インドのシク教徒が金閣寺に「共感」を感じた3つの理由

 

下の建物を「金閣寺」と言っちゃうと、金閣寺を愛する人から「ちゃうで!」とツッコまれるかもしれない。

 

 

金閣寺の正式名称は「鹿苑(ろくおん)寺」で、この建物はその境内にある舎利殿で名称を「金閣」という。
舎利殿は金ピカで印象的だから、この建物を「金閣寺」と呼ぶ人がいる。一般的にはスルーされても、ミスや妥協を許さない「金閣寺ポリス」もいるのだ。

京都旅行に行った外国人にルートを聞くと、ほぼすべての人が伏見稲荷大社・清水寺・金閣寺の3つを訪れているから、個人的にそこを「京のゴールデン・トライアングル」と呼んでいる。
外国人はキンキラで派手な金閣寺が好きで、日本人は質素でわび・さびを感じさせる銀閣寺を好む、と日本人なら言わなきゃいけないという圧力がある気がするけれど、金閣寺も銀閣寺も相国寺の塔頭寺院だから、本質的には同じだ。

 

シク教徒は髪を切ることが許されず、頭にターバンを巻いている。
日本でインド人というと、「ターバンを巻いている」というイメージが一般的にあるが、インドにシク教徒は約2%しかいない。

 

外国人は金閣寺をよくゴールデン・テンプルと呼び、その感想を聞くと、「キレイでゴージャスで、とても素晴らしかった!」というテンプレのような称賛が返ってくる。
でも、あるシク教徒のインド人夫婦は「親しみを感じた」と一味違った感想を言う。2人が金閣寺に共感を感じた理由はすぐにわかった。
シク教徒にとって最も重要で神聖な寺院、ハリマンディル・サーヒブも金色で覆われていて、よく「ゴールデン・テンプル(黄金寺院)」と呼ばれているからだ。
ボクもパンジャブ州に行ってこれを見た時、金閣寺が頭に浮かんだ。

舎利殿とはシャカの遺骨を収めたところで、鹿苑寺の金閣には釈迦如来や観音菩薩の像が安置されているから、境内ではこの建物がいちばん重要か、最上級に重要な建物になる。
シク教の黄金寺院には聖典「グル・グラント・サーヒブ」が安置されているから、信者にとってはこの建物が最も神聖になる。
1604年の9月1日、この聖典が黄金寺院に置かれた。ハリマンディル・サーヒブがただの建物から、神聖な寺院になった日だ。

 

沐浴をするシク教徒

 

2人に話を聞くと、シク教徒が京都の金閣寺を見て、親しみを感じる理由は「金色に輝く外観」だけではなく、あと2つあった。

1つ目は、建物と池がセットになっていること。

金閣寺の庭は極楽浄土をイメージしていて、金閣が池に浮かんでいるように見える。
黄金寺院も周囲を神聖な「アムリタ・サラス」(不死の池)に囲まれていて、建物と池が一体化している。だから、彼らは金閣寺の池を見て、アムリタ・サラスを連想した。
ただ、黄金寺院では、信者が服を脱いで沐浴をすることができて、それがここを訪れる重要な動機になっている。金閣寺の池でそれをすると、迷惑を超えて犯罪行為になる。

2つ目は、どっちも平等であること。

シク教はヒンドゥー教のカースト制を否定して、すべての人は完全に平等であると考えられている。これはシク教で最も大切な考え方で、黄金寺院にある4つの門がそれを象徴している。
この寺院は宗教の違いに関係なく、誰に対しても開かれているという点を2人は強調していた。
英語版ウィキペディアにも、黄金寺院(gurudwara)にある4つの入り口はシク教の「平等」に対する信念と、この聖地はすべての人を歓迎するという考え方を象徴していると説明されている。

The four entrances to the gurudwara symbolises the Sikh belief in equality and the Sikh view that all people are welcome into their holy place.

Golden Temple

 

2人が金閣寺を訪れると、肌や髪の色に関係なく、さまざまな人がいて写真を撮っていた。その様子を見て、この寺が黄金寺院と同じように、世界中の人を歓迎し、平等に考えていることを感じたという。
これはシク教の教義とそっくりというか、そのものだ。
もともと仏教はカースト制度に反発し、平等を重要なコンセプトにして誕生した宗教だから、シク教の教義と共通しているのも当然。

ということで、このシク教徒のカップルは、「金色の建物・池と一体化している・平等」の3つの点で金閣寺と黄金寺院は同じだったから、親しみを感じたらしい。

 

 

「インド・カテゴリー」の目次 ③

東南アジアを知りましょ! 「目次」 ①

【カレーより仏教】インド人が日本で親しみを感じたこと

【小野篁】昼は朝廷で天皇、夜は地獄で閻魔王に仕えた謎役人

外国人「独とか蒙古って漢字は差別だろ?」、日本人「えっ?」

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。