前回、ユダヤ人とクルド人の共通点を書いた。
それはどちらも、「国のない民」という経験があること。
1948年にイスラエルを建国するまで、ユダヤ人には母国がなかった。
全世界に2~3000万人いると言われるクルド人は、いまも自分たちの国がない。
それで彼らは「国を持たない世界最大の民族」と呼ばれている。
自分たちの国がないと、どうなってしまうのか?
「国なき民」であったユダヤ人とクルド人は、同じ悲劇を経験している。
今回はそのことについて書いていこうと思う。
自らの国家(政府)がないということは、「自分たちを必ず守ってくれる存在がいない」ということにつながる。
だから、そこでの生活は不安定であぶない。
何かあったら、簡単に命をうばわれることもある。
ユダヤ人とクルド人にはそんな悲劇があった。
「国なき民」が受けた人類最大の悲劇は、ナチスによるホロコースト(ユダヤ人虐殺)だ。
ホロコーストについて、高校の世界史ではこう習う。
ホロコースト
600万人が殺されたと言われる、ナチス=ドイツによるユダヤ人虐殺のこと。この用語は「旧約聖書」に由来する。ユダヤ人絶滅を目指し、アウシュビッツなど各地の収容所で計画的に虐殺がおこなわれた
「世界史用語集 (山川出版)」
この「ホロコースト(Holocaust)」という言葉は、旧約聖書の言葉からつくられた造語。
ホロコーストは特定の民族の絶滅を目的にした虐殺で、ただ多くの人を殺害する「虐殺(massacre)」とは意味が違う。
アウシュヴィッツ強制収容所(ウィキペディア)
連合軍が到着したときの収容所の様子
おびたただしい数のユダヤ人の死体が放置されていた。
毒ガスで殺害されたユダヤ人
ユダヤ人による国家があって、彼らがそこに住んでいられたら、毒ガスでの集団虐殺なんて悲劇は生まれなかったはず。
死体はここで焼却されていた。
上の画像は「NHK 映像の世紀 第5集」から。
クルド人にも、「毒ガスによる虐殺」という経験がある。
イラン・イラク戦争がおこなわれていた1988年に、当時のサダム・フセイン政権によってクルド人が大量に虐殺された。
この時に「ハラブジャ事件」が起こる。
この戦争のときサダム政権は、ハラブジャに住んでいたクルド人に「イラン側に協力した」という疑いを持つ。
それで化学兵器を使って、クルド人住民を虐殺してしまった。
使用された化学兵器は、マスタードガス、サリン、VXガスなど複数の種類が極めて大量に用いられたとされているが、詳細は不明である。(中略)このガスはナチス・ドイツがユダヤ人に対してガス室で使用した物と酷似しているという。
このとき毒ガスの使用を命じたイラクの元国防相には、死刑が言い渡された。
AFPの記事(2008年3月16日)から。
元国防相は、1988年のクルド人虐殺事件(アンファル作戦)を指揮し18万人のクルド人を殺害したとして、「ジェノサイド」の罪で死刑判決が下されている。
彼は2010年に処刑された。
日本人には、ユダヤ人やクルド人のように「国のない民」になった経験がない。
いつでも日本列島に住むことができた。
国を失って「ディアスポラ」のように海外へ逃げのび、外国で差別を受けながら生活していたこともない。
そういうこともあって日本には、「多民族による大量虐殺」という悲しい歴史がない。
去年、クルド人が独立を問うを住民投票をおこなった。
世界中の国がそれに反対したけれど、イスラエル(ユダヤ人)はクルド人を支持した。
その理由には、「イスラエルの内部揺さぶり」といった戦略的なこともあるのだろうけど、それ以上に、ユダヤ人にはクルド人の”国のない辛さ”を分かっていたからだと思う。
おまけ
イエメンのハジャラというところ。
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