サンサン」「じんきゅう」「けし」と言う。
さらに、天敵である万引犯を「川中さん」と表現するデパートもある。
「買わなかった客」→「かわなか」→「かわなかさん」の3段階変化でこの隠語が誕生したという。
だからもし店員同士の会話で「川中さんがお見えです」と言うのが聞こえたら、「万引犯が出た!」という連絡をしているのかもしれない。
そして「川中さん」の行動を監視して、建物の外に出る前に「精算をお忘れになっている商品はございませんか?」とやさしく声をかけて万引を防ぐという。
こういうサインミュージックや隠語は日本の文化では?
まえにアメリカ人と話をしていたときに、雨を伝える「サインミュージック」について聞いてみたところ、そんな音楽は初耳だとか。
そのアメリカ人の感覚だと、言葉で伝えないで客に「気づかせる」ようなやり方は失礼。
まぁ誰が知るかと。
でもその代わり(でもないんだが)、アメリカではコードアダムがあると言う。
1981年にフロリダ州の百貨店で、6歳のアダム君が行方不明になる。
母親と祖母、それと店の従業員が捜しても見つからない。
それから約2週間後、切断されたアダム君の頭部だけが排水路で発見された。
この誘拐殺人事件が全米に大きな衝撃を与えたことはいうまでもなく、その後、「コードアダム」ができた。
デパートなどで子どもが行方不明になると「コードアダム」が発令されて、館内放送か何らかの手段で建物内の従業員がそれを知り、すぐにドアを閉めて客を外に出さないようにしてから子どもを徹底的に捜す。
場所によってやり方は違うのだろうけど、アメリカのデパートや病院、遊園地、博物館などがこのコードアダムを採用している。
Today, many department stores, retail shops, shopping malls, supermarkets, amusement parks, hospitals, and museums participate in the Code Adam program.
日本のデパートやショッピングモールでも、こんな緊急プログラムはあるんだろうか?
日本では、数百人の客を建物に閉じ込めることはできない気がする。
外で雨が降り始めると、従業員だけに伝えるサインミュージックの話をしたら、まさかこんな話が出てくるとは。
でも、それぞれ日本とアメリカ社会の一面を表している。
バンコクのショッピングモール「ターミナル21」にある、日本をイメージしたフロア。
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