日韓の地雷には、大きく歴史問題と領土問題の2つがある。ここでは竹島(韓国名は独島)を取り上げよう。
つい最近も、日本で竹島を「日本固有の領土」と記した高校教科書が文部科学省の検定を通過すると、韓国ではこんな反発の声が上がった。
聯合ニュースの記事(2025/3/31)
教科書の独島記載で日本に抗議 「露骨な歴史歪曲」=韓国市民団体
「竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに日本固有の領土」という日本の主張は、韓国では真実を歪(ゆが)めていることになる。
この領有権問題はとてもデリケートで爆発しやすく、しかも強い破壊力があるから、日本人と韓国人が楽しく交流するときには絶対に触れてはいけない。
しかし、「世界あるある」だ。
海外の多くの国が領土問題を抱えているし、関係する国民の間ではその話題はタブーになっている。
竹島(独島)と韓国旗がデザインされたのり
日本の街中で竹島の写真を見た記憶はないが、韓国では本当に身近なところにある。
数年前、友人のイギリス人女性がオーストラリアへ行き、一年間働きながら暮らしていた。彼女が住んでいたのはシェアハウスで、同じ世代のフランス人とアルゼンチン人の女性が住んでいて、一緒に遊びに出かけて、楽しい思い出をたくさん作ることができたと喜んでいた。
でも、アルゼンチン人の女性には、イギリス国民に聞いてみたいけれど、結局、最後まで口にできなかったトピックがあるということを、彼女は後でフランス人から聞かされた。
それは、1982年のきょう4月2日に始まったフォークランド諸島をめぐる紛争について。
これはイギリス側の呼称で、アルゼンチンでの名称は「マルビナス諸島」になる。日韓も同じで、両国で同じ呼び方をしていたら、そもそも領土問題なんて発生しない。
イギリスからフォークランド諸島までの距離は約13000 kmで、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスからだと約1900kmしかない。フォークランド諸島はイギリスから遠く、アルゼンチンの近くにあるため、第三者が地図だけを見ると「これをイギリス領と主張するのは無理筋では?」と思ってしまう。
フォークランド諸島は18世紀にスペインが領有することになったが、1833年にイギリスが占領し、以来、イギリスの海外領土とされた。
しかし、1816年にアルゼンチンがスペインから独立すると、スペインの領土を継承すると主張し、イギリスに対してフォークランド諸島の返還を求めた。(これも無理筋では…)
それから両国は、「マルビナス諸島を返せ!」→「だが断る!」のループを何度も繰り返す。
フォークランド諸島に住む人たちはどう思っているのか?
1967年意思確認をしたところ、全員かほぼ全員がイギリスを選び、アルゼンチン領になることを望む島民はいなかった。
その後も返還交渉はおこなわれたが、両国の主張はいつも平行線をたどって終わり。それで、ついにアルゼンチンが武力侵攻を決意した。
1982年4月2日、アルゼンチン軍の部隊が上陸してフォークランド紛争が始まる。このとき、イギリス軍が降伏し、戦闘はいったん終結する。しかし、アルゼンチン軍は本気モードになったイギリス軍に勝つことができず、6月にはイギリスの勝利で終わった。サッチャー首相の人気は急上昇し、彼女は翌年の総選挙で圧勝。一方、アルゼンチンでは、ガルチェリ大統領が敗戦の責任を問われ、大統領と陸軍総司令官を解任された。
この戦争でイギリス側には255名、アルゼンチン側では649名の死者が出た。
1989年、アルゼンチンとイギリスは敵対関係の終了を宣言し、翌1990年には外交関係を回復した。もちろん、現在も両国は「フォークランド(マルビナス)諸島は俺のものだ!」と主張し合っている。
その間、1986年に開催されたサッカーW杯で、イングランド代表とアルゼンチン代表が準々決勝で激突した。結果は、マラドーナの活躍もあって、アルゼンチンが勝利を収める。国交断絶中の試合の緊張感はちょっと想像できない。
「リベンジ」を果たしたアルゼンチン国民は歓喜雀躍したが、マルビナス諸島を永遠に失ったという現実と向き合うと、冷めてしまったかもしれない。
話を戻すと、アルゼンチン人女性は、マルビナス諸島を学校で「イギリスに奪われた」と習い、そう認識していた。しかし、戦後に生まれた彼女にとって、今さら武力侵攻というバカ選択はありえない。アルゼンチンは貧困、インフレ、高い失業率などさまざまな問題を抱えているから、あんな小さな島々を奪い返すために、貴重な時間や人的エネルギーを使うことはできない。
それでも、イギリス人の見方が気になる。彼女と仲良くなったから、直接聞いてみようかと何度か思ったけど、結局その勇気が出なかった。一方、イギリス人の彼女はフォークランド諸島には関心がなく、個人的にはアルゼンチンにプレゼントしてもいいと思っていた。
この話を日韓の竹島問題に重ねると、立場的には日本とアルゼンチンは同じで、自国領を主張する島は相手に実効支配されている。しかし、国民感情では、韓国人とアルゼンチン人が同じで、この問題に強い関心を持っていて、相手の意見を聞きたいと思っている。一方、日本人はイギリス人と同じように、この問題に対する関心は低く、反応も薄い。
ただし、イギリスとアルゼンチンが教科書の記載をめぐって、市民団体が相手国に「露骨な歴史歪曲」と抗議することはない。
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