【ヒンドゥー教と神道】インド人が天照大御神で驚いたこと

 

知り合いのインド人夫婦がことしの正月に九州旅行をした。
夫がベジタリアンということで、もつ鍋もとんこつラーメンも鹿児島豚も食べられなかったけど、九州は緑が豊かで自然を満喫できたという。

それと日本神話の舞台になった場所もあったから、日本の文化や歴史に興味のある彼らにはたまらない。
いちばん印象に残ったのは、宮崎県の高千穂町に行ったときに知った天岩戸(あめのいわと、あまのいわと)の話とその主人公となった神・天照大御神(アマテラスオオミカミ)。

天岩戸の伝説とはこんなもの。

天照大御神にはとんでもなく強い力を持っていて、困ったことに暴力好きの須佐之男命(スサノオノミコト)という弟がいた。

化け物(ヤマタノオロチかも)を倒す須佐之男命

 

乱暴をはたらいて神々を困らせる弟を、「考えがあってのことだから」とかばっていた天照大御神をブチ切らせる事件が起きた。
天照大御神が神に奉げる衣をおっていると、建速須佐之男命がいたずらで屋根から皮をはいだ馬を落としやがる。
ビックリした天女は死んでしまい、これを見た天照大御神は「うわ、このバカさいてー。もう擁護できんわ」と(たぶん)思って天岩戸という洞窟の中に入ってしまう。
太陽神がいなくなったことで、世界は光を失って深い闇に包まれた。

ひきこもり状態となった天照大御神を洞窟から出すために、神々は歌を歌ったりダンスをしたりしてみんなでどんちゃん騒ぎを始める。
「あれ?なんか外が楽しそう」と思った天照大御神が天岩戸の扉に手をかけて開けると、力自慢の神(手力雄神)が天照大御神の手を取って外に引っ張り出すことに成功。

こうして世界に光が戻りましたとさ。めでたしめでたし。
という伝説が日本神話にある。

 

扉を開ける手力雄神とひきこもりをやめた天照大御神
怒って洞窟にこもったはいいけど、天照大御神も出てくるタイミングを失って困っていたかも。
それより天照大御神は太陽神だから、この絵の光と闇は逆じゃないか?

 

宮崎県には天岩戸とそれをまつる神社がある。

 

九州旅行で高千穂町を訪れたインド人はこの岩戸隠れの伝説を知って、興味津々。
なんでも日本神話はヒンドゥー教の神話と似ているらしい。
神道の神々もヒンドゥー教の神々も喜怒哀楽がはっきりしていて、建速須佐之男命のような乱暴者がいたり天照大御神のように怒ったりする女神もいる。
天岩戸の話はとても人間っぽくてヒンドゥー神話のようだから、日本や神道にとても親近感を持ったという。

ヒンドゥー神話の一例として、象の顔を持つガネーシャ神の誕生神話をどうぞ。

日本・インド・東南アジアで人気のガネーシャ。ヒンドゥー教の誕生神話

 

インド人からお土産でもらったガネーシャ

 

ヒンドゥー教にも「スーリヤ」と呼ばれる太陽神がいる。

くわしいことはここをクリック。

太陽神故に全身から高熱を発しており、生まれた時に母親に放り出されたとされる。
仏教では日天とされる。

スーリヤ

 

神道とヒンドゥー教の太陽神、天照大御神とスーリヤは誕生の仕方がマジ似てる。
天照大御神の場合は、黄泉の世界から戻ってきた伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が左目を手で洗ったときに生まれた。
ちなみに伊邪那岐命の鼻から生まれたのが須佐之男命(スサノオノミコト)。
スーリヤの場合は「プルシャ」という巨人の目から生まれたという。
日本とインドの太陽神が目から誕生したというのは偶然か、それとも何かつながりがあるのか。

 

でも、神道とヒンドゥー教は似て非なるもの。
今回話を聞いたインド人が感じた大きな違いは、スーリヤは男性なのに対して天照大御神は女性であること。
さらにスーリヤは神々のひとつだけど、天照大御神は神道の最高神だ。
最高神が女神ということにこのインド人はとても驚いたという。

ヒンドゥー教にもカーリーやラクシュミーなど女神はたくさんいるけど、最高神はヴィシュヌ、ブラフマー、シヴァの3つですべてが男。
それぞれ「創造」、「維持」、「破壊」の神で、太陽を最高神としている日本人との価値観や社会の違いがみえてくる。

 

シヴァ神

 

 

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4 件のコメント

  • 農耕民族だし、日本人の先祖は氷河期に大陸から渡ってきてますから太陽は大切な存在だということを代々伝えていたからかも知れませんね。 太陽を目指してたどり着いたのが日本だったんだと思います。
    日の出を楽しんだり願い事をするのも日本だけのような気がします。
    女神が最高神って神道だけなんでしょうか。 面白いですね(*^^*)

  • 太陽を求めて東にやってきのがいまの日本人。
    面白い見方ですね。その可能性はあるかもしれません。
    別の記事で書こうとおもってますが、最高神が女性というのはとてもユニークだとアメリカ人も指摘していました。
    これは珍しいことだとおもいます。

  • 実はトルコ人は元はアジアの東端から太陽を目指してトルコに来たという話を聞いたことがあって、トルコの語源が「夕日の美しい国」なんだとか。 日本人は日の出を大切にするから日の出の方向を目指したのかな?だから「日本」になったのか?とか思ってまして。 アジア東西の所以も面白いですが真ん中のインドあたりは月氏国というのも面白いな~と思ってます(*^^*)

  • それは面白い話ですね。
    世界史的にはトルコは中央アジアの突厥とう民族が西へ移動してきずいた国とされています。
    知り合いのトルコ人は高校のころ、「わたしたちはチンギス・ハーンの子孫です」とならったそうです。
    太陽を目指して移動したとしたらなかなかロマンチック。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。