今回のテーマはとても重い。
日韓で評価が逆転する人物、安重根について書いていこう。
彼は伊藤博文を暗殺したのに、当時、彼を尊敬した日本人がいた。
それは一体なぜなのか?
安重根とはどんな人物か
まずは安重根という人物を「中立性」を重視して、高校世界史の視点から確認しておこう。
安重根(アンジュングン、あんじゅうこん)
1879~1910朝鮮の独立運動家。1907年沿海州で愛国啓蒙運動と義兵闘争に参加。朝鮮の植民地化を決定づけたとして、09年10月に伊藤博文をハルビンで暗殺した。
「世界史用語集 山川出版社」

安重根
韓国では、祖国を「日本の侵略」から守るために伊藤博文を殺害したから、愛国者で民族の英雄とされている。
「安重根義士」と呼ばれることも多い。
しかし、日本の立場からすると、元首相を暗殺した「テロリスト」になる。
ちなみに、テロリストを中国語で「恐怖分子」という。
このほうが恐ろしさが伝わる気がする。

でも、首相を暗殺されたにもかかわらず、明治時代にこの安重根を尊敬する日本人がいた。
旅順監獄で安の監視担当となった千葉十七は初めは安を憎んでいたものの、何度か話をするうちに安の思想に共感するようになっていく。
安に理解や敬意を示したのは千葉だけではなかった。
旅順監獄における安重根の取り扱いは、きわめて丁重だった。三度の食事はみんな白米、下着も四枚の綿入り布団も上等。
ミカン、リンゴ、ナシなどの果物が毎日三度もだされ、煙草も西洋の上もの(中略)検事、判事、看守にいたるまで、安重根に接する者はみんな彼を尊敬してしまう。
「韓国の悲劇 小室直樹」
自国の首相を殺した人間に対して、なぜこれほどまで丁寧に接していたのか?
その理由について韓国側では、「日本人が安重根の優れた人間性や思想に触れたため」と説明されることが多いが、日本の見方は違う。
安重根の動機
安重根が伊藤博文を暗殺した動機を確認しておこう。
評論家の小室直樹氏はその理由についてこう書いている。
彼の理解によれば、伊藤は天皇をだまして韓国を併合し、東洋平和を乱したのである。これは許しがたいことなので、伊藤を誅殺するというのである
「韓国の悲劇 (カッパ・ビジネス) 小室直樹」
「天皇」とは明治天皇のことで、「東洋平和」とはこの当時の日本のスローガンだ。
「東洋平和」という言葉は、日露戦争での明治天皇のお言葉(詔勅)にも出てきている。
日本を代表する存在である伊藤を排除すれば、明治天皇の善意によって韓国は救われると安は考えた。
旅順監獄に入れられてからは、安は自分の考えは間違っていたと気づいて反省したが、明治天皇が東洋の平和と韓国の独立を願っているということは信じ続けたという。
日本人が安重根を尊敬した理由
安重根は明治天皇に対して強い忠誠心を持っていたため、天皇は日韓併合を望んでいないのに、伊藤博文がだましてそれを進めようとしたと考え、「許せなかった」となる。
言い換えれば、安重根が伊藤博文を暗殺したのは明治天皇のためでもあった。もちろん、一方的な思い込みだが。
当時の日本人が安重根を尊敬した理由もまさにそれだった。
明治天皇を慕う彼の純粋な気持ちに、日本人が感動したのだ。
明治維新いまだ遠からず。尊王の情熱を全身にみなぎらせていた日本人は感激した。日本人は安重根を憎みつつも尊敬した
「韓国の悲劇 (カッパ・ビジネス) 小室直樹」
犯行の動機について、安重根本人が裁判でこう述べている。
明治四十三年二月九日、安重根は公判における最終意見において、伊藤殺害の目的について、「私は日本四千万、韓国二千万同胞のため、かつ日本天皇陛下および韓国皇帝陛下に忠義を尽くさんがために、今回の挙に出たのです
「韓国の悲劇 (カッパ・ビジネス) 小室直樹」
安重根の明治天皇や大韓帝国皇帝に対する「忠義」は本物だ。
明治の日本人はその精神に触れたから、テロリストである安重根に尊敬の念を抱いたのだ。
日本人にとっては、伊藤博文よりも明治天皇のほうが上位にあった。
「明治天皇に忠義を尽くさんがため」という熱い言葉を聞いたら、全日本人が震えるほど感激しただろう。
旅順監獄で、安重根の取り扱いがとても丁寧だったというのもうなづける。
日本人はたとえ敵であっても、優れた人間であれば敬意を示す。
その価値観も影響していると思われる。
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