これから紹介するのは、中東にあって小粒でもキラリと輝くドバイ。
検索エンジンに「ドバイ」と入力すると、関連ワードに「物価」が出てくる。これは、日本ではドバイについて「物価がヤバい!」というイメージがあるから。
実際、2024年4月のデータを見ると、マクドナルドのバリューセットが約1500円、輸入ビール(330ミリリットル)が約2150円、カプチーノが一杯約950円とかなり高い。
しかし、米は1キロで約350円、りんご(1キログラム)で約810円、じゃがいも(1キロ)で約420円だから、このあたりは日本よりも安い。
ちなみに、ドバイの平均月収は約64万円だ。
ソース:「ドバイ物価調査。ドバイの物価と日本(東京)の物価比較」(World Invest)
部分的には日本の方が安いものもあるけれど、全体的な物価を見れば「ドバイはヤバい」は事実だった。
そんなドバイは独立国ではないが、普通の都市でもない。
アラブ首長国連邦(United Arab Emirates:UAE)はアブダビなど7つの首長国で構成されていて、その最大都市であるドバイには約365万人が住んでいる。
首長(アミール)とは、イスラム世界において強大な権力を持つ君主のことで、ざっくり言えば「王」だ。
この点では、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4カ国からなるイギリスと似ている。
「イギリス」というのは日本語で、あの国の正式名称は「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国(The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)」でとっても長いから、外国人は略して「U.K」と呼ぶ。
ただ、イギリスには国全体をまとめる王がいるが、UAEにそんな人物は存在しない。
話をドバイに戻そう。
ドバイはUAEにある1つの都市で面積は小さいが、実質的には首長国という「国家」でもある。同じアラビア半島にあるカタールやバーレーンも首長国で、以前は「アラブ首長国連邦(Federation of Arab Emirates:FAE)」に属していたが、そこから離脱して、現在ではそれぞれ単独で独立国家となっている。
ドバイも本気を出せば、独立国としてやっていける気はする。
そんなドバイを含むアラブ首長国連邦とはこんな国だ。
面積:83,600平方キロメートル(日本の約4分の1。北海道程度)
人口:約989万人(2020年)
首都:アブダビ
民族:アラブ人
言語:アラビア語
宗教:イスラム教
外務省の「アラブ首長国連邦(United Arab Emirates:UAE)基礎データ」
次に、ドバイの歴史を見てみよう。
19世紀のはじめ、ここは漁業や真珠の輸出などで生活していた小さな漁村だった。
1853年にこのあたり一帯がイギリスの統治下に置かれると、ドバイはイギリスの重要な植民地だったインドと他の植民地を結ぶ中継地として発展していく。
天然真珠の採取も行っていたが、三重県出身の御木本幸吉が1893年に世界で初めて真珠の養殖に成功したことで、産業として成立しなくなってしまう。
後に「真珠王」と呼ばれる日本人が、結果的にドバイ経済に打撃を与えたことになる。地球は1つで世界はつながっているから、こういうことも起こるのだ。
戦後、1960年代にドバイ沖で油田が発見されると、巨額のオイルマネーが入ってくるようになり、ドバイの経済や社会は一変する。
1971年にイギリスが撤退すると、首長国だったドバイその年の12月に、他の6つの首長国とともにアラブ首長国連邦を結成した。
今では石油産業だけでなく、中継貿易とともに、ドバイは世界中から大企業や優秀な人材を呼び込んで大発展をとげている。
その繁栄のシンボルが、東京スカイツリーを超え、世界で最も高い建物であるブルジュ・ハリファ(ブルジュ・ハリーファ)だ。
この名前の元ネタ(由来)は、アブダビの首長であるハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン。
下の動画は、砂漠の漁村だったドバイが急速に発展し、現在では平均月収は64万円の世界的な都市になった様子を高速で伝えている。
ドバイをあえて日本の都市に例えるなら、それはきっと横浜だ。
ドバイがイギリスの保護国となった1853年、日本では江戸幕府がアメリカの軍人ペリーと日米和親条約を結んで開国し、新しい時代をスタートさせた。
すると、小さな漁村だった横浜に多くの西洋人が住みはじめ、この地が発展していく。海外から人と物が集まり、繁栄していったドバイと重なる。
これで横浜の沖合で海底油田が発見されたら、住民の平均月収は64万円になるかも。そしたら、「横浜首長国」となって日本から実質的に分離独立する予感。
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