最近、30代の台湾人女性をお寺に案内した。
彼女は日本が好きで、これまで東京・沖縄・大阪・京都・金沢を旅行したことがあって、今回は3ヶ月ほど日本に滞在する予定らしい。
ネットで日本関連のニュースを見たり、旅行情報を収集したりしているから、彼女は日本について普通の台湾人よりもよく知っている。
そんな台湾人女性は日本の仏教寺院を見てどう思ったのか?
ーー日本の神社やお寺の入り口には、こんな手水があって、心身をキレイにしてから中へ入ることになってます。台湾のお寺にも手水みたいなものはありますか?
それはないですね。
だから、特に心身を清めないでそのままお寺に入ります。でも、お寺に行くときは、神様や仏様と会うからフォーマルな格好をします。
ーーそうですか、タイ人の女性も同じことを言っていました。
タイのお寺でも入る前に手を洗うことはないけれど、ドレスコードには気をつけるそうです。
彼女は日本でもそのルールを守っていて、たとえば、お寺や神社へ行くときはダメージジーンズは絶対に履きません。足を露出するのは、神仏に対して失礼になるからと。
そんな彼女と一緒に神社へ行ったら、タンクトップとホットパンツ姿で肩と太ももを丸出しにしていた日本人の女性がいて、タイ人が「あんな格好はいけませんね」と怒っていました。
ド正論だったから、何も言い返せなかったですね。
伊勢神宮にある松
ーーこのお寺には松の木がたくさんあります。
日本で松は冬でも葉っぱが緑色を保っていることから、長寿や健康を表すめでたい木とされていて、天皇が住んでいる御所にもたくさん松の木が植えられています。
台湾でも松にそんなイメージがありますか?
台湾でも、松には強い生命力のイメージがあって、縁起の良い木とされています。でも、松は墓地によくあるから、自宅の入口に植えると縁起が悪いと言われているんですよ。
ーーおっと、それは意外。
日本では御所のほかにも、大名が住んでいた城や天照大神をまつる伊勢神宮とか、重要な場所でよく松が植えられています。常緑樹の松は生命力の象徴で、とんがった葉が悪霊を寄せ付けないから、建物の入り口に植えることもあるという話を聞いたんですけどね。
*城に松が植えられた理由については、籠城戦を想定して松を食用としたという説もある。
日本で松は正月飾りにも使われていて、個人的にはめでたい印象しかなかったので、そんなダークなイメージあるとは思いませんでした。
台湾で一番めでたいとされているのは梅ですね。
理由は松と似ていて、雪の中でもきれいな花を咲かせるからです。中華航空の機体に梅が描かれているんですよ。
ーー日本航空は鶴のマークですね。
梅と空は関係ないように見えるけど、まぁ細かいことはいいか。
ーー屋根の上に2匹の魚のような像がありますね。
あれは「鯱(しゃち・しゃちほこ)」といって、魚の胴体と虎の頭を持った想像上の生き物です。火事が発生したら、口から水をピューッと吹き出して、建物の火を消すといわれています。
日本の城にもよくある飾りで、織田信長が安土城の飾りとして採用したことから、全国に広がったらしいです。
下のライオンは睨みをきかせて、邪気が近づかないように寺を守っています。
台湾のお寺にも守り神はありますか?
台湾では、龍とライオンがお寺や廟を守っています。
シャチホコと同じように、火災から建物を守るために、屋根に魚の姿が描かれていることもあります。
お寺には3つの入口があって、竜の彫刻のあるところから入って、虎の彫刻のあるところから出ると良いとされています。
南部の高雄には、龍と虎の2つの塔からなる「龍虎塔」があるんです。
十二支のなかで、龍はいちばん縁起の良い生き物で、虎は最悪の生き物とされているから、ここを訪れたら、龍の口から入って虎の口から出ることになっています。
そうすると運気が上がって、災厄を避けられるそうですよ。
愛知県にある豊川稲荷
正式には仏教のお寺だけど、鳥居はあるし「稲荷」と呼ばれているから、ここが神社かお寺かわからない人は多い。
ちょっと聞きたいことがあります。
日本には寺や神社がたくさんありますけど、どう違うんですか?
ーーそれは、ある程度日本を知った外国人の「あるある」の質問ですね。
基本的には鳥居があれば神社で、無ければお寺と思ってOKです。
ただ、たまにお寺の中に鳥居があることもあって、あるアメリカ人は京都の清水寺で鳥居を見つけて、「どゆこと?」と混乱してました。
日本人は昔から神道と仏教を同時に信仰していて、2つの宗教が混じり合う神仏習合という状態が生まれました。だから、お寺の境内に鳥居があるケースもあるんです。
キリスト教の一神教の世界では想像できないことですが。
台湾人の信仰と似ていますね。
台湾でも、多くの人は仏教と道教を信じていて、両方のお寺へお参りに行く人がよくいます。
ーーそう言えば、観音菩薩を道教の神様と思っていた台湾人がいました。彼がよく行く道教のお寺(廟)に観音菩薩の像があるから、かん違いしたらしいです。
わかります。そんな台湾人は多いと思います。
観音菩薩を道教の神と考えていても、台湾の生活で困ることはないですから。
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