東ヨーロッパにリトアニアという小さな国がある。
8割以上の日本人が「どこそれ?」となるような知名度の低いこの国と日本は、実は6千人のユダヤ人を救ったという杉原千畝とカニカマというで縁でつながっているのだ。
そんな国からやって来て、日本の大学に留学していた男性と知り合いになる。
そして彼をたよってリトアニアから友人の女性がやってきて、(コロナ禍が始まる前)一緒に日本各地を旅行したというから、その話を聞いてみた。
ちなみに2人とも20代のリトアニア人だ。
奈良へ行った彼らに日本一デカい大仏の感想を聞くと、「ああソレね、見てないんだ。どんな仏像なんだ? 」と聞き返されてビックリした。
2人はネットにある外国人の意見を参考にして、奈良公園の鹿と遭遇(そうぐう)することを一番の目的に奈良へ行ったから、結果的に東大寺も春日大社も、五重塔で有名な興福寺もすべてスルー。
その時は京都からの日帰り旅行でまず電車で奈良まで移動し、まっすぐ公園へ向かって迷わず鹿せんべいを買う。
そして鹿の群れに囲まれたり、追いかけられたりする様子をもう1人が写真や動画に撮って、思いきり鹿とたわむれた後、公園の緑を楽しみながらゆっくり散歩をしてたら、夕方になったからそのまま京都へ戻った。
おいしそうにせんべいを食べる鹿を見てたら、2人も食べてみたくなって口に入れてみたけど特に味はしなくて、やっぱり鹿と人は生物として違うと思ったらしい。
法隆寺や薬師寺はちょっと離れているからシカたないとしても、奈良公園に行って、すぐ近くにある東大寺・興福寺・春日大社の3つをすべてスキップしたというのは、個人的には有り得ない旅行プランだ。
でも、彼らはその一点集中に満足していて「わが奈良旅行に一片の悔いなし」という状態。
逆にいえばそれだけ奈良公園、というか奈良の鹿たちがこのヨーロッパ人には魅力的だったということになる。
ユーチューブで見たとおり、自分に近づいてきた鹿にせんべいを見せると、ひょこんと頭を下げてパリパリ食べる様子を見て撮ることができただけで、彼らには奈良まで来た価値があった。
欧米人からすると、日本人を象徴する動作といえばやっぱり「おじぎ」らしい。
イチローさんが握手をしようと手を伸ばすと、大谷選手は握り返す前に頭を下げる。
こんなレジェンドが相手なら、まずおじぎをして敬意を示してから、握手をするのは日本人にとっては自然なことだ。
大谷選手のおじぎを見たアメリカ人はこう思った。
・I think it’s cool because even tho it may “just be a sign of respect”, respect is something that’s becoming increasingly lost to American culture…. And I’m American
私はアメリカ人ですが、「単に尊敬のサイン」であってもそれはクールだと思います。
尊敬の念は、アメリカ文化から無くなる一方ですから。
・I would say it’s more than becoming lost. Respect is seen only from those families that have been raised to respect good family values, a rarity today.
いまのアメリカでは、「失われつつある」という段階を超えているでしょうね。尊敬の念は現代ではマレで、良い家族の価値観を尊重するよう育てられた家庭でしか見ることができません。
アメリカだけでなく、きっとヨーロッパでも「尊敬の文化」は失われつつある。
日本では人間だけでなく鹿もそれをしている(ように見える)から、外国人にとってはとてもユニークに感じるはず。
なら、奈良公園だけで満足するリトアニア人がいてもおかしくない。
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