南インド人の生活 in 日本  友人づくり・カースト・食文化

 

まずは、ネットニュースで見たとても巧妙な詐欺事件を紹介したい。
ある女性が“米津玄師”からLINEに、「仕事のために20万円が必要だから助けてほしい」とのメッセージが届いた。女性はその金額を指定された口座に振り込んだあと、だまされたことに気がついた。いまごろ、「夢ならばどれほどよかったでしょう」と思っているかも。

さて、この前南インド出身の20代の女性と会って話を聞いたので、これからその内容を紹介しよう。
彼女は3年前に留学のために日本へやって来て、静岡の大学を卒業した後、そのまま日本の会社に就職した。
そんなインド人はどんな生活を送っているのか?

 

ーーインドを離れてもう3年。
日本で生活していて、インドについて恋しいと思うことはある?

それは家族と友だちね。ビデオチャットで簡単に話すことはできるけど、やっぱり直接会うのとは違うから。でも、日本で新しい友だちをつくることもいい。

ーーなるほど。テクノロジーが進化すればするほど、本物の良さがわかると。
で、その新しい人とはどこでどうやって出会うの?

いろいろある。たとえば、浜松周辺のカレー屋や市の施設を借りて、ヒンドゥー教の祭りをすることがあるから、そこに行って一緒にお祝いをすると、新しいインド人やインド文化に興味のある日本人と知り合える。

 

今月、東京でドゥルガープージャ(ドゥルガー神のお祭り)が行われた。こうしたヒンドゥー教の祭りは日本各地で開かれている。ここで新しい出会いをした人も多いはず。

 

日本人も外国へ行けば同じじゃないの?

ーー日本人の多いところなら「日本人会」みたいな集まりもあるけど、あれはお互いの利益でつながっている。信仰で結ばれるのはインド人らしいと思う。
中国で働いていた友人は、夫婦で現地の日本人会に入っていた。でも、駐在歴の長さとか、勤めている会社や社会的な立場などで、コミュニティ内で微妙なカースト制度があって面倒くさいと言ってた。

私もそんな話を聞いたことがある。日本の社会にはインドとは違う、独自のカースト制度があるって。

ーー子どものころはコミュニケーション能力によるスクールカースト、大人になったら学歴や就職先で社会人カーストがあるって話はネットではよくある。まぁ、半分ネタみたいなものだけど。
逆に、インドでカーストの影響がどんどんなくなっていると聞いた。

そう。
何十年も前は、カーストが違うと同じ食器を使えないとかあったけど、いまはインドの憲法でそうした差別を否定している。
私は同僚や知り合いのカーストなんて知らないし、いつも一緒に食事をしている。そんなことを知っちゃったら、変に意識して気まずくなるかも。
昔と違って、いまは相手のカーストは何かという情報は必要ない。出身地や学歴などのほうがもっと重要。

 

ホーリー祭

インド社会でカーストによる差別は減っているが、カースト制度はいまも根強く残っている。
インドには、さまざまな色の水や粉を相手にかけるホーリー祭がある。これには、色をまとうことによってカーストの壁を「消し去る」という意味があるらしい。

 

ーー食に関しては? 日本にいると、インドの食べ物が恋しくならない?

それはない。ここにはインドカレーの店がたくさんあるから。

ーーたしかに。日本に住んでいたイギリス人が、小さな地方都市へ行ってもインドカレーの店があるから、日本人のカレー愛に驚いていた。
インド人もそこへ行けば、本場の味を楽しめるから問題はないか。

いやいや、お店でカレーを食べる機会は本当に少ない。

ーーというと?

豆、スパイス、肉などの食材をそこで買って、自分で料理を作ることが多いの。
値段はオンラインショップで買うのと変わらないし、お店の人と相談できて、いろんな知識が得られるのもいい。

ーーそっか。
いつも駐車場がガラガラなのに、不思議とつぶれないインドカレーの店があるけど、そうやってもうけていたのかな。
そういえば、日本にあるインドカレーの店は「本格的」をアピールしているけど、実際には、日本人の舌に合わせてマイルドな味付けになっているから、「コレジャナイ」と失望するインド人がいた。

わかる〜。私も同じだから、店では材料を買って、アパートに友だちを呼んで一緒に食べるほうが好き。

ーー日本のカレーはどう?

すごく好き!  ココイチにはよく行く。
インドの食文化は大きく南北に分かれて、北部では小麦粉を使ったパン(ナンやチャパティなど)が多くて、南部では米が多い。日本のカレーはお米中心だから、南インド出身の私にはすごく合う。

ーー日本のインドカレー店は、北インドの食文化をベースにしているところがほとんどだから、米をベースにしている日本カレーの店とは、自然に住み分けができているかも。
南インドは米が主食だから、「日本に来て初めてナンを食べた!」という人がいたのは印象的だった。

インドは広いから、そういう人がいてもおかしくない。

ーーインドの面積は日本の約9倍もある。でも、日本でのインドのイメージは北部にかたよっている。

そうなのよ。日本人にタージ・マハルのことを聞かれても、私は行ったことがないからよく分からない。

ーーでも、最近この近くに、南インド料理の専門家ができたし、これからきっと南インドの時代が来る。

そうだといいけど。

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。