知人のアメリカ人女性はポーランド出身で、高校生のころに日本のキャラ弁を見て、「なにこれカワイイ!」と衝撃を受けた。
その出会いがきっかけで、日本に興味を持ち、日本語を学ぶようになる。
その後、日本へやってきて、3年間ほど小中学校で英語を教えていた。
いまは母国に住んでいる彼女と話をしたから、今回はその内容をシェアしよう。
ーー最近SNSで、日本に住むアメリカ人が「日本の食べ物は健康的でおいしい。でも、朝食はしょっぱくて好きじゃない」と言いやがりました。
あなたも日本に住んでいた時、そんなことを思いやがりましたか?
いや、私はそんなことを感じなかったけど、その人の気持ちはわかる気がする。
日本の朝ごはんって、ご飯とみそ汁、それと焼き魚・納豆・のり・漬物といったものが鉄板でしょ?
でも、アメリカの朝食のメニューには、シリアル、ワッフル、パンケーキみたいな甘い物が多い。
だから、日本にいた時、友だちのアメリカ人も「しょっぱい朝食」に違和感を感じるって言ってた。
ーーこの感覚は慣れの問題デスかね。
「しょっぱい朝」って響きはなんか元気がなくなりますが。
アメリカ人は朝食で、やっぱりコーヒーを飲むんです?
そう。
アメリカ人はコーヒーをよく飲む。
ヨーロッパでは紅茶を飲む人が多いから、ほとんどの家庭に電気ケトルがあるけど、アメリカでそういう家は少ないと思う。
ーーなるほど。
アメリカでは1773年に、大量の紅茶を「どりゃっ」と海に投げ捨てるボストン茶会事件があって、それがきっかけでコーヒーが主流になったという説もありますね。
あ、そうなの?
ーー知らんのかい。
ーーアメリカはコーヒーの文化が盛んですけど、缶コーヒーは日本で生まれたらしいです。
*UCC創業者・上島忠雄が1969年に、世界初のミルク入り缶コーヒーを誕生させたと「UCC コーヒー博物館」のホームページに書いてある。
言われてみれば、私が初めて缶コーヒーを飲んだのは日本だった。
アメリカだと、「コーヒーはゆっくり座って飲むもの」ってイメージがあるけど、持ち運びができる缶コーヒーは忙しい日本人らしい発明かも。
日本のコンビニやスーパーでは、缶コーヒーの種類がたくさんあって、質も高いからよく飲んでいた。
ーーアメリカでは缶コーヒーが少ない?
日本に比べたらね。
ヨーロッパもそうだけど、そもそも自動販売機が少ない。
でも、最近はアメリカでも、缶コーヒーが増えてきた。
アメリカでは、あるカフェが人気になると、そのカフェが店のコーヒーを缶コーヒーにして売り出すことがよくある。
だから、缶コーヒーにはなんかオシャレなイメージがある。
私としては「ブルーボトルコーヒー」の缶コーヒーが好き。
ーーその流れは日本とは逆みたいですねー。
日本だと、サントリーやコカ・コーラなどの飲料会社が缶コーヒーを販売していて、最近になってから、有名なカフェが自前の缶コーヒーを出すようになった印象があります。
そうなの?
こっちでコカ・コーラ社の缶コーヒーは見たことない。
*は初耳だったから、ちょいと調べてみた。
日本のコーヒー文化の影響を受けたアメリカ人によって、2002年にサンフランシスコでブルーボトルコーヒーが誕生。
彼は日本の喫茶店を参考にして、一杯ずつコーヒーを作って客に提供していた。
当時のアメリカ人にとっては、それは新しいスタイルだったから、はじめは不思議に思われたらしいが、じょじょに人気が上がっていた。(ブルーボトルコーヒーとは)
また、冷たいコーヒーを飲む習慣がなかったアメリカで、「京都/Oji」というアイスコーヒーをメニューに加えたという。
ーーところで、あなたは日本にいた時、どんな缶コーヒーが好きでした?
ジョージアコーヒーの無糖をよく飲んでた。
でも、あれって面白いよね。
ーーというと?
だって、ジョージアに「ジョージアコーヒー」なんて無いんだもん。
ーーえ?
日本で「ジョージアコーヒー」って超有名なんですけど、ジョージアには存在しない?
存在しない。
いま現在進行形で、ジョージア州に住んでる私が言うんだから、間違いない。
ーーじゃあ、なんでブランド名が「ジョージア」なんだろう?
ジョージア州には有名なコーヒー豆がある?
そんなものは無い。
ージョージア州には、独自のコーヒーの作り方があるとか…
それも聞いたことない。
*調べてみたら、コカ・コーラ社の本拠地がジョージア州のアトランタにあったから、日本コカ・コーラがそれにちなんで「ジョージアコーヒー」のブランドを作ったことが発覚。
だから、ジョージアの人たちが「ジョージアコーヒー」なんて知るわけない。
ーーナポリにはないナポリタン、天津には存在しない天津飯、トルコ人の知らないトルコライスなどなど、日本にはそういうのが多いんですよ。
そうそう!
日本は面白いよね〜。
ーージョージアの人間として、「ジョージアコーヒー」って名前はどう思う?
特に何も。
おいしくて安いコーヒーならそれでいい。
「アメリカのカルフォルニアロールは寿司じゃない!」とか言われるほうがイヤ。
ーーそりゃそうだ。
自分たちは勝手な物を作り出して、国名や地名まで使っているのに、「日本食の魔改造は許さん!」って怒るのは、外国人にはなかなか通用しないだろうね。
後日談
知人の近ごろのお気に入りは、「コメティア」の冷凍コーヒー。
コーヒーを最もおいしい状態で凍らせておくことで、それを溶かせば、いつでも最高のコーヒーを飲むことができる。
自分でコーヒーを作ると、その時々で味が微妙に変わるけど、冷凍コーヒーはいつも安定しておいしく飲めるらしい。
コーヒーを瞬間凍結する発想は、日本人には思いつかなかった。
コーヒーとお茶の共通点:聖職者(イスラム教と仏教)の眠気覚まし
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