日本と韓国社会の違い。歴史認識の問題で表現の自由がない。

「表現の自由」という考え方は民主主義で最も大事な要素で、現在では世界各国で尊重されている。
この考え方は、フランスの啓蒙思想家のヴォルテールの言葉によく表れている。

「君の意見に賛成できないが、君が意見を述べる権利は死んでも守る。」

この観点から韓国社会を見てみると、大きなため息が出てしまう。
最近も映画『軍艦島』に出ていた女優の言葉が問題になった。

この映画については、内容が歴史の事実とかけ離れていることから、日本では多くの批判の声が上がっている。
軍艦島の元島民が「歴史の真実を伝える」と動き出しているし、日本政府の官房長官も「この映画は創作物だ」と一蹴した。

しかし、韓国でそんな声はほとんど出てこない。
日韓の歴史問題については、「日本側が悪い、間違っている」ということが韓国では常識的になっているから、内容がその空気に沿っていれば、事実や正確性はあまり問題にならないのだ。

そんな社会で『軍艦島』に出演した女優が、こんなことを言って注目を集め、すぐにぶっ叩かれた。
Record chinaの記事（2017年7月28日）

「『日本が無条件に悪い』と言っていないので気に入った。実際の歴史をみても、朝鮮人が同じ朝鮮人をだましてもいたので。歴史的事実を軸に映画的ストーリーを加味した点がとても良かった」

韓国映画「軍艦島」の慰安婦役女優が「日本＝悪ではなかった」と発言

「朝鮮人が同じ朝鮮人をだましてもいた」や「日本が無条件に悪くはない」という歴史認識は、たとえ事実であっても、韓国の国民感情を逆なでする。
この発言に韓国のネットでは怒りが爆発した。

「おいおい！日本は無条件に悪いんだよ。それが分からないなら日本に行って暮らせ」
「狂ってる。絶対見ないぞ」
「本当に韓国人？被害者に申し訳ないと思わないの？」
「これに問題を感じない人は全員親日派だ」

とはいえ、韓国には日本との関係を考え、過剰な愛国や反日を批判する人もいるから、この女優の発言を支持する声も一部ではある。
しかし、ほとんどはこの言葉に感情的に反発し、「これに問題を感じない人は全員親日派だ」とレッテルを貼り、「歴史問題では日本が一方的に悪い」ということ以外の言葉を封殺している。
ヴォルテールの精神とは正反対。

以前、ある韓国の教授が反日的な空気に逆らい、「日本軍による強制連行はなかった」と事実を述べたところ、公衆の面前で殴られ、「公開リンチ」を受けてしまった。
この動画にその様子がある。

乱闘場になった教科書フォーラム

慰安婦問題については、日本でもいろいろな考えがあるが、「意見を表明したら、公の場で集団暴行を受けた」という反民主主義的なことは起こらない。
深刻な問題は、韓国でこの出来事がほとんど問題視されなかったことだ。
日本と韓国とでは、表現の自由の考え方が根本的に違うということか。

先ほどの女優は「日本が無条件に悪くはない」とよく言ってくれたと思うが、この後の不安も大きい。
韓国で歴史認識を問題視された芸能人は、厳しい制裁を受けることになるのだ。
あるアイドルはテレビ番組のクイズコーナーで、「安重根（アンジュングン：あんじゅうこん）」の顔写真を見て、「豊臣秀吉」と言ってしまった。
その後、批判が殺到し、アイドルは泣きながら公開謝罪した。
まぁ、韓国の英雄を豊臣秀吉と間違えるというのは確かにひどいが。

中央日報の記事に、そのアイドルは涙の謝罪文が掲載されている。（2016/05/13）

メディアに姿を見せる芸能人としてかえってふざけているような姿勢で多くの方々の眉をひそめさせたことを心より謝罪申し上げます。申し訳ありません。

いかなる弁解も私の過ちを覆うことはできないでしょう。
今回のことをきっかけに私は無知こそ最も大きな過ちであることを学びました。
心より謝罪申し上げ、深く反省致します。

私は今後、芸能人としてではなく大韓民国の国民として恥ずかしくない歴史観を持つために最善の努力を尽くします。もう一度私の過ちを心より謝罪申し上げます。申し訳ありません。

ＡＯＡジミン、安重根発言物議で謝罪「無知こそ最も大きな過ち」

日本では考えられない事態だ。
歴史クイズでアイドルがどう間違ったとしても、「日本国の国民として恥ずかしくない歴史観を持つために最善の努力を尽くします」なんて謝罪文を書かされることにはならない。
大韓民国の国民として正しい歴史観は一つしかないから、それと違うことを言うと、「心より謝罪申し上げます」と追い込まれる。
韓国では歴史認識については、表現の自由が守られているとはとても家ない。

おまけ

「君の意見に賛成できないが、君が意見を述べる権利は死んでも守る」と言ったヴォルテールは、こんなことも言っている。

「歴史は自由な国においてのみ真実に書かれうる。」