インドの女子大生は、日本の仏教・お寺をどう思う?

 

日本の大学で学んでいた2人のインド人をお寺に連れて行って、いろんな話を聞いたから、今回はその内容を紹介しよう。
2人とも20代の女性でヒンドゥー教徒、インドの世界都市ムンバイ(以前のボンベイ)のあるマハーラーシュトラ州の出身だ。
ちなみに、これは彼女たちの個人的な意見だから、別の人に聞けば違う答えが返ってくることもあるハズ。

 

ーーインドについて日本で有名なのが「CCB」、つまりカレー、カースト、仏教の3つ。
仏教はインド(現在のネパール領)で誕生したけど、その後、インドで仏教は衰退していって、今では信者の数は少ない。
君たちはインドで仏教のお寺に行ったことある?

ない。
仏教のお寺は日本で初めて見た。
でも、高校のクラスメートが仏教徒だったから、仏教徒のコミュニティがあって彼らが集まるお寺もあるかも。

ーー日本の仏教では、親より先に死んだ子どもは地獄(賽の河原)に行って、鬼に苦しめられるという考え方がある。
それについてどう思う?

なんでそうなるの?
ヒンドゥー教でそんな話は聞いたことない。子どもがかわいそうすぎて、日本の仏教がちょっと嫌いになった。

 

 

ーー怖い顔をしたあの瓦は「鬼瓦」といって、空をにらんで、邪気とか悪いものを寺に近づけないようにしている。
日本のお寺には同じ目的で、ほかにも屋根の上に獅子の飾りがあることもある。

ヒンドゥー教の寺院でもそんなものはある?

見たことないな~。というか、お寺で魔除けって何か変。
だって、お寺は清浄&神聖な空間で、邪悪な存在にとっては危険なところじゃない?
魔物が自分から近づくことはないから、魔除けは必要ない気がする。

 

ーー日本のお寺では線香がよく使われているけど、ヒンドゥー教のお寺でも同じ?

そう! よくある。
そして私はその香りが好き。
ヒンドゥー教のお寺では、その場を清めるために線香を使っている。
日本の線香と形やに香りは同じで、このまえ100円ショップに行ったら、インドから輸入された線香があったから即買いした。

 

 

ーーこれは放生池といって、魚をここに放ったり、エサをあげたりすることで仏教的な善行を行うことができる。
ヒンドゥー寺院にもこんな池はある?

そういうお寺もある。
その池には亀や魚がいて、エサをあげることで良いカルマを得ることができるから、放生池と考え方は同じね。

ーーへ〜。
仏教もヒンドゥー教もバラモン教から生まれた宗教だから、考え方で似ているところは多いね。

ヒンドゥー教で亀は人気。
最高神のひとり、ヴィシュヌ神はさまざな姿でこの世界に現れて、その一つが亀(クールマ)だから。
私の実家の近所のヒンドゥー寺院には亀の像があって、それに触れてから神様にお祈りをする。

ーーそう言えば、ヒンドゥー教ではブッダもヴィシュヌ神の化身のひとつだったっけ。

 

奈良・興福寺の放生池(猿沢池)には、日向ぼっこをする亀たちがいる。
実はこれもヴィシュヌ神の化身・クールマだったりして。

 

 

ーー日本で鶴はめでたいことの象徴だから、お寺のふすまや屏風のデザインになっていることがある。JALの機体にも鶴が描かれている。
インドでもそんな鳥はいる?

インドでは、ピーコック(孔雀)が国鳥として大切にされてる。
地方に行くと、野生のピーコックを見ることができて、その羽はラッキーアイテムになる。
でも、これは自然に落ちた羽を拾うってことで、ピーコックを捕まえて羽をむしり取るのはダメ。

ーーその様子を想像したらかなり引く。
ガンジーでも助走をつけて殴るレベルだ。

*ちなみに日本の国鳥は鶴じゃなくてキジ。

 

ーー日本に仏教では、「三途の川」を渡ってあの世に行くことになっている。
ヒンドゥー教でも、この世とあの世を分けるパーティションみたいなものってある?

それは知らない。
人が死んだら、死の神ヤマがやってきて魂をあの世に連れて行くイメージ。
でも、韓国ドラマで三途の川みたいな川を見た。

ーーヒンドゥー教のヤマが仏教に取り入れられて、閻魔(エンマ)になったんだ。
エンマは裁判官で死者の行き先を決める。

ヤマにもそんな役割が?

あるよ。
ヤマは死者の生前の行いを記録する書記を連れていて、その人に聞いて死者がどこに行くかを決める。

 

ーーこれ(トップ画像)は般若心経といって、仏教(日本の大乗仏教)のすばらしい教えがこの短いお経に表されている。
これには特別な力があって、唱えると悪霊を追い払うことができるという考え方もある。

ヒンドゥー教には「オウム」という、とっても短い言葉がある。
これは神聖な言葉で、邪悪な存在を退ける効果があるから、「オウム」の文字のある物をネックレスとして首にかける人もいるの。

魔除けなら、ハヌマンのチャント(呪文)を唱えてもいい。
ハヌマンはラーマ王子(ヴィシュヌ神の化身)に仕えていた猿で、魔物をフルボッコにできるほど強い。
ハヌマンのチャントを唱えることで、その加護を受けることができるってわけ。

 

 

ーーこれは弥勒菩薩という。
シャカが入滅(お亡くなりになる)してから、56億7千万年後にこの世界に現れて人びとを救済してくれる偉大な菩薩。
この姿は、いま弥勒が天界にいて、人びとを救う方法を考えている様子を表現しているとか。

それを聞いて、ヴィシュヌ神の話を思い出した。
ヒンドゥー教では、いま世界は悪魔カリによって支配されていて、カリ・ユガの時代にある。
でも、遠い未来にヴィシュヌ神がこの世に現れて、カリを倒して人びとを救うことになってるの。

ーー確かに似ている。
弥勒とヴィシュヌによる救済説は由来は同じで、バラモン教に根源があるかもしれない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。