きょう11月4日は第一次世界大戦中の1918年に、第一次世界大戦にイタリアがオーストリア・ハンガリー帝国に勝利した日。
そして昨日は、同じ1918年にドイツで革命が起きた日だった。
この大戦がヨーロッパに与えた影響はすさまじい。
戦争に敗れたドイツ、オーストリア・ハンガリー、オスマン(トルコ)、ロシアの4つの帝国が滅亡し、それぞれの国で革命が起きて、ホーエンツォレルン家、ハプスブルク家、オスマン家、ロマノフ家の4つの王朝が倒された。
ハプスブルク家といえばヨーロッパの歴史で最も有名で重要な王朝の一つで、600年以上も続いたのに、戦争の敗北とともにその栄光も消え去った。
この結果、ドイツ、オーストリア、トルコは皇帝を失って共和国となり、ロシアでは革命の後、1922年に史上初の社会主義国家・ソビエト連邦が建国される。
あの革命と皇帝を廃位させたことについて、現在のドイツ人はどう思っているのか?
友人のドイツ人に聞くと、彼にとってそれは歴史教科書で習う過去の出来事で、良いとか悪いといった感情はなく、中立的に歴史の流れで起こる必然と考えていた。
戦争で国土を荒廃させ、とんでもない数の国民を死亡させたのだから、ヴィルヘルム2世(最後のドイツ皇帝)がその責任をとって退位するのは当然のこと。処刑されるのは行き過ぎでも、ドイツに居場所がなくなって、ヴィルヘルム2世がオランダへ亡命したのも仕方ない。
トルコ人の友人も考えは同じだ。
オスマン帝国は第一次世界大戦で負け、多くの領土を奪われた以上、オスマン皇帝はその責任をとらなければならない。英雄・アタテュルクが革命を起こし、オスマン皇帝とその一族を国外に追放したのは彼にとっては当然のこと。
イタリアの場合はちょっと複雑だ。
第二次世界大戦でムッソリーニ率いるファシスト政権はドイツに味方し、連合軍を相手に戦うも敗北し、イタリアは降伏。
ムッソリーニはイタリアを戦争に引きずり込んだため、「戦犯」として処刑されるのは当然としても、王家(サヴォイア朝)はどうするべきか?
イタリアではこれが民意にゆだねられた。
1946年6月に王制の廃止を問う国民投票が行われ、その結果、君主制に賛成する人が45.7%、反対する人が54.3%となり、イタリアは王政を廃止し、共和制の国となることが決定された。そして、サヴォイア家の一族はイタリアからの退去を命じられ、彼らはポルトガルへ亡命した。
処刑された後、逆さ吊りにされるムッソリーニらの遺体
戦争に負けたら、皇帝は責任をとって廃位されるのは当然。
友人のドイツ人はそんな認識を持っていたから、あるとき彼と話をしていると、「なんで日本では、第二次世界大戦で負けた後も天皇制は続いたのか?」と聞いてきた。彼としては、それが不思議に見えたらしい。
その理由を一言で言うなら、天皇は日本国民に親しまれ、敬愛されていたからだ。
戦後の日本では、米軍を主体とするGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が日本の事実上の統治組織となる。
GHQにとって特に重要な問題は「天皇制をどうしようか? 戦後も存続するべきか、それとも廃止するべきか?」ということだった。
世論調査ではアメリカ国民の多くが昭和天皇の起訴を支持していたし、連合国には天皇を戦争犯罪人として起訴するべきと主張する国もあった。
しかし、天皇に戦争責任がなかったことが分かり、GHQは日本を統治するには天皇制を利用した方がよいと判断する。
GHQのトップだったマッカーサーは、もし天皇を起訴すれば、日本の情勢に混乱をきたし、占領軍の増員が長期間にわたって必要となるだろうと本国に報告した。
マッカーサーは終戦直後、東京で昭和天皇と会ってその人柄に触れ、天皇の戦争責任を問うべきではないと考えたという。
実際、戦争を始めたのは日本政府で、それを終わらせたのが天皇のいわゆる「聖断」だったから、これは正しい。
戦争中、天皇には正しい情報が伝わっておらず、本土決戦を行う戦力がないことを知って天皇はショックを受け、それがポツダム宣言の受諾につながった。
GHQは天皇制を廃止するのではなく、むしろその力を利用することが得策と考えたのも、昭和天皇が国民から深く広く敬愛されていたからだ。
