世界のトイレ文化:ドイツ人、日本で理解を超えたものと遭遇

 

世界中の人たちは、食べた後に出す。
それは全人類に共通しているけれど、西洋と東洋の文化の大きな違いの一つがトイレ、正確に言うとその際のスタイルだ。
それで、世界中の人々が行き来する21世紀には、こんな困ったコトが起こりやすい。

朝鮮日報の記事(2023/04/30)

当然のことじゃなかったの? 仁川国際空港のトイレに案内文「座ってご利用ください」

韓国の空の入口で、世界中の人たちが利用する仁川(インチョン)空港のトイレに、「便座に座ってご利用ください」という案内文が貼られていたから、韓国で「当然じゃね? こんな注意書きはいる?」と疑問に感じる人が続出している模様。
ボクも日本の空港のトイレで同じような文を見て、「便座を見たら、“座る”の一択だろ。逆立ちする民族がいるとでも?」と不思議に思ったことがある。

でも、海外には、欧米をはじめ日本や韓国などで共通している「トイレの常識」が通じない文化圏もあるから、洋式トイレが間違って使われる事例が発生している。
たとえば、両足でしっかり床を踏みしめて、しゃがんだ姿勢で“する”地域から来た人たちの中には、靴を履いたまま便座の上でしゃがんで排泄行為をするケースもある。
こんな使い方をすると、便器カバーが壊れることもあって、仁川空港では「トイレ掃除を受け持つ業者からは悲鳴の声が上がっている」という状態。

 

 

西洋式に座るのではなく、しゃがんで排せつすることは中国や東南アジアやインド、中東ではよくあって、日本でも和式トイレはそういう構造になっている。
だから、日本人は平気でも、西洋人には苦痛に感じる人もいる。
タイで出会ったイギリス人は、「しゃがむ姿勢にまったく慣れていなから、すごく疲れる。急いで駆け込んで、便座のあるトイレが無かった時のツラさと言ったら、君には想像できないだろうね」と笑ってグチをこぼしていた。
たしかに、その絶望感は日本人には分かりにくい。

 

排せつする姿勢を比べると、便座に座るよりも、しゃがんでする方が、無理に力を入れる必要が少なく、スムーズに便が排出されやすいから体には良い。
いつも腹部に力を入れて排便していると、便が固くなったり、便秘になりやすくなったりする。
西洋で座って排せつするスタイルが定着したのは、100年ほど前のことで、ヨーロッパで便座型のトイレは19世紀になってから普及した。(Defecation postures
人類的には、しゃがんでする方が自然だったらしい。

英語版ウィキペディアの説明を見ると、そんな姿勢で排せつするようにデザインされている「スクワット・トイレ」は、世界各地で一般的にあるという。(Squatting position

「Squat toilets are designed to facilitate this posture and are common in various parts of the world.」

きっと現在でも世界的には、しゃがんでするスタイルの方が多い。

 

知人のドイツ人が留学生として来日し、日本での生活をスタートしたころ、戸惑ったのが大学にあった和式トイレだった。
これは便器なんだろうけど、どう見ても使い方が想像できない。
それで、彼は研究室にいた日本人の友人に「不思議なものを見つけたんだ」と言って、使用方法を聞いてもらってやっと理解できた。
彼が体験した強烈なカルチャーショックの1つがコレ。
その日本人にとっても、ドイツ人にトイレの使い方を説明するというのはかなりのレア体験で、カルチャーショックだったと思われる。
ただ、最近の日本では生活が西洋化していて、和式トイレの使い方が分からない小学生もいる。そういう子どもが初めて見たら、彼と同じようなショックを受けるかもしれない。

ドイツではこの逆パターンがあるらしい。
中東から来た難民が初めて洋式トイレを見て、使い方が分からないから、独創的な排せつの仕方をして清掃員を困らせることがある。
彼はずっと、「便座を見たら、“座ってする”って分かるだろ」と不思議に思っていたが、日本に来て東洋の文化に触れ、やっとそんな人たちの気持ちが理解できたという。

 

 

ヨーロッパ 「目次」

【日本人の発想】日本最古と、外国人が絶句した最高のトイレ

日本と古代ローマのトイレ文化。紙のない時代、お尻の友は?

日中のトイレの違い「日本人の良さを中国人も見習うべきです

旅㉝飛行機に乗れば分かる!「文化」と「文明」の違いとは?

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。