いま多くの日本人が北朝鮮に不安を感じている。
最近の北朝鮮の動きを見ればそれは仕方がない。
北朝鮮は弾道ミサイルを発射して、それが日本海に落ちている。
それで日本各地で、北朝鮮のミサイル攻撃にそなえた訓練がおこなわれるようになった。
さらに北朝鮮は核開発も進めている。
こうした現状で不安を感じないという日本人がいたら、大物か今何が起きているのか分かっていない人だろう。
7月23日のFNNニュースによると、北朝鮮についての世論調査で「不安を感じる」と答えた人が92.1%。
「不安を感じない」と答えた人(6.8%)の約14倍になる。
軍事的挑発を続ける北朝鮮に対して、日本はどのように対応したらいいのか?
多くの人が対話よりも「圧力をかけるべき」と答えている。
アメリカと北朝鮮が軍事衝突する可能性を懸念しているかどうかについては、「懸念している」と答えた人は、7割(73.8%)、「懸念していない」は、2割(22.7%)だった。
北朝鮮の自制を促すために、国際社会が取るべき対応を尋ねたところ、「対話に重点を置くべきだ」が、3割(33.8%)、経済制裁など「圧力に重点を置くべきだ」が、7割を超えた(73.8%)。
FNN世論調査 9割超が北朝鮮に不安
このニュースの後、7月28日に北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射している。
今これと同じ調査をおこなえば、「不安に感じる」と答える人の数がもっと増えてもおかしくはない。
花火を打ち上げるのならいいけど・・・。
現在の北朝鮮に危機感を感じているのはアメリカも同じ。
北朝鮮によるアメリカ本土への核攻撃の可能性は、どんどん高まっている。
そのことを受けて、アメリカ人の75%が北朝鮮の核開発を「深刻な脅威」と考えているという。
さらに40%の人が、米軍による北朝鮮の核施設への空爆を支持している。
これ以上のことはAFPの記事を読んでください。
今のアメリカでは、北朝鮮に対して優しい態度で対応するか強い態度に出るかの極端に分かれる傾向があるという。
優しい態度というのは、北朝鮮がICBMの開発配備をやめたら、アメリカは北朝鮮が核ミサイルを持つことは認め、人権問題にも目をつぶって平和条約を締結するという妥協案のこと。
でもこの場合は、アメリカ本土に届くICBMを捨てさせただけで、日本や韓国に届く中・短距離ミサイルは認めることになる。
日本や韓国としては冗談ではない。
これとは違って、「北朝鮮には強硬な姿勢で出るべきだ」という意見もある。
それが空爆をふくめた北朝鮮への軍事攻撃で、アメリカ人の40%が支持している。
「北朝鮮がICBMを実戦配備する前に、攻撃を加えて北朝鮮の政治体制を換えてしまえ」という声も多く上がっている。
この場合の軍事攻撃とは、アメリカが北朝鮮と戦争をはじめるようなもの。
こんなことになったら、日本や韓国にとんでもない被害や影響が出てしまう。
とにかくいまのアメリカには、こうした妥協案と主戦論の両極端の反応があるという。
このことは産経新聞の記事にくわしく書いてある。
日本は北の「体制転換」に主体的関与を 「軍事力は米に慎重対応要求」定番的反応に終始するな
軍事攻撃も経済制裁もなしで、話し合いによって北朝鮮問題が解決できたらそれがもっとも理想的。
でも歴史を見ると、平和的手段にこだわって大失敗した例がある。
大失敗というのは、ネヴィル=チェンバレンの宥和政策のこと。
高校で世界史を習った人なら、この宥和政策について学んだはず。
ネヴィル=チェンバレンはイギリスの首相(在位1869~40)だった人物。
チェンバレンはヒトラーと話し合った時(ミュンヘン会談)、戦争を回避するためにヒトラーの要求を認めてしまう。
「あらすじで読む英国の歴史 (ジェームズ・M・バーダマン)」にはこう書いてある。
外交官たちは、可能な限り争いを避けようとしていたのです。そうした宥和政策の典型は、1938年のネヴィル・チェンバレン首相とヒトラーとの会談でした。
ヒトラーに譲歩すれば、ドイツはこれ以上領土を要求することはなくなるだろうと見込んだチェンバレンは、彼の要求のほとんどすべてを容認したのです
「ヒトラーの言うことを聞けば、戦争をしなくてもすむ」
ネヴィル・チェンバレンはそう信じてヒトラーの要求をのんだ。
それでどうなったか?
ヒトラーは会談の合意を破棄して、第二次世界大戦がはじまってしまう。
第二次世界大戦の開始
1939年9月1日のドイツのポーランド侵攻に対し、ポーランドの同盟国イギリス・フランスが9月3日、ドイツに宣戦布告したことから始まった。
「世界史用語集 (山川出版)」
「戦争だけはしたくない。何とか話し合いで解決したい」と思いが通じない相手もいる
現実主義者のチャーチルはチェンバレンの宥和政策を強く批判していた。
産経新聞の産経抄(2016.7.9)から。
チャーチル英元首相は、1930年代の英国のナチス・ドイツに対する宥和(ゆうわ)政策を痛烈に皮肉っている。
「何も決定しないことを決定し、優柔不断であることを決意し、成り行き任せにするということでは断固としており…」。
この宥和政策がむしろ、ヒトラーを慢心させて第二次世界大戦につながったというのが歴史の教訓である。
北朝鮮軍の兵士と向き合う韓国軍の兵士
2017年の今は、1930年代の世界とは違う。
北朝鮮の核問題について、話し合いで解決できたらそれが一番いい。
でもどうだろう?
北朝鮮は1994年にアメリカとの話し合いで、核開発を凍結することで合意している。
でも実際には、北朝鮮は核開発をあきらめてはいなかった。
北朝鮮は国際原子力機関(IAEA)の査察は受け入れなかったし、それどころか、IAEAから脱退してしまう。
そして2005年には核兵器の保有を宣言した。
2017年にはICBMまで飛ばしている。
「話し合いで平和的に解決したい」と願うのはあたり前。
でも、日本人やアメリカ人が不安を感じるほど北朝鮮が暴走した背景には、そんな願いを悪用されたという面がある。
個人的には、今の北朝鮮に対話を呼びかけるだけでは、問題は解決しないと思っている。
北朝鮮が話し合いによって、核やミサイル開発をあきらめるとは思えない。
やっぱり経済制裁で強い圧力をかけることが必要。
アメリカが北朝鮮へ軍事攻撃をはじめることは想像したくないけど、「何でも話しあい」では解決しないこともある。
平和を求めて大戦争を招いた失敗も、人類は経験している。
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