親日的イラン人の話 日本語や日本人、文化や歴史について

 

今年のサッカー・アジア杯で、日本の優勝を阻止したのがイラン。
日本はアジアナンバーワンどころか、準々決勝でイランに負けてベスト8に終わってしまった。

今回は、そんなイラン出身で、日本が好きな男性(30代)から聞いた話を紹介していこう。
彼は以前、東京の日本語学校で日本語を学んでいて、今は母国に戻って日本語を使った仕事をしている。

でも、その前に、まずはイランのキホンを確認しておこう。

面積:1,648,195平方キロメートル(日本の約4.4倍)
人口:8,920万人
首都:テヘラン
民族:ペルシャ人(他にアゼリ系トルコ人、クルド人、アラブ人等)
言語:ペルシャ語、トルコ語、クルド語等
宗教:イスラム教(主にシーア派)、他にキリスト教、ユダヤ教、ゾロアスター教等

ソース:外務省ホームページ「イラン・イスラム共和国(Islamic Republic of Iran)基礎データ

イランの人口の 98%がイスラム教徒で、イランの国教(公式宗教)はイスラム教と憲法で定められている。日本とは宗教色の濃さが違う。

 

ーー日本語を学ぶ外国人はよく、「ひらがなとカタカナはいい。でも、漢字がむずかしすぎる!」とか文句を言いやがります。ボクも逆の立場だったら、「なんで文字が3つもあんねん!」って思うけど。
あなたにとっても、やっぱり漢字はでっかい壁?

それはそうだよ。
しかも、音読みと訓読みがあって、一つの漢字にいくつも読み方があるから大変だ。
でも、「イラン人」を訓読みにすると、「いらんひと」になってまったく違う意味になる。
音読み・訓読みがあると、こんな言葉遊びができて面白よね。

ーーそのポジティブさは重要。

 

 

ーー日本人は「縁起もの」が大好き。
受験シーズンになると受験生は神社やお寺で合格を祈ったり、スーパーやコンビニで合格祈願のグッズを買ったりする。
イランの人たちも、そんなことをする?

日本みたいな合格グッズは見たことない。
イスラム教を熱心に信じる人なら、モスクに行って祈るだろうね。でも、神(アッラー)はどんな声も聞いてくれるから、自宅で祈ってもいい。
でも、ただ祈るだけだと“効果”が薄いから、私の場合は、試験に合格したら貧しい人たちにご飯をあげると誓った。

ーーなるほど。
日本だと、合格祈願は自分だけで済ませる「自己完結的」だけど、イランではチャリティの要素があると。
ところで、あなたは日本や日本人が好きって言ってたよね?

好きじゃない、大好きなんだ。

ーーすまない、こちらの認識不足だった。
で、それは具体的にどんなところ?

日本人は親切でいろいろと助けてくれるし、一度約束をしたら、裏切らないところがいい。イラン人は自分優先でわりとテキトーだから。

ーーでも、日本人は完璧な存在じゃない。イヤな部分もあると思うけど、それってどんなところ?

それは、イランについて、「厳しいイスラム教の国」というステレオタイプを持っていること。それを当然の前提として話をされると、正直ウンザリする。
実際はそうじゃないし、特にテヘランではイスラム教の信仰がどんどん薄くなっているんだ。

ーーそうか。
確かにまだ日本では、イランについてそんな偏見を持ってる人は多いだろうね。
(ボクもそんなイメージを持ってた。だって、人口の 98%がイスラム教徒で、国教はイスラム教じゃん。)

 

イランには、イスラム暦(ヒジュラ暦)とは別の独自のカレンダーがあって、日常生活ではそれが使われている。たとえば、食品の消費期限はイラン暦で書いてある。

*イスラム教の預言者ムハンマドが、マッカからメディナへ聖遷(ヒジュラ)した622年から、イスラム暦(ヒジュラ暦)がはじまった。2024年はイスラム暦だと 1445年で、イラン暦だと1403年になる。
日本にも、(神話で)神武天皇が即位した紀元前660年を起源とする「皇紀」があって、2024年は皇紀 2684年になる。
イランみたいに、たとえばパンの賞味期限に皇紀を使えば「2684・06・27」みたいになるから、国民が「寝ている間にタイムリープした?」と混乱することは必至。

 

イランでは、イラン暦にもとづいて新年がはじまる。
イランの新年って知ってる?

ーーイランの新年? 
Who knows(そんなの知らない)。

そう、ノウルーズ(“新しい日”の意)だ。
ノウルーズには親戚や友人の家に行って、一緒においしいものを食べて新年のお祝いをする。

*イスラム教は7世紀にアラビア半島ではじまった。
(イスラム教を広めたムハンマドと、日本に仏教を広めた聖徳太子は同時代の人物)
イランでノウルーズの伝統はそのはるか前、ゾロアスター教が信仰されていた2000年以上前からあった。2024年のノウルーズは3月20~23日ナリ。
世界には、新年を西暦の1月1日ではなく、伝統的な暦で祝う国は多い。
明治時代、西洋諸国を参考に国内改革を進めていて、正月まで西暦に“引っ越した”日本は珍しい方かも。

 

本日のまとめ

日本人は「イラン」を使ってダジャレを言ってもいいけど、「イラン=イスラム」のイメージは持たない方がいい。

 

 

中東 目次

イスラム教 「目次」

イランで新年を祝う時期、日本人がお墓参りをする理由

イスラム教と女性の自由:イランに“忍者ガール”が現れたワケ

【誤解しないで】イランがイスラム、アラブの国ではない理由

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。