「日本語以外は話せないので、日本語が話せる方のみ受け入れます」
2023年に、石川県のややハイクラスな飲食店がそんなことを書いた紙を張り出したところ、「それは外国人への差別行為では?」と物議を醸した。
もちろん、これにはワケがある。
店側の説明によると、オーダーするときに店員が「3万円」と言って確認したにもかかわらず、支払いの段階になって「3千円と聞いた!」と外国人の客が怒り出し、警察を呼ばれる騒動に発展したことなどがあった。しかし、すぐに英語を話せる人を雇うことは難しいため、トラブル防止のためにとりあえず、「日本語が話せる方のみ〜」という案内を提示することにしたという。
店側の説明によると、オーダーするときに店員が「3万円」と言って確認したにもかかわらず、支払いの段階になって「3千円と聞いた!」と客が怒り出し、警察を呼ばれる騒動に発展したことなどがあった。しかし、人手不足で英語を話せる人を雇うことはむずかしいため、トラブル防止のためにとりあえず、「日本語が話せる方のみ〜」という案内を提示することにした。
とはいえ、「日本語ができない人はお断り」というスタイルには人権的に問題があるということで、外国人の客に対してはこんな英語の案内を見せることにしたという。
「外国の方は大歓迎ですが、私たちは日本語以外は話せないので誤解が生じないためにも話せない方はおまかせコース料理から選んでください。」
このあと、店を訪れた外国人客が「OK、サンキュー!」と受け入れたか、それとも「日本人と同じようによべないのは差別だ!」と警察を呼ぶ騒ぎになったのかは分からない。
気になったのは、この店は客に料金を口頭で伝えていたのか? というところ。もしそうなら、客の目の前で金額を紙に書いてテーブルに置くだけで解決するのでは? でも、それぐらいのことなら、店側もとっくにやっているだろうから、これはきっとそんな単純な話ではない。
日本人の英語力のなさは、国際的な英語能力の試験結果を見ると、だいたいいつも底辺をさまよっていることからもわかる。
普通の店なら、外国人のお客さんは大歓迎でも、トラブルはノーサンキュー。だから、特定の人種や民族に対する差別意識なんてまったくなくても、「コトバの壁」のせいで外国人客とコミュニケーションがうまくとれず、それでは営業を続けることが難しくなるため、日本では上のような店が昔からちょくちょく話題に上がる。
19世紀から20世紀の半ばまでのアメリカは、人種差別が当然にようにあった社会で、列車やバスの待合室や座席が白人と有色人種(Colored)で当然のように分けられていた。
同じ時代の日本でこんな例は知らない。
これは、ことし2024年の冬、山口県である外国人が体験したケース。
彼が予約してあったスパのあるカプセルホテルへ行ったところ、受付のスタッフから、「日本語が話せないと宿泊が難しいと言われた。
日本語の対応ができないと、何か問題が起こったときに適切な対応をすることが難しいことがその理由らしい。
しかし、すでに夜になっていたし、「トラブルの際には、スマホの翻訳機能があれば何とかなる」と言ってみたけど、スタッフの態度は変わらない。
するとラスボス(管理者)らしき男性店員が現れ、スマホを使いながら、
「あなたは日本のお風呂を使ったことがありますか?」
「日本の風習は知っていますか」
といった質問をしたが、彼は両方に「ノー」と答えた。
そんなことで最終的には、「うちのほうでは説明が難しいので、宿泊はできません」と断られてしまった。ユーチューバーだった彼がそれを動画で伝えると、「日本語が理解できない」というのは宿泊を断っていい正当な理由になるのかどうか、ネットで議論に発展した。
個人的にはそれを直接見ていないが、外国人のコメントなら「賛否両論」ではなくて、「否」が圧倒的だったことは想像できる。
これがメディアに取り上げられて事態が大きくなると、ホテル側は、
「この度は、海外の方が日本語を話せないことを理由に、当社がカプセルホテルの宿泊をお断りしてしまった件について、お客様に不快な思いをさせてしまったことを深くおわび申し上げます」
と公式ホームページで謝罪した。旅館業法からしたら、あの対応はNGだったらしい。
さて、いま話題になっているのは『弁護士JPニュース』のこの記事。(2024年12月16日)
京都「この日本語が読める方はご入店ください」飲食店の貼り紙が物議… 使用言語による“差別”は法的に許容される?
