「じゃがいも」の語源となったのは、インドネシアの首都ジャカルタ。
そんな話はもう過去の話になりそうだ。
いまは新首都「ヌサンタラ」(群島の意)への引越し作業が行なわれていて、ことし2024年内に移転が終了する予定。
今回はそんな国からやって来て、日本の大学で留学生活をおくり、ことしの9月に母国に帰る予定のインドネシア人(20代の男性)から聞いた話をシェアしよう。
ーーもうすぐインドネシアへ戻るわけだけど、いま楽しみにしていることって何かある?
それは食べ物ですね。
日本にもインドネシア料理のレストランはありますけど、日本人向けの味になっていて、私にはスパイスの「効き」が足りないんです。
それに、値段もインドネシアの3〜4倍しますし。
ーー日本人は、スパイシーで濃い味付けが苦手だからね。同じ人間でも舌はそれぞれ違うから、どうしても料理は現地化する。
中国料理を日本人向けに変化させたものを「中華料理」って言うことがある。知人の中国人も、日本の「魔改造中華」は好きじゃないと言っていた。
それにしても、味がマズくなって値段が上がるっていうのは、食べ物としては最悪の変化だな。
インドネシアで見た大航海時代のイカリのレプリカ(本物かも)
ーーインドネシアは20世紀の半ばまで、オランダに300年も植民地支配されていた。この時代について学校でどう習った?
強制労働や虐殺があったという話は聞きましたが、くわしいことは知りません。
今でもその時代の影響は残っていて、肌が白かったり鼻が高かったりするインドネシア人もいます。
(オランダ領東インド)
ーーインドネシア政府がオランダに対して、謝罪や賠償を要求すべきだと思う?
その必要はないですね。
オランダはすでに奴隷制度や虐殺など、インドネシアに非人道的な行為をしたと認めて謝罪しました。
それに、オランダはインドネシアに橋や道路をつくって生活を便利にしました。コーヒーの栽培をはじめたり、スパイスの加工技術を伝えたりしましたし。
ーーミャンマー人も同じことを言っていた。
イギリスの支配は残酷で過酷だったけど、インフラストラクチャー(社会基盤)を整備したと。植民地支配の闇だけじゃなくて、光の面に目を向けることも大切だ。
それに、それはもう100年以上も前のことです。
歴史を学ばないといけませんが、恨みを引き継ぐ必要はありません。
ーーそれは賛成。
*ジャガイモは17世紀にオランダ人が、インドネシアのジャカルタから日本へ伝えたとされる。「じゃがたらいも(ジャカルタから来たいも)がなまって「ジャガイモ」になったらしい。
インドネシアで見たオランダ時代の牢屋(たぶん)
囚人は足に鉄球をはめられていたらしい。
ーーインドネシアでは日本について、一般的にどんなイメージがあるの?
世界的な先進国で社会的にとても発達していて、人びとは規律正しく、いつも時間を守って行動している。そんな感じだと思います。
ーーそんなイメージを持って日本に来て、実際に生活してどう思った?
現実は想像以上でした。
電車はとても時間に正確に走っていますし、日本人は待ち合わせに遅れると「ごめん、5分遅れる」とメッセージを送ります。
5分ですよ? インドネシアでは「時間内」です。
遅刻の概念が違って驚きました。
ーーインドネシアでは13時にはじまる予定でも、実際には人が集まらないから、開始時刻が13時15分、30分、14時…とゴムのように伸びていく。
そんなインドネシア人のルーズな時間感覚を、「ジャム・カレット(ゴムの時間)」って言うんだよね。日本人の時間感覚はオリハルコンだから。
そうです、ジャム・カレット。
伸びるだけで縮まることはありませんww
ーー日本で生活していて、嫌な経験をしたことはある?
大きなことはないですけど、細かいことなら何度か。
たとえば、自転車に乗っていて、ブレーキをかけて「キーッ」と大きな音が出ると、通りがかりのおじさんに突然「うるさいっ!」って怒鳴られてビックリしました。
ーー「通行人ガチャ」に外れを引いたね。
同じ場面に遭遇しても、何も言わない人のほうが圧倒的に多いと思うよ。
日本人は基本的に細かくて、時間やルールをしっかり守ります。だから、ボクとしては、ウンザリさせられることもあるんです。
待ち合わせに5分、10分遅れるだけで、連絡しないといけないのは面倒くさいですね。
ーー日本社会の良いところはどんな点だと思う?
交通機関が発達しているところですね。
時間厳守の運行のほかに、東京や大阪ではたくさんの地下鉄や電車があるから、とても効率的に移動することができます。
それに初めて利用した駅でも、案内がわかりやすく表示されています。これは日本人の細かさの良い点ですね。
日本なら、静岡から東京への日帰り旅行できますけど、インドネシアでその距離を旅行すると2〜3日かかります。
ーーわかる。インドネシアを旅行した時、電車が6時間も遅れて、いきなりスケジュールがぶっ壊れた。
わかりますww。
インドネシアで細かい計画は立てても、あまり意味がありません。その場で予定を切り替える柔軟性のほうが重要です。
インドネシアでは渋滞もひどくて、移動の見通しが正確に立てられないんです。
たとえば、5時間で行けるところでも、大渋滞にはまって1日かかったことがあります。
ーーつまり、インドネシア社会では予定は未定で、日本の社会は安定感があるということか。
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