【日本人の発想】日本最古と、外国人が絶句した最高のトイレ

 

厠(かわや)、雪隠(せっちん)、憚(はばかり)、後架(こうか)、御不浄(ごふじょう)、閑所(かんじょ)…

これはぜーんぶ、トイレを表す日本語。
で、禅のお寺ではトイレを「東司」(とうす)という。
日本最古のトイレは京都・東福寺にある東司で、室町時代前期に建てられた。
ここは100人以上の僧が一度に排泄できる巨大トイレで、「百雪隠」と呼ばれている。
この日本最古のトイレに最近、ドライバーがアクセルとブレーキを踏み間違えて、乗用車が突っ込んで木製の扉や柱がぶっ壊れた。
いくら急いでいたとしても、この入り方はダイナミック過ぎる。

これにあきれるネット民。

・汚物は破壊だー!
・もう壊れちゃったんだし、日本最古のトイレに突っ込んだ車としてこのまま展示したらいいよ
・う~んこの野郎!
・近年の復元かと思ってたら本物だったんかい
・水に流すか

国の重要文化財に指定されているこの東司を破壊したのは、古文化保存協会の職員だったというオチ。
これはチョット水に流せない。

 

 

日本最古のトイレがこの東司なら、日本最高のトイレは愛知の刈谷サービスエリアにあるデラックストイレでしょ。
ネットで探しても、誰でも利用できる公共のトイレでこれを上回るものは見つからない。
ただこれは女性トイレで、男性はそんなでもない。

 

 

さて最近、トルコ、インド、モンゴル人の女性とブラジル、タンザニア人の男性を連れて京都旅行へ行ってきたのですよ。
静岡から高速道路を使って行くと途中で刈谷SAを通るし、このデラックストイレをスルーしたら、彼らが日本に来た意味が半減してしまう。
ということでハンドルを左に回す。
SAの駐車場に止めて、「ここの目玉はトイレだ。できるだけ早く京都へ着きたいから、15分後にはここにいるように」と一同に伝えてトイレへGO。

戻ってきた女衆に感想を聞くと、「スゴイ!」「信じられない!」とのこと。
彼女らは最初は、トイレに見るためだけに、サービスエリアに寄るというボクの提案がまったく理解できなかった。
どんなにデラックスでも、その時間は京都観光にまわすべきと思ったけど、中へ入ったら一瞬で分かった。
すごくキレイなだけのトイレを思い描いていたら、内部は美術館のようなオシャレでデザインで、洗練された上質な空間に思わず絶句。
それにボタンが浮かび上がるホログラム(空中浮遊リモコン)を初めて体験したし、映画の世界のようで面白かった。

とにかく、あらゆる意味で想像を超えていたというのが外国人の感想で、あれなら、「トイレ体験」のためにSAへ寄ることもアリだと言う。
でも、一度で十分。

ノーベル賞受賞者の数は世界7位で、欧米の国を除けばトップ。2001年以降を見ると、自然科学分野の受賞者数はアメリカに次いで世界2位。
そんな日本の先進技術の一端に触れて、彼らは驚きを隠せないらしい。

 

いまの日本は「SA戦国時代」にある。
できるだけ多くの人を呼び込むために、各地のサービスエリアが個性やアイディアを出して差別化を図っている。
それで刈谷SAはトイレで勝負に出た。
高速道路を移動中の人たちに、「そういや、あそこにはすごいトイレがあるんだっけ」と思わせて招き入れる。
だからこのデラックストイレは、美しい歌声で航行中の人を魅了する西洋の セイレーンみたいなもの。
そしてトイレに寄った後で、名物の「えびせん」や各種商品を買ってもらう。
特に観光バスに利用してもらうと効果は絶大だと、関係者がテレビ番組で言っていた。
日本のSAでは最高のトイレを用意して、それが呼び水になって利益が広がっていき、刈谷SAは全国的にも大成功を収めた。知名度が上がると、さらなる集客につながっていく。
どんなに良い商品があっても、人が来てくれないと何も始まらないから、足を運ばせる“ナニカ”がとても重要になる。

そんな説明を聞いた外国人たちは、刈谷SAに観覧車がある理由も理解できた。
「差別化のために、店がいろんな工夫をするのは世界中である。でも集客のために、トイレをアピールするのはとても日本人らしいユニークな発想だと思う」と納得する彼ら。
たしかに5つ星ホテルを超えるような公衆トイレがあるのは、世界でも日本のここだけでは?

 

 

ヨーロッパ 「目次」

日本と古代ローマのトイレ文化。紙のない時代、お尻の友は?

日中のトイレの違い「日本人の良さを中国人も見習うべきです」

メソポタミア文明の特徴とは?「60進法や7日=1週間」は今でも使うね。

満州の旅⑧中国の「ニーハオ(你好)トイレ」入門編 ~知る~

旅㉝飛行機に乗れば分かる!「文化」と「文明」の違いとは?

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。