もし、イタリアのように天皇制の存続を問う国民投票を行っていたら、結果はやる前から分かっている。
天皇は戦後、全国各地を訪ねて、戦後復興の困難な状態にあった多くの国民と会い、ねぎらいの言葉をかけた。
昭和天皇が戦後巡幸(じゅんこう)を行った理由は、自身に法的責任はなくても、道義的責任があると考えたからだろう。
昭和天皇の元侍従次長だった人がこう話している。
国民一人一人に手を取って「戦争で苦しかっただろう。よくやってくれた。今後もしっかりやってくれ」ということをおっしゃる。
だけど本当の気持ちは国民に対して「本当にすまなかったね」ということをおっしゃりたいと思うのです。「生テレビ・熱論 天皇 (テレビ朝日出版部)」
そんな天皇の姿を見て、国民は涙を流して感激した。
ドイツ、オーストリア、ロシア、オスマン帝国、イタリアの皇族や王族が同じことをしたら、きっと石を投げられていた。
敗戦後も敬愛される君主というのは、世界的に見てもめずらしいと思う。
おまけ
スペインで200人以上が死亡する大洪水が発生し、きのう国王夫妻が被災地を訪れた。すると、住民が涙を流して感激することはなく、国王夫妻に対して、「人殺し!」「帰れ!」と罵声を浴びせ、泥まで投げつけた。
日本ではありえない光景だ。
> 国王夫妻が被災地を訪れた。すると、住民が涙を流して感激することはなく、国王夫妻に対して、「人殺し!」「帰れ!」と罵声を浴びせ、泥まで投げつけた。
ですが、もしもそれと同じ行動をローマ教皇が行ったらどうでしょうか? 多分、多くの住民が涙を流して感激したと思います。スペインの国民の多くはカトリックですし。
先日、国連の「女性差別撤廃委員会」から日本に対して、「皇位が男系男子に限られるのは望ましくない」という勧告がありました。が、彼らも、ローマ教皇や枢機卿が男ばかりであることには何も言いません。
このことから、ヨーロッパの人々が天皇に対して日本人とは異なる認識を有していることが分かります。日本人にとっての天皇は、彼らにとっての王や王家に相当するものではないのです。まあおそらく、アジア人である日本人に対する差別思想が根底にはあるのでしょうね。天皇がローマ教皇に相当する存在などとは、彼らは考えもしないのです。
韓国に知られたところでは、日本帝国が降伏する時の条件が「無条件降伏」だったにもかかわらず、「天皇制だけは維持させてほしい」と哀願したそうです。ところで、そうじゃなかったんですか? マッカーサー将軍が必要に応じて天皇制を維持したのですか?
まず、アメリカ(連合国)は日本に「無条件降伏」を求めるポツダム宣言をだします。
日本では「天皇制の維持」だけを条件して、ポツダム宣言を受け入れると返事をしました。
しかし、それに対してアメリカは返事をしませんでした。
アメリカ政府内でも天皇をどうするべきか決まっていなかったから、返事をしなかったと言われています。ほかにも、アメリカは原子爆弾を落としたかったから、日本に返事をしなかった(降伏を受け入れなかった)という説もあります。
結局、戦後に天皇制がどうなるか分からないまま、日本は降伏を受け入れました。
天皇制が維持された大きな理由は、マッカーサーが日本国民の敬意を利用して、占領統治するためでした。
そうですね..
韓国では天皇制が維持されることを非常に否定的に見ています。
韓国人は近代化=王政制廃止と見ていますからね。そのため、依然として日本を過去の「帝国」と見なす人が多いです。
>韓国人は近代化=王政制廃止と見ていますからね。そのため、依然として日本を過去の「帝国」と見なす人が多いです。
こんな見方があるのですか。これではイギリスもベルギーも、まだ近代化していないことになりますね。
韓国人には、「日本人にとって天皇とは、ある意味、同等の人間同士であるが敬愛の念をもって接するべき存在である』などという考えは、思いもよらないのでしょうね。
我々現代の日本人は、自分達のことを「天皇の臣下である」とか、「天皇は侵してはならない天上の神にも近い存在である」などとは、考えたことは全くありません。しいて言えば、「伝統を受け継ぐ役割を担った、敬愛すべき親のような存在」とでも表現するのが最も近いでしょうか。