日本を知るドイツ人の話 自殺の名所・死者との結婚・大根料理

 

友人のドイツ人は日本に興味を持って日本語を学び、静岡の大学で学んだあとに母国へ戻って、いまはブレーメンに住んでいる。ちなみに、「音楽隊」のメンバーではない。
今回は、日本の事情を知る彼とアレコレ話したことを書いていこう。

 

ーーもし、また日本に来れるとしたら、どこへ行ってみたい?

京都や東京、高野山とか有名なところは制覇したから、今度は「スーサイドフォレスト」に行きたいな。

ーー自殺の森…、青木ヶ原樹海のことか。

あれは「Aokigahara Jyukai」というのか。本当の名前は知らなかった。

ーー「自殺の森」は映画やユーチューブ動画のタイトルで使う言葉で、日本人は本物の森にそんな名前をつけるセンスは無いと思う。
でそう思うのは、アメリカ人のローガン・ポールの影響で?
この有名ユーチューバーが青木ヶ原樹海で見つけた遺体の動画をアップしたことで、ここが世界的に知られるようになったと聞いたことがある。

ローガン・ポールかわからないけど、ユーチューブの動画で知って、どんなところか興味をもったんだ。

ーーあそこはドイツでも有名?

いや、ふつうの人は知らない。
知っているのは日本に関心のある人とか、世界の恐怖スポットに興味のある人だけだろうね。

ーーそうか。
でも、今では青木ヶ原樹海にはキャンプ場があって、子どもも楽しめるスポットになっている。

ええっ! なんで子どもがなんで遊ぶの?
幽霊が怖くないの?

ーー「スーサイドフォレスト」は樹海の一面で、楽しい場所もある。
まえにテレビ番組で、地元の人たちが「死」の暗いイメージを変えたいと言っていたから、それでキャンプ場なんかをつくったんじゃないかな。
でも、その努力は、登録者数2350万人のユーチューバーによって、台無しにされたけど。

欧米で日本は「自殺が多い国」と思われているから、スーサイドフォレストは印象的だったのかもしれない。

*日本、アメリカ、フランスなどの先進国(G7)の中で、15~34歳の年代で自殺が死因の1位になっているのは日本だけ。
この世代の人口10万人当たりの自殺者数は日本が16.3人に対し、ドイツは7.5人と半分以下。

ーーところで、日本ではほかにも、東尋坊や三原山など「自殺の名所」と呼ばれる場所が昔からある。ドイツにもそんな場所はあり?

そんなところは聞いたことがない。
自殺は自分の家でするイメージがあるけど、なんで日本人は他人と同じ場所でそれをしようとするの?

ーーいや、それはわからない。
その理由は一生わからなくていい。

 

 

ーーダークな話題のついでに聞きたいことがある。
台湾や韓国では、死者と結婚する「冥婚」という儀式があって、日本でも山形県にそんな風習がある。
ドイツでも、死者と結婚することがあると聞いたのだけど。

それは、第二次世界大戦のとき、ナチス政権下であった例外的なことだよ。
女性が戦死した男性兵士の子どもを身ごもっていた場合、その「死者」と正式に結婚することが認められることで、子どもが婚外子になることを避けられる。
そして、新婦は兵士の“未亡人”となって、特典を受けることができた。

Posthumous marriage in Germany

でも、死んだ人と結婚するなんてクレイジーな考え方だね。

 

ーーなんか暗い雰囲気になってしまったから、話題を変えようか。
日本で食べたもので、ビックリしたものはある?

すごい急な切り替えだね、F1レーサーなみだ。
日本で驚いた食べ物は「焼き大根」。
それまで大根は生のまま食べていたから、肉みたいに火を通す発想は斬新だった。
でも、ドイツには、切った大根に塩をかけるだけの超シンプルな料理「涙大根」があるんだ。

ーーその作り方はお手軽すぎて、手抜きかどうかの判断がむずかしい。
でも、隣国のイタリアやフランスに比べて、料理へのこだわりが薄いドイツ人らしい一品だ。
ツッコミ待ちだと思うけど、なんでそんな名前になったわけ?

塩をかけると水分が出てくるから、「涙大根」という名前になったらしい。
これがビールに合うんだよ。

ーーなるほど。
日本に「焼き大根」があるなら、ドイツには「泣き大根」があると。

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

【台湾の冥婚】絶対に拾ってはいけない“赤い封筒”

山形だけの風習「ムカサリ絵馬」。死者が結婚する目的は?

外国人も納得。神道の禊に由来する日本の文化「手水」

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。