韓国の戒厳令とその後 日本企業に勤める韓国民はどうみる?

 

昨年12月3日に韓国の尹(ユン)大統領が非常戒厳を宣言して、それが大失敗に終わるとユン氏は職務停止状態になり、現在は「死に体」となっている。
尹氏がもうすぐ大統領の地位を失うことはまず間違いない。それだけでは終わらず、「内乱罪」が適用されたため、おそらく近いうちに、尹さんの住所は大統領官邸から刑務所に変わる。

そんな韓国で気になるのは、今の混乱状態が終わって始まる“その後”だ。
12月18日に韓国で発表された世論調査の結果によると、次期大統領にふさわしい人物として、李在明(イ・ジェミョン)氏が48.0%と、2位のハン・ドンフン氏の8.0%を大きく引き離し、ブッチギリの1位になった。
現時点では“李在明大統領”が誕生する可能性が最も高い。もしそうなると、せっかく日韓関係に光が見えてきたのに、逆戻りして暗黒時代を迎える可能性も高くなる。

 

文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は「反日色」が強く、2019年に「日本製品を買わない、使わない、日本に行かない」を掲げる「ノージャパン運動」の嵐が韓国で吹き荒れたことは記憶に新しい。
ただ、このボイコット運動は政府やその支持者が主導した“官製デモ”であることが明らかになり、韓国民のあいだでも「ノージャパンじゃなくてノージェインをしよう。これ以上、現政権の反日扇動作戦に利用されたくない」といった反発の声も上がった。(日本製品不買運動
それでも、このころ日韓関係は「戦後最悪」と呼ばれるほどまでに悪化した。

李氏は日本を「軍事的敵性国家」と呼んだり、尹大統領の親日的な態度を「屈辱的外交」と批判したりしたことで、文氏を上回るラスボス的な「反日強硬」の人物として知られている。だから、日本のメディアは李氏を「反日モンスター」(現代ビジネス)、「反日闘士」(スポーツニッポン)と表現した。
韓国で非常戒厳が宣言されて社会的な混乱が広がったころに、日本人を対象に行われたアンケートでは、「日韓関係に及ぼす影響が懸念される」と答えた日本人は66%に達した。李在明氏は口ではどう言っても、日本のメディアが報じているように、これまで日本に対して厳しい態度をとって支持を集めてきた人物だから、日本人の懸念には合理的な根拠がある。

 

ソウルに住んでいた友人のアメリカ人が出勤中、「なんだアレ?」と疑問を感じたのぼり。日本製品の不買を呼びかけているのを知って、彼女はとても驚いた。

 

李大統領が誕生すれば、日韓関係は文政権の時よりも悪化し、「日本のモノを買わない、売らない、行かない」という“ノージャパン”の悪夢が復活するかもしれない。これが 66%の懸念の中身だ。
ただ、これは文大統領と安倍首相の相性が“最悪”だったことも大きな原因だったから、日韓のトップが変わった今なら、関係が悪化したとしても「戦後最悪」を更新するまではいかないと思われる。

韓国でノージャパン運動が巻き起こった時、一番困ったのは、韓国で日本に関係する仕事をしていた人たちだ。
その1人に、ソウルにある日本企業で働いていた知人の韓国人(30代の男性)がいる。
しかも、彼の会社は戦前からあり、韓国では「戦犯企業」と呼ばれ特に非難されやすい会社だったため、その直撃をもろにくらった。取引先の企業に「こちらまで不買対象にされるから…」と取引を中止されたり、新規の企業には名刺を出しただけで「今はおたくと取引はできません」と門前払いをされたことがある。
この時の韓国では、日本企業で働いて給料をもらう人間を「親日派(裏切り者)」のように見る雰囲気があり、彼は肩身のせまい思いをしたと言う。

そんな文時代の不遇に耐えて、次に尹大統領が登場し日韓関係が改善されると、そんな状況が劇的に変わり春がやってきた。日韓の最大の懸念だった元徴用工問題について、尹大統領が日本が納得できる解決策を発表したことで、自民党の関係者は「日本の要求にここまで応じてくれる韓国大統領はいなかった」と驚いたという。

 

非常戒厳が出て混乱状態が続くなか、今もその日本企業で働く彼に話を聞いてみた。
まず彼の意見では、最近の韓国では物価上昇が止まらないし、尹氏は妻をかばって捜査を邪魔したから、彼は大統領にふさわしくない。それに加えて、する必要のない非常戒厳令を出して国内を混乱させたので、尹氏はその責任を取って逮捕されなければならない。
ただ、19年の不買運動で猛烈な逆風を受けた彼としては、次の韓国のトップが李在明氏になることには不安がある。しかし、また日韓が暗黒時代になって、自分や会社が苦しい思いをすることになったとしても、いまは祖国のことを優先するべきだから、“李大統領”が誕生したとしても、尹大統領が続くことよりはずっとマシ。

自分の利益よりも、1人の韓国民として国を思う気持ちの方が上回ったから、彼はこれから日韓関係が暗転しても、今は尹大統領が「容疑者」になることを願っている。
てっきり、彼は「ノージャパンなんて二度と経験したくない」と考えていると思っていたから、実はまったく違う見方をしていることは意外だった。
韓国で日韓関係は、僕が思っているほど重視されていないのか、尹大統領はそれほどひどい大統領だったのか。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。