【神との契約】キリスト教やユダヤ教にはあるが、日本にはない概念

海外では、日本では考えられないことが起こる。日本でも大臣が辞任することはよくあるが、「神との“約束”を守るため」という理由は前代未聞だ。
キリスト教、イスラム教、ユダヤ教など一神教の世界では「神との契約」という考え方がとても重視されているが、日本人にはほとんど馴染みがない。
これから、世界の宗教観の違いを解説していこう。

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イスラエルの大臣が「安息日の工事」で辞任

最近、イスラエルの大臣が「ユダヤ教徒らしい理由」で辞任した。
朝日新聞の記事(2017年11月27日)によると、ユダヤ教の安息日(シャバット)に鉄道工事が行われたことを知り、リッツマン保健相が激怒して抗議のために職を辞したという。

安息日の鉄道工事、是か非か イスラエル閣僚が抗議辞任

イスラエルは、世界有数の経済・技術先進国で、一人当たりのGDPは日本を上回る水準にある。しかし、こんなことが起こるのだ。

 

キリスト教・イスラム教・ユダヤ教の聖地・エルサレム
手前がユダヤ教の聖地「嘆きの壁」で、奥の丸屋根の建物がイスラーム教の聖地「岩のドーム」だ。

「安息日」のルール

ユダヤ教やキリスト教には「安息日」という重要な日があり、仕事を休んで礼拝を行うことになっている。安息日には労働を「控える」だけでなく、「してはいけない」と決められているのだ。

「新約聖書入門 三浦綾子」(光文社文庫)によると、イエスが生きていた2000年ほど前は、安息日に次のようなことが労働とみなされ、絶対に禁止されていた。

「種まき、刈り入れ、売買、点火、夫婦生活、食事の用意、九百メートル以上の歩行」

現代のイスラエル社会と安息日

この考え方は今でもイスラエルにある。
ユダヤ教の安息日は土曜日(金曜の日没から土曜の日没まで)だ。ボクがイスラエルに行った時も、ほとんどの店は閉まっていたし、バスや電車も運行しないと聞いた。
※イスラム教の安息日は金曜日なので、イスラム教徒の店は開いている。

熱心なユダヤ教徒は、安息日に料理をしたり(食事の用意)、電気をつけたり(点火)もしないという。部屋の明かりをつけるために、ボタンを押すことも「労働」になるからだ。
そのため昔は、異教徒の日本人が安息日にユダヤ教徒の家へ行き、電気をつけるアルバイトもあったらしい。

命よりも重い?「神との契約」

聖なる安息日に鉄道工事をしたことが、保健相には我慢できなかった。
「安息日に働かない」というのはユダヤ教徒が神と交わした契約だから、絶対に守らなければならない。歴史を見ると、信者は自分の命より契約を優先することもある。

『旧約聖書』には、ユダヤ人が安息日にシリア人から襲われた際、戦うことを「労働」とみなし、無抵抗のまま全滅したという記述がある。

安息日を文字どおり死守した極端な例として、これも「旧約聖書入門」で書いたことだが、一群のユダヤ人が、安息日に攻撃を加えてきたシリア人に対して、安息日を犯すよりも、甘んじて死を選んだことはあまりに有名である

「新約聖書入門―心の糧を求める人へ (光文社文庫) 三浦綾子」

日本人と「契約宗教」の違い

キリスト教やユダヤ教、イスラム教の信者にとって「神との契約」は絶対だが、日本には伝統的にこの概念がない。だから、「安息日に戦うよりも死を選ぶ」という発想はよく理解できないと思う。しかし、彼らは命を犠牲にしても守らないといけなかった。

評論家の山本七平氏によれば、日本の歴史には一神教のような「神と人の上下契約」という考え方がなかったという。

たとえば日本にも『忠臣』がおり、『忠臣蔵』もある。
しかし当時の家臣は殿様との間に契約を結んでいたわけではなかった。
また、この契約を完全に履行するのが『忠』だという発想があったわけでもない。

もちろん第二次世界大戦中にも、天皇との間の契約を結んでも死んでも絶対に守るといった発想はなかった。
絶対者なる神との契約を絶対に守ることが『信仰』すなわち『神への忠誠』なのである。

したがってその意味は、日本人のいう『信仰』』『信心』といった言葉と非常に違う。聖書の宗教が『契約宗教』と呼ばれるのは、『神との上下契約』という考え方がもととなっている。

「聖書の常識 聖書の真実 (講談社+アルファ文庫) 山本七平)」

日本人に分かりにくい「宗教の重み」

戦前戦中の日本人にとって、天皇はキリスト教における神のような「絶対的な存在」ではなかった。
日本人の宗教観は一神教の宗教観とはまったく違い、「神との契約」という考え方がなかった。だから、「神との契約は死んでも守る」という聖書の考え方が分かりづらい。
普通の日本人なら「契約より、命や平和の方が大切」と考えるだろう。
イスラエルの大臣が辞任した背景には、この「神との契約」への強いこだわりがあったはずだ。

国民の多くが無宗教で、伝統的に「神との契約」という考え方がなかった日本人には、分かりにくい出来事だと思う。

変化するヨーロッパの安息日

キリスト教では日曜日が安息日だ。このためフランスでは長い間、日曜日にデパートが休みだった。
それが今、変わりつつある。フランスでは2017年に、デパートが日曜日も営業することになた。
忙しすぎてプレミアムフライデーすら定着しない日本は、フランス人の「バカンス」の考え方を学んだほうがいいかもしれない。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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