ネットをサーフィンしていると、日本を旅行したアメリカ人がある食べ物を大絶賛したという記事を見つけた。その日本食とは Sushi。
「アメリカ人が日本ですしに感激した」なんて情報はもうおなかいっぱいで、中身スッカスカの記事だなと思ったら、それなりの理由があった。
このアメリカ人が感動したのは、味だけではない。職人が一つ一つのすしについて説明し、どんな食べ方をすればいいか丁寧にアドバイスをしてくれた。
すしの奥深さに触れることができたから、このアメリカ人は「最高だった!」と思ったという。
「神は細部に宿る」という言葉がある。
米粒にまでこだわるのが日本のすし職人だ。
さて、最近、日本で英語を教えていて、今は母国に戻ってジョージア州に住んでいるアメリカ人女性と話をしたので、これからその内容をシェアしようと思う。
テーマは「衛生観念」だ。
ーーSNSを見ていたら、アメリカに住んでいた日本人が現地の衛生観念にびっくりしたというポストを見つけた。アメリカ人がトイレの床にバッグやコートを置いたり、テーブルの上にパンを「直置き」したりするのを見て、日本人の感覚からかけ離れていたから、彼はドン引きした。映画では、トイレの床で人が寝そべっているシーンを見たらしい。
これってアメリカでは一般的なことなの?
何を汚い/セーフと思うかは国籍じゃなくて、個人によって違うから、わたしの感覚で答えるね。パンをお皿にのせず、テーブルの上に置くのはまったく問題ない。ヨーロッパでは、新聞紙に包んだパンを持って街を歩く人がいる。
ーーあ〜、ドラマで見たことある。それが普通の感覚なんだ。
トイレについては、公衆か自宅かによって違う。アメリカの公衆トイレは、新しいものならきれいだけど、全体的には汚いし臭いから、そこにバッグや服を置くことはしない。常識的に他の人もしないと思う。
でも、自分の家のトイレならアリ。
ーートイレの床に置いたバッグをテーブルの上に置くのは?
それもアリ。わたしは意識しないでやってる。
ーーボクの感覚だと、それを知ったら引く。日本人のカップルなら、別れる一因になるかもしれない。
ところで、アメリカの公衆トイレってそんなにひどいの?
日本に住んでいた時、とっても快適だったのは都市でも地方でも、公衆トイレがどこもキレイだったこと。それに、アメリカと違って、壊れて使えないトイレに遭遇したことがない。
トイレの清潔さは世界の中で日本が飛び抜けているだけで、アメリカが特別ひどいということもないと思う。
ーーなるほど。これは10年ぐらい前、上海で日本語ガイドから聞いた話。
いま上海はすごく発展していて、東京や大阪に比べても負けていないか、ちょっと未来を進んでいる。でも、トイレはすごく遅れている。デパートの中は壁も床もピッカピカで清潔だけど、トイレだけは汚いし臭い。だから、ガイドは日本人は隅々まで手を抜かないから感心すると言っていた。
それはアメリカ人も同じ。日本へ行くと、細かい所にまで配慮が行き届いているから感心する。
ーー神は細部に宿るし、神道の神さまは隅々にまでいるからね。
「The devil is in the details(悪魔は細部に宿る)」って知ってる?
ーーもちろん。でも、それを説明する名誉は君に譲るよ。
簡単にできるように見えても、実際にやってみると、実は細部にいろんなトラップがあって苦戦するっていう意味。
ーーなるほど。「もうここまでできたら、あとは楽勝だ」と思って次の日に回すと、悪魔が潜んでいることに気づく。そんなことは確かによくある。勉強になった。
それはともかく、アメリカ人はトイレではトイレ用のスリッパを使う?
そんなの見たことない。家の中でも靴を履いている人はそのままへトイレに行くし、玄関で靴を脱ぐ人は靴下や裸足のままトイレを使うから。
ーートイレと他の部屋を区別しない?
しない。
わたしは同じスリッパで、トイレにもキッチンにも寝室にも行くから、家の中で履物を変えることがない。
ーーそのアメリカンな感覚は嫌だな。
そういえば、日本のトイレには、必ず専用の履物が用意されていたっけ。いちいち履き替えるのが面倒くさかった思い出がある。アメリカ人ならスルーして、そのままトイレを使うと思う。
知らない人とスリッパを共有するのって、なんか気持ち悪くない?
ーーまぁ、その気持ちは理解できなくもない。
それで思い出した。日本に住んでいたアメリカ人がパーティーに誘ってくれて、彼のアパートで飲み食いして、トイレに行ったとき、スリッパがなくて困った。
トイレの床って、他に比べてそこまで汚いかな?
*日本人を対象に、家にトイレスリッパを置くかどうかを尋ねたアンケート調査をいくつか見ると、どれも半数かそれ以上の人が「置かない」と回答していて驚いた。知らない間に、日本人のアメリカ人化が進行していたらしい。
ーー今ネットを見たら、アメリカの衛生観念に衝撃を受けた日本人がまたいた。友人のアメリカ人が犬や猫の食器を家族の食器と一緒に洗っていると知って、彼はとても驚いたらしい。
それも人による。私の夫は、平均的なアメリカ人よりも衛生観念が高い人で、猫の器と家族の食器は分けて洗っている。でも、もし機械で洗うのなら、一緒にしても私は気にしない。
ーー犬の唾液には病原菌が含まれていて、感染症を引き起こす可能性があるらしいから、人の食器とは別のスポンジを使って洗う必要があるんだって。
へ〜、知らなかった。でも、アメリカでは気にしない人が多そう。
後日談
今回の話で、日本人とアメリカ人の衛生観念の違いについて興味が湧いたから、ネットで調べてみた。すると、アメリカに引っ越した日本人が、お客さん用のスリッパを買いに行ったところ、どこにも売っていなくて「なんで?」と不思議に思ったという話を発見。
理由は簡単で、アメリカでは需要がないから。
靴を履いたまま家に入るか、玄関で靴を脱いだ後、靴下か裸足のままでいるから、スリッパは必要ない。売れないものを置く店はない。その日本人はダイソーで、お客さん用のスリッパを見つけることができたと喜んでいた。
まぁ、それを買ったところで、日本人以外の人が履くかどうかわからないけど。
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