海外旅行に行った感想をすごく簡単に言うと、きっとこんな感じだでしょ。
「来た 見た わかった」
その国に行って自分の目で見ることで、初めてその国のことがわかる。
例えば、日本のテレビや雑誌でインドのことを知ったとしても、実際に自分が行って見たインドはやっぱりちがう。
こんなふうに、海外旅行に行って「来た 見た わかった」という経験をした人はきっと多いはず。
ちなみにこの言葉の元ネタは、古代ローマの英雄・カエサルの「来た 見た 勝った」だ。
カエサル英語読みは「ジュリアス・シーザー」で、July(7月)は彼の名前にちなんでつけられた。
「来た 見た わかった」の法則はインド人も同じで、日本に来て自分の目で見て初めて日本人のことがわかってくる。
日本に住んでいたインド人から以前、こんな質問をされた。
「日本は世界有数の先進国で教育水準も高い。なのに、なんで英語を話せる人間がこんなに少ないんだぜ?」
まあ日本はイギリスの植民地にはなってないし、基本的な歴史がインドとは違うのだ。
「日本はなんて安全な国なんだろう。夜9時過ぎに、中学生の女の子が自転車で走っているのを見たよ。インドだったら、無事に自宅まで帰れないだろうな」
日本とインドの最大級の違いがこの治安だ。
日本に来たから日本が理解できたというインド人とは逆に、日本に来たことでインドのことがわかったという人もいる。
今回はそんな2つの視点を書いていこう。
1、インドって思っていたよりも小さい・・・。
日本に住んでいたインド人がある時、日本の地図にあるインドを見てショックを受けた。
インド北部にはカシミールと呼ばれるところがあって、この領有をめぐってインドとパキスタンが激しく対立している。
ここの毛織物「カシミア」は日本でもおなじみだ。
インドの地図では当然、カシミール地方はインドのモノになっているけど、中立的な立場にある日本のインド地図では、その部分が点線になっていて「インド国内」になっていない。
だからインドの面積がかなり小さくなっている。
それを見た彼は、「インドはこんなにも領土を失ったのか…」という思いと海外の見方を知ってショックを受けた。
映画が上映される直前、映画館でインドの国歌を流すことが法律で決められているほど愛国心の強いインド人からしたら、これは衝撃的だ。
アシアナ航空か大韓航空の機内地図。
日本が領有権を主張している竹島がDokdo(独島:ドクト)となっている。
インドとパキスタンの航空会社の機内地図では、カシミール地方はどうなっているのか。
2、インドって思っていたよりも貧しい・・・。
「インドって、ボクが思っていた以上に貧しい国だったんですね」と、悲しそうなを言ったのはインド人の高校生だ。
留学生として日本へやって来た彼が、たまたま見たテレビ番組でインドを紹介していた。
それはインドの田舎の村で、子どもたちは靴をはいていないし上着も着ていない。
家もボロボロでひどく汚れている。
彼は日本へ留学で来るぐらいだから、エリート層にいる人間で間違いない。
彼がインドにいた時には、日本のテレビで見たような「貧しいインド」を見たことがなかったから、それを初めて知ったのは衝撃的だったらしい。
ボクからしたら、そんな彼の話が意外だったのだけど。
日本に来て、インド人が初めてインドの貧困に気づくとは。
日本とインドの社会はまったくちがう。
日本の感覚からインドの社会をとらえると、とんでもない誤解をしてしまうことがある。
数年前ぶりにインドのコルカタという都市に行ったとき、街を歩いてこんなことを感じた。
「この前来たときに比べて、物乞いの数がずい分減ったなあ。ここ最近、インドは発展しているから、街から物乞いもいなくなったんだ。良いことだ」
でも、この考えはまったくちがった。
宿のインド人スタッフにそのことを話したら、彼はこんなことを言う。
「いや、それは経済の発展とは関係ない。ちょっと前に、この辺にいた物乞いがトラックに積み込まれて、どこかへ運ばれていったからだ」
え?
と目が点。
「物乞いをトラックで運んでしまう」って、いくらインドでも、そんなことを本当にするのだろうか?
このときは半信半疑だったけど、「シャルマ」というインド人ビジネスマンが書いた本を読んでそれが事実だとわかった。
そのインド人は初めて見た日本で、街の印象をこう書いている。
日本に着いてすぐに気になったことだが、乞食の姿がどこにもいない。道すがらも、喜捨(バクシーシ)を求める人たちや、裸足の人間や、物を売りつけてくる人間がいなかった。貧民や難民の姿もまったくない。彼らはどこにいるのだろう。デリーの場合のように、トラックに積み込まれてどこかに捨てられてしまったのだろうか
「喪失の国 日本 (文春文庫)」
ボクがコルカタに行ったときは、物乞いがいなくなったことに安心感をおぼえた。
でもこのインド人の場合、物乞いがいないことに不安を抱いている。
生まれ育った日本とインドの社会のちがいが、見方のちがいになってあらわれた。
来た 見た。
でも、わからないこともある。
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