今はセントレア空港の中にいる。
大連(中国)へのフライトチケットは手に入れた。
でも、出発にはまだ時間がある。
ということで、最後のご飯を食べに行こうと思う。
日本での最後の晩餐(ばんさん)といったら、やっぱり日本食じゃね。
なるべく日本的で安いものがいい。
ということでおにぎりに決定。
さっそくセントレア空港にあるコンビニへとむかった。
余談だけど、おにぎりとおむすびの違いって知ってます?
以前、日本にいるイギリス人からそんな質問をされて困ってしまった。
どっちも同じものだけど、一般的には東日本で「おにぎり」、西日本では「おむすび」と言われることが多いとか。
前回、日本の食文化である「おにぎり」について書いた。
日本の食と歴史にくわしい樋口清之氏によると、日本人がおにぎり(にぎり飯)をつくりだした理由は米の保存にある。
米を腐敗から防ぐために、にぎり飯が生まれたという。
それを防ぐために生まれたいちばん素朴な方法が、‘握り飯’である。握り飯をつくると、外側は空気に接触するから、かびが生えたりするが、中は腐らない。
そこで、握り飯の表面に発酵作用を止める塩をまぶしたり、ミソで包んだり、あるいは焼いて表面を炭化させておく方法を考えついた。
「梅干と日本刀 樋口清之」
この考え方の延長に「お餅(もち)」がある。
つまり、にぎり飯と餅は同じ考え方から生まれているという。
タイ人に話を聞いたら、タイでは昔、米の腐敗を防ぐためにバナナの葉っぱにくるんでいたという。
う~んタイっぽい。
中国や韓国(朝鮮半島)でも、人々は昔からお米を食べていた。
でも、おにぎりをつくって食べるという食文化は生まれなかった。
ちなみに「米俵」という文化のある国は世界で日本だけ。
この前、おにぎりについての中国人の見方を紹介した。
ということで今回は、「韓国人から見たおにぎり」ってのを書いていきたい。
トッポギは韓国人にとって、とても身近な食べ物。
日本のおにぎりのような存在だと思う。
今の韓国のコンビニでは、「三角キムパプ(三角おにぎり)」が売られている。
でもこのように、コンビニ商品におにぎりが定着したのは2000年ごろからだという。
だからけっこう新しい。
でも韓国には、その前から「チュモクパプ」や「キンパプ(キンパッ)」という食べ物はあった。
チュモクパプ
チュモクパプとは「チュモク(にぎりこぶし)+パプ(ご飯)」のこと。
「ビビン(混ぜ)+パプ」だと、ビビンバ(混ぜご飯)になる。
キンパプはご飯をノリで巻いて食べるという食べ物で、日本でいうのり巻きのこと。
キンパプは、もともと日本から朝鮮半島につたわった食べ物だ。
日本の海苔巻きに由来し、日本との行き来が盛んになり始めた19世紀末から韓国でも日本の海苔巻きが食べられ始め、韓国併合以降の韓国半島で、ごま油を使うなどのアレンジが加えられ派生したものである。
(ウィキペディア)
だから韓国でも以前はキムパプとは言わず、「ノリマキ」という日本語をそのまま使っていた。
でも、日本の統治から解放された後に事情が変わる。
日本語の「ノリマキ」ではなくて、「キムパプ」という完全な韓国語で呼ばれるようになり、今ではそれが定着している。
韓国人のなかでも、キンパプが日本のノリマキだったことを知らない人は多いと思う。
でも、韓国ののり巻きは日本のものとは違う。
韓国では酢を入れないで、代わりにのりにゴマ油をぬるのだ。
韓国人はゴマ油が大好きだからこうするらしい。
日本ののり巻きに独自の変化をくわえることによって、キンパプになったわけだ。
ソウルの広蔵市場(カンジャンシジャン)。
韓国の庶民っぽさが感じられる場所。
ソウルの広蔵市場には、「麻薬キムパプ」という有名なキムパプがある。
麻薬のように、一度口にしたらやめられなくなる。それほどおいしいキムパプということらしい。
でも友人の韓国人に言わせると、今ではそれほど有名でもないらしい。
「最近では、おいしいキムパプがたくさんありますからね。麻薬キムパプも悪くはないですけど、大したことないです」
と切り捨てる。
それにしても、食べ物の名称に「麻薬」という言葉を使うところが日本人の感覚とは違う。
見た目は普通のキンパブと変わらない。
キンパプ
ということで、韓国には日本のような三角おにぎりはなかったけれど、チュモクパプやキムパプという食べ物はあった。
じつは韓国でおにぎりは嫌われていたのだ。
米に対する感覚は中国人と同じで、「冷たいご飯は食べたくない」という思いは韓国人も持っていた。
それに韓国では、おにぎりに対して悪いイメージもあった。
ウィキペディアから。
中国や朝鮮半島では「炊いた飯は温かい状態で食べるもの」という意識が強く、おにぎりなどの冷や飯というものに対し「施しを受けた下賤な者が仕方なく食べる物」「やむを得ない場合の携行食」といった悪いイメージが強く根付いており
「下賤な者が仕方なく食べる物」ってのもひでーな。
でも、韓国に精通したジャーナリストの黒田勝弘氏も、コラムでこう書いている。
オニギリを意味する「チュモクパプ(つまり、げんこつ飯)」では絶対に売れない。「チュモクパプ」は下品(?)で貧しさと非常食のイメージを抜け出せないからだ。
韓国では、おにぎりについて「下品で貧しい」というイメージがあったらしい。
ここが日本とは違う。
韓国社会では、チュモクパプに対して「下品で貧しい」という悪いイメージが定着していた。
それでも韓国のコンビニでおにぎりを売ろうと考えた人(日本人かも)が、「チュモクパプ(げんこつにぎり飯)」という名称を「三角キンパプ(のり巻き)」にして売り出したという。
するとこれが大受けして、今に続く韓国でのおにぎり人気につながる。
続きは次回に。
おまけ
ソウルの庶民市場
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