「これが先進国か」台湾人が日本人の運転マナーに感心するワケ

 

外国人が日本にいるのなら、日本のルールを守らないといけないし、日本人が外国に行けば同じことをしないといけない。
それを表す「郷に入っては郷に従え」という言葉の元ネタは、「入郷随俗(にゅうきょうずいぞく)」という中国語のことわざだ。
*随は「従う」の意。

これがいつごろか日本へ伝わり、江戸時代に全国の寺子屋で使われていたテキスト「童子教」(どうじきょう)に中この言葉があって、子供たちがそれを学んで日本に広まっていったらしい。
外から来た人間が現地のルールを尊重することは、「When in Rome do as the Romans do」(ローマではローマ人のように行動しろ)という英語表現もあるから、この考え方は人類のゴールデンルールだ。

でも、何事にも例外はある。
逆に外国へ自国の文化やマナーを持ち込むことで、現地の人たちに刺激を与えて喜ばれたり、重要な問題提起になったりする場合もある。
たとえば最近、台湾で小さくて重い出来事があった。
ある日本人が車を運転していると、横断歩道で歩行者を見つけたから、その前で停止して道を譲ると、後ろのバス運転手からクラクションを鳴らされた。

 

 

台湾社会では車優先が常識的だから、歩行者を優先する日本ルールを適用すると「オイコラ!」と怒られることがある。
実際、台湾人の運転はかなり危険だ。
知人のリトアニア人が東ヨーロッパから来て日本を旅行した後、台湾へ移動したらすぐそのことに気づいた。
空港からタクシーに乗って市内のホテルへ向かっていると、まずドライバーがブレーキやアクセルを乱暴に踏むことに彼女は驚く。
(それでも台湾では標準的と思われる)
それに車やバイクは強引に割り込んでくるし、ドライバーが怒ってクラクションを鳴らすから、「同じアジア人でも日本人とは違う」と思ったという。
交通事故での死者数は日本の約6倍(人口当たり)というから、日本人も注意しないといけない。

台湾人の運転マナーの悪さは台湾人がよく知っていて、それがちょくちょく問題になる。
実は台湾には歩行者優先のルールがあるのに、それを守らないドライバーが多いから、台湾には「歩行者地獄」なんて汚名も付けられた。
今回、日本人が日本の常識で行動したことで、改めて台湾の人たちがこの問題と向き合うきっかけになったという。
ただ、「日本のようになるには10年以上かかる」とため息をつく台湾人のネットユーザーもいたとか。

これに日本のネット民の感想は?

・流石アジアの名古屋だな
・日本のクラクションは殺し合い開始の合図だからな。
・日本の場合は短く押せば挨拶または注意喚起、長く押せば威嚇になるから間違えないよう微妙なコントロールが必要
・深夜の誰もいない交差点の赤信号で車止まるのなんてドイツと日本くらいだよ
・道路事情だと地域性も出る
落下物は大阪、マナーだと三重~名古屋辺りが酷かった記憶

 

台湾のナゾの日本商品
台湾では漢字の「安」に「cheap」の意味はないから「激安」は意味不明。
でもいまでは、この日本語が台湾社会に浸透しているらしい。

近ごろ台湾に登場した日本語「激安」。中国語にない意味

 

このまえのゴールデンウイークに、日本語を学んでいる20代の台湾人夫婦と会ったから日本の印象を聞いてみた。
「ウワサには聞いていましたが、やっぱりすごいと思いました!」と彼らが絶賛したのが運転マナーの良さ。
たくさんの車が走っているのに、クラクションが聞こえてないところがまず台湾とは違う。
それに割り込みもないし、みんな安全を優先して車間距離を長くとっている。
歩行者を見れば停まってくるから、安心して道を渡ることができる。
これは日本のどこへ行っても同じだったから、学歴とは別の教育レベルの高さを感じて「これが先進国か…」と2人で感心したという。

まあリップサービス(耳当たりのよいことば)が含まれているとしても、歩行者優先で停まった車にバスの運転手がイラついてクラクションを鳴らすのを見ると、運転マナーではかなりの差があるのは間違いない。
で、彼らの話には続きがある。

この夫婦の知人がまえに日本で働いていて、朝は車で通勤して週末にはドライブを楽しんでいた。
その台湾人が仕事を辞めて台湾へ戻った後、日本で身につけたことは忘れたくないし、「微力でも無力ではない」と思ったようで、ここでも日本の感覚で車の運転をすることにした。
マナーが良いと走っていて気持ちも良い。
台湾人の運転の荒さは前々から気になっていたし、もし自分の運転を見て「アレ?」と違和感を感じたドライバーがいたら、それだけも価値はある。
で実際にやってみたら、「そんなふうに考えていた時期が私にもありました…」という結果に終わった。
日本基準で車を運転していると、車間距離を利用されてすぐに割り込まれるから、急いでブレーキを踏んで自分も同乗者もヒヤッとさせられる。
それに、クラクションを鳴らされてもこちらは鳴らさないという、「非暴力・不服従」みたいなガンディー主義も限界に近づいた。
台湾の道で日本人の運転マナーを守っていると、なんか一方的に損をしている感じがしてストレスもたまってくる。
それである日、「もうやってられるか!」となって、自分もここでは一人の修羅としてハンドルを握ることにしたというオチ。
「台湾で日本人みたいな運転なんて無理ですよー」と2人は笑う。

はじめての土地で新しいルールを知って、それに従うのではなくて、現地のやり方を拒否しきれなくなって、周囲に染まっていくのも一つの入郷随俗だ。
日本人が台湾へ行けば、(交通マナーでは)動物園で育てられた生き物が野生に放たれるようなものだから、きっと現地化していく。
日本商品と違って、価値観や文化は簡単には受け入れられないのだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。