京都のある飲食店が入口に、英語と中国語では「満席です」と書かれているが、そこに日本語で「この日本語が読める方はご入店くださいませ」と書いてある紙を貼っていた。それに対し、これは京都人らしいイケズ(いじわる)とみる人や、言葉で客を選ぶ行為は人種差別にあたると主張する人が出てきて物議を醸す。
京都のような世界的な観光地では、外国人観光客は基本的には歓迎していても、外国語のできるスタッフを確保できなかったり、あまりに忙しくて翻訳アプリを使ってコミュニケーションをとる余裕がなかったりして、対応に悩んでいる店は多い。
会計のときになって「そんな話は聞いていない!」と激怒する外国人の相手なんて、誰だってやりたくない。
ワンオペで回している店でそんなことがあったら、仕事ができなくなってほかのお客さんに迷惑をかけてしまう。かといって、日本人を優先すると「あの店は人種差別をしている」と口コミに書かれ、店の評価を落とされてしまう。
こうなるとすべての努力が虚しくなる。
このニュースにネット民の反応は?
・会話できないのに入ってきたらお互い困るだろ
・英語と中国語だけ対応の店を作れば一儲けできるチャンスでは! と考えないの?
・何でもかんでも差別差別という風潮はウンザリ
・子供お断りの店とかとなにが違うん?
店側にも客を選ぶ権利あるだろ
・飲食店のスキマバイト求人でよく書かれている「ヒゲはNGです」のほうが差別だと思う
では、「日本語が読める方はご入店くださいませ」という店の貼り紙は法的にはどうなのか?
記事に登場する弁護士は、特定の言語を話す人だけを受け入れる行為は、差別的行為になる可能性があるものの、必ずしも違法とは限らないと説明する。
日本の法律では、外国語での対応を義務付けていない。だから、店側が日本語でしか対応できないのであれば、上の一文は外国人に対する不当な扱いにはならないという。
つまり、客観的に見て、外国語での対応が可能と思われる店がそれをすると問題になるが、「ここにそれを求めるのは無理」と判断される店なら、“ギリOK”になるらしい。
もちろん、最初から外国人を店に入れないために、そんな貼り紙をするのはNGだ。過去に、国や人種を理由に拒否して店が差別行為と見なされ、違法と判定されたケースもある。
日本には、「それは外国人への差別だ!」と指摘する人はよくいる。
しかし、外国語での対応はキャパオーバーという店は多いから、「日本語ができる方のみ」となってしまう。専門家や行政などがどうすればいいのかの具体案を提示すればいいのだけど、残念ながらそんな話はほとんど聞かない。それだと、差別意識は1ミリもないのに差別的な店とネットで非難され、「チリも積もれば山となる」で日本が差別的な国家と見られてしまう。
非難するだけの人権ポリスはそこら中にいるから、いまの日本に必要なのは、差別をなくすために代案を提示する有能なアドバイザーだ。
ちなみに、京都などで「一見さんお断り」の店については、会員制の店と同じで違法ではない。
> 店側の説明によると、・・・という案内を提示することにしたという。
のところ、2回繰り返しになってますよ。
> いまの日本に必要なのは、差別をなくすために代案を提示する有能なアドバイザーだ。
全くその通りで、スマホの翻訳アプリやAIなんか、その「アドバイザー」の一つとして有力な手段かもしれません。
旅館側と意思が通じたにも関わらず、答えが全て「ノー」即答では、宿泊を断られても仕方がないと思いますが。日本人が外国へ行ってもおそらく同じ扱いを受けるでしょう。とくに宗教や現地の風習とかに問題が絡むと厄介です。
ただまあ、事前の警告として「当館は外国語で応接できるスタッフがいないので、日本語が使えない方は原則として宿泊をお断りしています」程度の貼り紙あるいは宿泊予約サイトへの表示くらいはやっておく方がよいでしょうね。(それでも無視して宿泊しようとする外国人はいるでしょうが。)
規制を無視した弾丸登山、観光地で私有地への立入り、バックカントリーでのスキー、など立入ってははならない場所へ人が入るのを確実に防止したいのであれば、しっかりした柵を作って物理的に入れないようにするしかないでしょう。人間(かならずしも外国人とは限らない)でも熊でもそれは同じです。
>2回繰り返しになってますよ。
そうでした。ご指摘ありがとうございます。
「外国人お断り」は問題アリですが、言語が問題ならその店を支援する体制が必要です。「それは自己責任」と丸投げされても、対応できない店もあります。