沖ノ島と富士山にみる日本の女人禁制。理由は神道にアリ?

 

沖ノ島が世界遺産に登録されることが決まった。

日本で「海の正倉院しょうそういん」や「神宿る島」とも呼ばれるこの島が世界からその価値を認められたことになる。
すばらしい。

沖ノ島では、弥生時代の青銅器や大陸でつくられた純金の指輪など数多くの貴重な品が発見されている。
この島で見つかった8万点もの品が国宝に指定されているという。

沖ノ島はまさに海に浮かぶ正倉院だ。
念のため、正倉院とはこんな宝物庫のこと。

正倉院

奈良・平安時代の役所などで、重要な物品が納められた倉庫を正倉[しょうそう]と言いますが、その正倉がいくつか集まった場所を正倉院と言います。現在では東大寺に1棟残っているだけなので、東大寺の正倉を正倉院と言っています。

防府市歴史用語集の解説

「海の正倉院」は長崎県と山口県の真ん中あたりにある。

 

なんで小さな小さな沖ノ島で、それほどたくさんの貴重品がみつかったのか?

それは、この島が「神宿る島」と呼ばれていることと関係している。
この神の島に人間が近づくことは簡単ではない。
上陸する前には必ずみそぎをしなければいけないし、この島にある物は一切、外に持ちだすこともできない。

宗像大社の公式ホームページにはこう書いてある。

沖ノ島は玄界灘のほぼ真ん中に浮かぶ絶海の孤島です。その中腹に、 田心姫神(たごりひめのかみ)を祀る
沖津宮が鎮座し、辺津宮より 神職が10日交代でたった一人で奉仕しています。

住人はなく、女人禁制、上陸時の海中での禊、一木一草一石たりとも持ち出すことは禁ずるなどの掟が、
いまでも厳重に守られている神聖な島です。

沖津宮

このなかの「女人禁制」というところに注目してほしい。
この島に女性が入ることはできない。

そのため、「沖ノ島の女人禁制は現代の価値観に合っているのか?」ということが問題視されたことがある。

このことについて女性権利団体などから抗議の声が上がり観光業界でも懸念が広がった。

「ウィキペディア」

なぜ沖ノ島は女人禁制女性なのか?
その理由には諸説ある。

よく言われることは、この島の神である田心姫神(たごりひめのかみ)は女性で、「他の女性が来たら嫉妬するから」というもの。
こうした神道の考え方から女性の立ち入りを禁止しているところは他にもある。

 

時々、日本で女人禁制という神道の考え方が話題になる。

2000年には女性の大阪知事が相撲の土俵に上がろうとしたけれど、それを拒否された。
ウィキペディアから。

大相撲の優勝力士に贈る大阪府知事賞の贈呈を巡り、女人禁制の土俵に知事自らが上がりたいという意向を示したが、日本相撲協会に拒まれた

太田房江

 

今の日本には「山ガール」なんて言葉がある。
そんな現代からは考えられないけれど、富士山もむかしは女人禁制だった。
だから女性は富士山に登ることができなかった。

 

富士山に初めて女性が登ったのは江戸時代(1832年)で、「たつ」という女性だったと記録されている。
女人禁制を破って登ったのだから、今でいえば不法登山になる。
たつは女性であることが気づかれないように、男装して登っている。

ただ、女性は富士山に一切登ることができなかったわけでもない。
2合目にある御室浅間神社までは登ることができた。

このことについては、「富士山NET」にくわしく書いてある。

 

富士山の女人禁制の理由はなにか?

これもよく言われるのが沖ノ島と同じで、「富士山の神は女性で嫉妬するから」というもの。

富士信仰に基づいて富士山を神格化した浅間大神(浅間神)、または浅間神を記紀神話に現れる木花咲耶姫命(このはなのさくやひめのみこと)と見てこれを祀る神社である。

「ウィキペディア」

女性が登ると、この木花咲耶姫命(このはなのさくやひめのみこと)という女性の神様が怒ると考えられていた。
この他にも、神道の考え方で女性を「不浄」と見なしていたから、というものもある。

 

インドのヒンドゥー教徒はガンジス川で沐浴をする。
このガンジス川の神様も富士山や沖ノ島と同じく「ガンガー」と呼ばれる女神だ。
でもこの女神ガンガーが女性に嫉妬するなんてことは聞かない。
女性の沐浴は問題なく認められている。

 

 

富士山の女人禁制は1872年(明治5年)に解かれている。
この禁が解かれた背景には明治日本の西洋化があった。

江戸時代、日本人が富士山に登っていた理由は信仰によるものだった。
でも、日本が開国して西洋の考え方を受け入れると、日本人の考え方も変わっていく。
富士山登山の理由が信仰からは娯楽やスポーツへと変わっていった。

ちなみに、初めて富士山に登った外国人はイギリス人のオールコックという人。
1860年に初登頂している。

 

今からしたら、1832年に「たつ」が男装して富士山に登ったというのは「マメ知識」でしかない。
でもこの当時の日本人にしてみたら、たつ女人禁制を破った「重罪人」と思われただろう。

もし平成の今、ある女性が男装して沖ノ島に入ったとしたら、激しく非難されるはず。
*もちろんそれは不可能だろうけど。
けれど200年もたてば、そんなことはマメ知識になっているかもしれない。

でも、信仰は守っていくべきだ。
今は明治時代ではない。
日本はすでにいろいろなところが変わっている。
神道の信仰の仕方を変えるよりは、守っていったほうがいい。

日本古来の信仰を守り続けてきた結果、沖ノ島は世界からその価値を認められたのだから。

 

それと、日本の社会には「男性禁止」がけっこうある。
イギリス人とフィリピン人の友人は、「男性お断り」のプリクラ店を見てとても驚いていた。
アメリカ人の友人は東京で女性専用車両を発見して、「日本にはこんなものがある!」とSNSで発信している。

パキスタンやエジプトなどの国ではイスラーム教の考方えから、公共の乗り物が男性と女性とで分けられていることはある。
でも、痴漢から身を守るため、という理由で女性専用の車両がつくられた国は世界でも珍しい。

 

沖ノ島に入ることはとてもむずかしい。
だから映像で楽しもう。

神宿る島 沖ノ島2/2(日本語版) – YouTube「munakatakao 」から。

 

 

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2 件のコメント

  • 昔の記事のようですがどうしても気になる点があるのでコメント失礼します。
    プリクラの男性立ち入り禁止は侵入して盗撮する犯罪者を防止するために店が設けている事が多いです。女性専用車と背景は同じですよ。
    企業が行なっている、女性客が性被害に合わないようにするための予防策を引きあいに出して「男性禁止もあるからね〜」と女性蔑視と同列に扱うのは違うと思います。

  • コメントありがとうございます。
    それは初耳だったので調べて見ましたが、店側がカメラを仕込んで盗撮していた事件ぐらいしか見当たりません。
    これはどこで確認できるでしょうか?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。