韓国で中国人客が急減。日本でも人気の「ナンタ」劇場も閉館へ。

 

3年前、友だちから「ソウルに行かんか?」と誘われたから、一緒に行くことにした。

「どこに行くか何を食べるかは、こっちで大まかに決めさせてほしい」ということだったので、それは向こうにおまかせ。

 

数日後、でき上がった予定表を見たら、その中に「ナンタ」が入っている。
ナンタとは韓国で有名な舞台公演のこと。

「ほかの人もナンタを見たいと言っていたし、ソウルに行ったらナンタを見た方がいい」と、強烈におススメされたけど、ノーサンキュー。

もうナンタは見たから。
たしかにナンタは迫力があっておもしろいけど、一度で十分。
しかも、知らない間に料金がかなり上がっていたし。

「でも、もう予約したから。キャンセルはおまえがやっといて」と、処理はこっちに丸投げ。
知らない間にコイツの性格も悪くなっていた。

 

ナンタについては公式ホームページをどうぞ。

 

「ナンタ」とは「乱打」の韓国語読み。
「乱打」は日本語にもあるから、もともとは中国語だったのだろう。

舞台では、料理人たちがフライパンやお玉といった調理器具を打ち鳴らしたり、包丁で「ダンダンダン!」と野菜を切ったりしていた。
まさに「ナンタ(乱打)」。

ちなみに、アメリカでおこなわれた公演は「クッキン(Cookin)」となっていた。

 

ボクが初めてナンタを見たのは2005年のころ。
この時から、ナンタはどんどん人気と知名度が上がっていく。
今では、ソウル旅行の定番スポットだ。

 

ナンタの特徴は、「ノンバーバル」で言葉を使わないこと。
基本的に、いろいろな物を打ち鳴らす「乱打」で表現する。
だから外国人にも分かりやすい。

上の画像に「サムルノリのリズムの絶え間ない変化と発展」と書いてある。
サムルノリとは韓国の伝統楽器を用いた現代音楽(芸能)のこと。
これは、韓国の伝統的な芸能である「農楽」をベースにしている。

赤文字で「一番韓国的なことが一番世界的なことだ」と強調しているのは、韓国の伝統芸能の要素を取り入れて世界に勝負しているからだろう。

でも韓国人の友人はナンタを見たことがなかった。
「料金が高いです。あれは外国人向けですね。だったらライブハウスに行きます」なんてことを言う。

 

チョイと話がそれる。

カリブ海に「トリニダード・トバゴ」という小さな島国(千葉県と同じぐらい)がある。
このトリニダード・トバゴで「スティールパン(Steelpan)」は、ドラム缶でつくった作られた打楽器が生まれた。

「20世紀最後にして最大のアコースティック楽器発明」と呼ばれる世界的に有名な打楽器だ。

 

スティールパン(ウィキペディアから)

 

トリニダード・トバゴ人から聞いた話では、このスティールパンの始まりは「生活の身近にある物を棒でたたいて、音楽として楽しんでいた」ことにある。

このときはイギリスの植民地支配を受けていた時代で、ろくな娯楽がなかった。
そこで、そこら辺にある物を棒で打ち鳴らして楽しんでいたらしい。

ウィキペディアでは「身近にあったビスケットなどの身近なカン類などを楽器として使用し始めた」と書いてある。
ナンタと通じるものがある。

 

西アフリカのブルキナファソに行った時、現地の人から「西アフリカでドラム(太鼓)が生まれたのは、雨が激しく大地をたたきつける様子に着想を得た」と聞いた。
人がドラムを打ち鳴らすのは、雨がアフリカの大地をたたきつけることと同じだだという。

身近な物でも想像力があれば、いろいろな物に変えることができる。

 

西アフリカのマリかブルキナファソ

 

話を韓国のナンタに戻す。

最近、ナンタ劇場の1つが閉館することになった。

レコードチャイナの記事から。

2017年10月10日、韓国・ニューシスによると、高高度防衛ミサイル(THAAD)配備により中国人観光客が減少した影響で今年4月から臨時休業していた「NANTA(ナンタ)」のソウル・忠正路劇場がついに閉館することが分かった。

日本人にも人気だった韓国の演劇「NANTA」の劇場が閉館へ、THAAD配備で中国人観光客が急減

理由は記事のタイトルにあるように、直接的には中国人の客が劇場に足を運ばなくなったから。
間接的には、韓国が迎撃ミサイル(THAAD:サード)を配備したことに中国が激怒したから。

さらには、「今がんばって耐えていても、もう中国人観光客は戻って来ない」と判断したこともある。

中国の「サード報復」によって、韓国経済が大打撃を受けている。
中国の怒りを受けて、韓国企業のロッテマートやEマートが中国市場から撤退したことは知っていた。
けど、ナンタにまでその影響が及ぶとは思わなかった。

「中国頼み」は、流れが変わると一気にこうなってしまう。

 

ちなみに記事ではナンタの人気っぷりをこう書いている。

韓国の主要観光コンテンツとして定着した。先月基準で総公演回数は約4万600回、総観客動員数は1282人を記録するなど、国内外から根強い人気を得ていた

日本のネット上では、「総公演回数は約4万600回、総観客動員数は1282人」にコメントが集まっていた。

・国内外の根強い人気とは何なのか
・40回公演して1人見に来るくらいか すごいな
・どこの公民館で公演してたんですか?
・客がゼロのときもあったのか

しょせんは他人事らしい。

 

 

おまけ

韓国の伝統的な踊り
たぶん。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。