リトアニアは北欧の近くにあるバルト三国の一つ。日本との関係では、杉原千畝がカウナスの日本領事館で、ナチスに迫害されていたユダヤ人にビザを発行し、約6000人を助けたことが有名だ。
昨年 12月、静岡の大学に留学していた 30代のリトアニア人男性が、新妻を連れて新婚旅行で日本に来たので、静岡のカフェで彼らと会って話をした。
夫は久しぶりの日本を、妻は初めての日本をどう感じたのか?
ーーこれまで行った場所は、東京・静岡・京都・大阪か。その中で、印象的な都市はどこだった?
妻:印象が強かったのが大阪で、いちばん薄いのが、率直に言うと静岡かな。
ーーだろうね。静岡を愛する県民のボクでも、世界的に有名な東京・京都・大阪のビッグ3と比べると、静岡は場違いだと思う。静岡には 100万人都市はないけど、そこそこの規模はあるから、全国の中では「小物界の大物」って感じかな。
夫:わたしも彼女と同意見で、良くも悪くも印象的だったのは大阪だね。たこ焼きやお好み焼きは本当においしかった。でも、大阪の人たちは、私が知っている日本人と違って、行動が乱暴な感じがしたんだ。
ーーその辺は「人によって違う」というのはもちろんだけど、「食べ物はおいしくて、人はガサツ」というのは、日本人が思う大阪人のイメージと一致している。ボクは京都に住んでいたことがあるけど、京都人と大阪人ではキャラがかなり違う。大阪人のストレートな言動が京都人には雑に感じるらしく、外部から「関西人」とまとめて呼ばれるのを嫌う人が多かった。
夫:大阪人は、日本人よりヨーロッパ人に近いのかな。
ーー個人的には、オーストラリア人に近いと思う。
ーー京都といえば日本の首都だった都市で、たくさんの歴史的な建築物が残っている。リトアニアで京都みたいな古都はある?
夫:それならカウナスだな。カウナスは首都だったこともあるし、古い建物が保存されている地区もある。
ーーなるほど。君はそのカウナスに住んでいたけど、杉原千畝を知らなかったよね?
夫:そうそう。日本に来て初めて、そんな人がいたことを知ったよ。
ーー興味を持つポイントが違うからね。日本では杉原千畝を知っている人が多いけど、リトアニアの首都を聞かれたら、ほとんどの人の時間が止まる。杉原千畝と違って、ヴィリニュスは日本人の誇りを刺激しないから興味を持たれない。
ところで、京都ではお寺や神社に行ったと思うけど、どこが良かった?
妻:いちばん良いと思ったのは…、名前は忘れちゃったけど、小高いところにあるシュラインで、京都の街を一望できるところ。
ーーそれは清水寺だね。
妻:それ! キヨミズデラ。
ーーそこは「シュライン」じゃなくて、「テンプル」なんだけどね。
妻:日本ではいくつか伝統的な建築物を見た。でも、どれがテンプルでどれがシュラインかなんて分からない。
夫「同じく。でも、日本に住んでいたころ、知り合いの日本人も寺と神社の違いがよくわからないと言っていた。初めて日本に来た君に、その区別ができたら奇跡だよ」
ーー外国人に「最後に“じ”がつくのはお寺で、それ以外は神社」って大ざっぱに教えたら、「清水寺」で引っかかった。あそこが「ジ」になっていない理由はボクにもわからない。
*清水寺は、室町時代には「せいすいじ」と呼ばれていた記録があるから、そう呼んでも間違いではない。
夫:わたしが日本に3年間住んでいて、不思議に思ったのがそこなんだ。仏教はインドで生まれ、神道は日本で生まれた全く別の宗教なのに、日本ではごちゃ混ぜになっている。お寺と神社の違いが最後までよくわからなかった。
ーー日本では「神仏習合」と言って、神道と仏教は一体化して、両方を区別しないで信仰してきたからね。明治時代に、政府が神道と仏教を分ける法令を出したことがあるけど、今でも多くの日本人の頭の中では、その二つがごちゃ混ぜになっている。
「鳥居があるのは神社」と覚えていたアメリカ人がいて、彼女が清水寺に行った時、境内で鳥居と稲荷神社を見つけて、「ここはお寺じゃなかったっけ? なんで鳥居があるの?」とワケがわからなくなった。
妻「わたしは神道と仏教の違いなんて意識したことがなかったけど、まったく違う宗教が一つになるというのは、確かに不思議ね」
ーー日本の常識は、世界の非常識ってよく言う。特に宗教のことは、外国人からは変に見えると思う。最後まで、不思議な国を楽しんでくれ。
夫婦:そうさせてもらうわ。
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