30代前半のイギリス人女性と、40代のアメリカ人男性とガストでご飯を食べてきた。
その時、アメリカ人から、日本がだんだんと残念になっていくという話を聞いたんで、今回はそれを中心に書いていこう。
ーーSNSを見てたら、君たちが姫路城で撮った写真が出てきた。
あのお城はどうだった?
イギリス人「白くてキレイで大きくて、とっても良かった!」
アメリカ人「オレは以前の姫路城を知っているから、白すぎて違和感を感じたね。」
ーーおもしろい。それは、知り合いの日本人カップルと同じ反応だ。
姫路城は大修理が行われて、真っ白に生まれ変わったんだ。
友人は「驚きの白さ」を見て、「お城が漂白されてる。コレジャナイ…」とガッカリしたけど、妻の方は「超きれい!」と喜んだらしい。
この辺は日本人の間でも好みが分かれる。
あの城の別名は「白鷺(しらさぎ)城」だけど、「白すぎ城」なんて呼ぶ人もいる。
米「そうなんだ。風格が無くなって、ディズニーの城に近づいた感じだ。」
ーーでも、また自然と黒ずんで元の姫路城になるから。
米「静岡から姫路城は遠くて、なかなか行けないんだよ。」
ーーしらねえよ。
英「ところで、日本でいちばん大きな城はどこ?」
ーーああ、日本で最大の城ね。…どこだろ?
(カチャカチャ)ネットでランキングを調べると、天守の高さなら1が位大阪城(41.5m)、2位が名古屋城(36.1m)、3位が島原城(33.0m)となっている。
でも、これらは戦後に建て直された城で、江戸時代から残っている城(天守)は全国に12基あって、その中でいちばん高いのは姫路城らしい。
米「それでわかった! オレは名古屋城と大阪城に行ったことがあるけど、姫路城は内部がともて良かったんだ。城の中に刀や鉄砲、やりを掛けておくところ(武具掛け)があったし、城に侵入した敵兵に奇襲攻撃をするために、兵が隠れているスペース(武者隠し)もあった。城の歴史や緊張感が感じられてすごく興味深かったけど、名古屋城と大阪城にはそれがなかった。外見は良いんだが、内部は博物館みたいになっていたから、あまりそそられない。」
ーーたしかにそうだね。
(でも、それは米軍が爆撃したからじゃ…)
で、イギリスでいちばん大きな城ってどこ?
英「それはウィンザー城でしょ。でも待って、いまネットで調べてみるから。あ、やっぱり私は優秀だ。人が住んでいる城ならウィンザー城は世界最大で、ヨーロッパでもっとも長い歴史があるんだって。」
ーーウィンザー城はイギリスの国王が住んでいる“現役”の城か。
日本にそんな城はもう無いかな。
英「 おしい。国王が住んでいるのはバッキンガム宮殿で、ウィンザー城は週末を過ごすところ。夏になると、スコットランドのバウモロゥ(Balmoral)城に移動する。」
ーーなにそれ、Balmoralって初めて聞いた。
日本語だと「バルモラル」になるらしい。
英「え? バ・ル・モ・ラ・ル。この発音はなかなか難しい。」
米「英語がカタカナになると、ナゾ単語になるのは昔から同じだ。それよりさ、観光地がどんどん変わっていくのが、オレとしてはすごく残念なんだ。」
ーーというと?
米「20年以上前、初めて日本に来たとき、京都へ行ったんだ。まだそのころは外国人観光客が少なかったから、どこでもゆっくり見学することができて、すごく良かった。特に龍安寺。座ってあの庭園を静かに眺めるのが大好きだった。それが今では…」
ーーまぁ、その後は言わなくてもわかるよ。
米「ちょっと前に京都へ行ったんだ。オレが知ってる京都はもう“死んでた”ね。アメリカは新しい国で歴史が浅いから、オレは日本で歴史や伝統を感じる体験をしたいんだよ。」
英「わたしも伏見稲荷大社や清水寺へ行って、あの人混みにはビックリしたし、すごく疲れた。」
米「オレは昔の姿を知っているから、その美しい記憶が壊されるのはすごく残酷なんだ。もう京都に行きたいとは思わないね」
ーーなるほど。
「白すぎ城」が気に入らない理由がよくわかった。
残念だけど、日本政府は君の“敵”だ。
2016年に初めて外国人観光客が 2000万人を突破して、いま政府は 2030年に 6000万人を目指している。
米「知ってる。京都らしい京都を体験できて、オレはラッキーだと思ってる。それに、日本にはまだまだ魅力的な場所があるからね。新しい場所を開拓するのも楽しいよ。」
京都は姫路城と違って、時間が経てばまた元の姿に戻ることはない。
SNSを見ていると、「京都が…」と嘆く京都人はよくいるし、穴場スポットを紹介すると「そこは私の好きな場所どす! ネットで知らせるなんて迷惑やわ〜」みたいに怒る京都人もいた。
古き良き日本を味わいたいなら、「教えるは一時の優越感、教えないは一生の優越感」という教えを守って、発掘と秘密保持に務めるのがいい。
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