日本在住バングラデシュ人の話 文化や社会、信仰の違いなど 

 

先日の3日、バングラデシュで国際協力機構(JICA)が主催した慰霊式典が開かれた。
2016年7月1日、首都ダッカでイスラム武装集団によるテロが発生し、日本人7人を含む22人が殺害された。(ダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件
その数年前にダッカを旅行したから、この出来事には強いショックをうけたのを覚えている。
あれからもう8年か…。

さて今回は、日本に住んでいる3人のバングラデシュ人(全員 20代の男性)から聞いた話を紹介しよう。
ちなみに、彼らはイスラム教徒として、イスラム過激派を「敵」と見なしていた。

まずはいつものように、バングラデシュの基本情報を確認しておこう。

面積:14万7千平方キロメートル(日本の約4割)
人口:1億7,119万人(2022年)
首都:ダッカ
民族:大部分がベンガル人(山間部に少数民族がいる)
言語:ベンガル語(国語)、成人(15歳以上)識字率:77.7%(2022年)
宗教:イスラム教徒91%、その他(ヒンズー教徒、仏教徒、キリスト教徒)9%(2022年)

ソース:外務省HPのバングラデシュ人民共和国(People’s Republic of Bangladesh)基礎データ 

 

ーー最近、インターネットで面白い話を見つけた。
日本に住んでいる外国人のイスラム教徒が、石焼き芋屋の「いしや〜きい〜も〜」のフレーズを聞いて、「礼拝を呼びかけるアザーンかと思った」と

みんなはどう思う?

(それを聞いて)たしかに似てる! なつかしい気持ちになるね。
日本語を知らないとアザーンと誤解して、「近くにモスク(礼拝所)があるのか?」って思いそう。

ーーなつかしい、か。
ボクもあの声を聞くと、昭和を思い出すよ。
まぁ、君たちは昭和なんて知らないだろうけど。
ところで、「元号」って知ってる?

それは、時代に名前を付ける日本のシステムだよね。
いまはレイワ。

ーーせいかい。
元号の制度は古代中国で生まれて、周辺国の日本・朝鮮・ベトナムに伝わったんだ。
本家の中国では 100年ほど前に廃止されて、元号を使っている国はいまでは世界で日本だけ。
バングラデシュでにもそんな考え方はある?

ヒジュラ暦というのがあるんだけど、知ってる?

ーーもちろん。
九つの頭をもつ巨大な蛇の化け物で、ヘラクレスに退治されたのはヒドラですね。
イスラム教の預言者ムハンマドが、マッカからメディアへ移住した出来事が「聖遷(ヒジュラ)」と呼ばれている。
その年(西暦622年)が元年になってヒジュラ暦がはじまったから、2024年は1445年になる。
でも、622年を起点にずっとつづいていて、元号みたいに「リセット」して1からスタートすることはない。
イスラム教ではなくて、バングラデシュの独自のカレンダーはあり?

ベンガル暦がある。
バングラデシュの伝統的な新年は、これにもとづいて4月14日にはじまるんだ。
ボヘラ・ボイシャク(ベンガル新年)には、伝統衣装を着てお祝いをする。
ダッカでは大学生による「マンガル・シャブハジャトラ」というパレードがおこなわれる。

*このパレードは、国民の団結や悪を追い払うことを象徴しているらしい。(Mangal Shobhajatra

 

 

ーー日本の正月は神道の影響がとても強い。
玄関にしめ飾りをつけたり、鏡餅を用意したりして、歳神様(新年の神)をお迎えするのが正月のお約束。
バングラデシュの新年も神を祝う?

ないない、それはダメだよ。バングラデシュには、イスラム教徒もヒンドゥー教徒もキリスト教徒もいるからね。
新年に特定の神はいないから、国民がみんな平等の立場で祝うことができるんだ。
バングラデシュ人は自分の感情に正直で、喜びも怒りもストレートに表現する。信仰する宗教についてはすごく熱心な人が多いから、その感情には十分配慮しないといけない。

*2021年にバングラデシュでイスラム教徒とヒンドゥー教徒の間で激しい衝突が発生し、450人が逮捕され、少なくとも8人が殺害された。
2021 anti-Hindu violence in Bangladesh
日本の新年では、神道以外の人はどうしているんだ?

ーー日本でいちばん多いのは“無宗教”だから、正月を伝統文化として考えている人がほとんどだと思う。
バングラデシュでは一人一人の信仰が重要視されているから、国民みんなが宗教色のない新年を祝うことができる。
日本では逆に、国民が宗教を意識しないから、神道の神を迎える新年をみんなが祝うことができる。
(直接会ったことはないけど、信仰上の理由からしめ飾りや鏡餅を飾らず、日本の一般的なお正月を拒否する人もいるかも。)

 

本日のまとめ

日本とバングラデシュでは宗教に対する「熱」がちがう。
バングラデシュでは信仰が理由になって暴動が発生し、街が破壊され、多くの人が殺害されることもあるから、宗教の扱いには注意が必要だ。
それに対し、日本は死傷者をだす宗教暴動とは無縁の国。
両国の社会では、読むべき「空気」のポイントが違う。

 

イスラム教で礼拝を呼びかけるアザーン
日本人がこれを聞いて、「石焼き芋を販売中?」とカン違いすることはまずない。

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

インド人とバングラデシュ人が見た日本:治安と秩序が違う!

日本人の日本料理店VS韓国人のヘンテコ和食店 in バングラデシュ

「ダッカのテロ」を利用して恐怖をつくって人を誘導するな

日本の交通手段の歴史①かご→人力車・インドの人力車の思い出

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。